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世界唯一の「飯塚ブランド」を目指して

株式会社飯塚製作所 / 営業(法人取引先への営業)

インタビュー記事

更新日 : 2024年06月05日

半導体製造装置の部品から、工作機械の部品、自動車を作る装置の部品など業界を問わずに幅広い分野で部品生産を行っている飯塚製作所。特に傷や打痕のない外観品質は業界でも高い評価を得ている。その「飯塚ブランド」を支えているのは、人の力だった。

株式会社飯塚製作所 事業概要

1976年創業の金属加工会社。はん用旋盤による部品製作から始まり、お客様の要望の変化と共に成長してきた。業界的には珍しい中間ロットの生産を得意としており、多種多様な業界で使用される部品製作を行ってきた。
また、例えば半導体関連機械のように、各種部品の傷や打痕が製品の品質を左右する機械で、外観品質にこだわった「飯塚ブランド」ともいえる製品は多くの会社から高い評価を得ている。
また、経営理念の第一に「真の豊かさを実現する会社環境」を掲げるなど、働く環境づくりを積極的に進めている。
 

他業種、多品種を引き受ける

飯塚製作所は機械部品を製造する金属加工会社。主に工作機械で、ある商品を作るための機械の部品を作っているということ。少しややこしいが、つまり、彼らの商品は機械の部品。
「創業当時はあまり競合といわれる会社はなかった」というのは、株式会社飯塚製作所の代表取締役佐藤正和だ。
「お客様から注文を受ける部品は、ものすごく細かな作業が必要なものもあります。数ミクロン単位の手作業が要求され、それはある種『職人仕事』とでもいうべき技能が発揮されます」

飯塚製作所の得意とするのは、中間ロット。大量生産は、技術や設備をもっていれば成り立つ。一個、二個という少量受注の場合は、はん用旋盤という機械を使って職人さんが手作業で作り出す方が効率がいい。ただし、十個を超えると、NC旋盤で機械製作のほうがいいそうだ。お客様からもらった図面を見て、工程を組んで、プログラムし、工具を取り付けて、加工して商品にする。その工程設計からプログラミングや段取りができる人が飯塚製作所には多い。だから中間ロットが得意なのだという。中間ロットの注文は業界的にはニッチともいえるところだそうだが、実は需要は少なくない。そこを引き受けるからこそ、他業種、多品種のさまざまな範囲で受注できているという。

人が支える「飯塚ブランド」

現在は、他業種にわたって受注している飯塚製作所だが、かつては半導体の一業種依存の体制となっていた。
「ITバブルが崩壊してしまったとき、会社がなかなか難しい状態になりました。その打開策として仕事の業種を分散させるようにしました」
当時市場を見渡してみると、受注が落ちていたのは半導体関連のみで、そのほかの業種は落ちていなかったそうだ。だから仕事を分散させることで危機を乗り切ったという。
もうひとつの危機が2008年のリーマンショック。このときも仕事量は激減してしまった。ITバブル崩壊のときはやむをえずリストラをしたそうだが、このときはリストラをしなかった。
「ITバブル崩壊のときの教訓として、やはりこの仕事は『人』なんだということがありました。だからリーマンショックで仕事が減ったときは、苦しくてもリストラはしなかったんです。形状にしても数量にしても、お客様のさまざまな注文に対応できる技術を持った社員が残ってくれた。そのマンパワーを生かすためにも、営業は山形に限らず、車で行ける範囲はどんどん営業をして回った。その結果、早い段階で売り上げが戻ってきたんです。やはり人の力だったんです」
そう佐藤は話す。飯塚製作所を支えるのは、人の力なのだということを証明する結果となった。
 世界唯一の「ブランド」を目指すと、経営ビジョンに掲げている。その「飯塚ブランド」とでもいうべきものは一体何か、佐藤に聞いてみた。
「部品を作る会社だから、お客様の仕様に合わせて作るわけです。その点ではオリジナリティは出せません。ではどこで飯塚製作所らしさを出すか。ひとつは安心。飯塚製作所に頼めば品質の高いものがあがってくるという安心です。もうひとつは『外観品質』です。傷や打痕のない部品を作れるということ。これにはやはり人の力が必要なんです」
 外観品質は半導体製品など、最終製品のクオリティに大きく関係する。飯塚ブランドのひとつがその外観品質なのだ。

営業部部長の冨樫寛は「私が入社したときは、検査の部署の人間は1人しかいませんでした。でも、年々お客様から要求される精度が高くなり、飯塚製作所として品質を守るために、検査部門の人が増えました」という。
 その検査部門である製造部品質管理課で働くのが渡會理恵。「JIS規格だけでなく、お客様独自の規格もありますが、その規格にあったものでないとそもそも製品として受け取ってもらえない。ときには、千分の一ミリ、万分の一ミリまで測ることもあります。あとは、目視で傷や打痕もきっちりとみる。けっこう緊張する仕事かもしれませんね」と笑う。

もちろん、現場で部品製造をする人間も飯塚ブランドの中心を担っていることはいうまでもない。現在、製造部加工1課で働く川越昌治は入社1年目。前職は製造業とは関係のない業種で、まったくの未経験からのスタートだった。
「最初は不安もありましたが、図面を見ながら、どういう工程で削ったりしていくかというのをじっくり教えてもらいながら仕事を進められる。そのほか、講習会に積極的に参加するなど、スキルアップを会社が支援してくれるので、やりがいがあります」
 そう川越は話してくれた。続けて冨樫に会社としての強みを聞くと「段取りを組むだけ、プログラムを作るだけといったように、分業している会社も多いと思うのですが、弊社はそれを一貫して段取りから製品づくりまで、1人でできるようにしている。だから製品に責任を持てるし、ハプニングにも対応できる。そこが強みですね」という。ここもやはり人の力が飯塚製作所を支えているのだ。

働く環境を整える

冨樫が入社したのは20年ほど前。そのときすでに会社運営をメインでやっていたのが、現代表の佐藤だった。「だから、こういう言い方でいいかわからないですが、若い人の気持ちがわかるんです。若い時から中心なので、若い人の気持ち、特に会社や仕事に対する気持ちがわかる」

佐藤が代表取締役に就任したのは2年前。そのときに作ったのが従業員代表会という組織だ。選挙で決められ、各部署から参加する体制をとっている。従業員の意見を吸い上げ、周知させ、改善できるものは改善するというのが目的の組織だ。それは、福利厚生などを含めた働く環境を改善することでもある。例えば、通勤手当の不利を解消したのも、この従業員代表会からの意見だったという。

佐藤はこう言う。「私たちは経営理念に『真の豊かさを実現する会社環境』というものを挙げています。その真の豊かさというのは、1つ決まったものあるわけではなくて、社員1人1人違ったものかもしれません。物心両面といいますが、やりがいのある職場、きちんと給料や福利厚生が整っている職場。気持ちの面でも身体の面でも働きやすい環境を作りたいと考えています」

生産性の向上のため、設備の拡充を進めているが、それは当然会社の売り上げに直結するものとして重要なことである。しかし佐藤は「それとともに、仕事の生産性があがるということは、社員の心に余裕ができるということでもあると思います。その余裕を新しい仕事に向けてもらってもいいし、プライベート例えば家族の時間に向けてもらってもいい。物と心がお互いに影響しあって、『真の豊かさ』となってくれればと思います」と言う。飯塚製作所を支えているのは、社員1人1人の技術であり、気持ちである。それをわかっているからこそ、「真の豊かさを実現する会社環境」を目指す。そしてそれが浸透することで「飯塚ブランド」ができあがるのだ。