古窯グループ 代表取締役専務 佐藤太一

「今日、この瞬間に、最高の山形を」を理念に大規模旅館日本の宿 古窯を中心とし中規模旅館、小規模旅館、グランピング、スイーツ事業など「最高の山形」を日本中、そして世界中の人に発信を続けている古窯グループの代表取締役専務 佐藤太一さんに、これまでの経緯と今後山形に必要な人材について話を聞いてきました。

 

(三浦)ーー佐藤専務!今日はよろしくお願いします!

(佐藤専務)よろしくお願いします!

1.アメリカから衝撃の帰国。本当は帰りたくなかった。

 

三浦ーー現在山形では誰しもが知る古窯グループの代表取締役を務める佐藤専務ですが、どのような経緯で今に至るのでしょうか?

佐藤専務ーー僕は45年前に旅館古窯の3代目として上山で生まれて、小中は上山の学校、高校では日大山形高校に通っていました。日本大学商学部への進学をきっかけに上京し、大学卒業してから世界を見たいと思って、2年間ほどアメリカに留学をしました。

 

三浦ーーアメリカのどちらに?

佐藤専務ーー最初はサンディエゴの語学学校で英語を勉強していました。とにかく日本に帰りたくなくて、当時流行っていたMBA(経営学の修士号)を取ることができれば、かっこいいし日本にも帰って来なくていいんじゃないか?という気持ちで、ホテル経営で有名だったラスベガスのネバダ大学のMBAを目指しました。

 

三浦ーー帰りたくない(笑)

佐藤専務ーー大学入学に必要な点数なども取っていざ入学!と手続きをしてたときに9.11の同時多発テロが起きて、一度帰国することになったんです。でもそれは自分としては単なる一時帰国で、すぐアメリカに帰るつもりでいたら、親からアメリカは危ないからもうずっと日本にいなさいと言われたんです(笑)

 

三浦ーー専務はアメリカに戻るつもり満々だったんですよね?

佐藤専務ーーそうですよ!家も車もアメリカにあって、なんの解約手続きもしないのにそのまま半強制的に、日本にいることになりました。(笑)

 

三浦ーー帰国してからはすぐに古窯グループにはいったのですか?

佐藤専務ーー日本に帰国してから半年ほど、東京にあるユニークで有名な飲食店グループでアルバイトをしてサービスについて学びました。仕組みがとにかく面白くて、バイトの時給を自分たちで話し合って決めたり、完全実力主義で店長でも年収1000万円以上もらっている人がいたりとにかくすごかったんです。アルバイトの時給交渉はアルバイトが揃う全体の場で行われて、その希望時給に見合っていなければはっきりと言われたり、逆に認められれば年齢に関わらず時給があがったりしていました。全体の場で社員からアルバイトに降格した人もいました。今思えば異質でしたね(笑)

 

三浦ーーその後古窯にもその仕組みを持ち帰ったのですか?

佐藤専務ーーそこから古窯の関連会社で清掃などを担当するクリーンサービスに戻りました。東京で学んだその仕組をそのままやってみたけど、時給UP希望者を募ったところ、みんな周りをみても誰も手を挙げなかったんですよ(笑)  遠慮がちな県民性が出ていましたね(笑)

 

2.新たな取り組みとしてIT事業部を設立。

三浦ーー経営に関わるようになってからはどんなことに取り組んだのでしょうか?

佐藤専務ーー26歳くらいのときにIT事業部をつくりました。それまでは旅行会社から集客するのが王道だったのですが、個人客をインターネットから集客し、売上を上げるということが大事だと思ってIT事業部をつくりました。旅館にIT人材はいないし、採用するのも難しかったので、IT事業部をつくって採用しました。中国からの留学生がIT系に強くて、二人でホームページをつくったり様々な仕組みを構築しました。そして卒業と同時に採用し課長にしたんです。

三浦ーー実際IT事業部をつくって売上は伸びたのでしょうか・・・?

佐藤専務ーーもちろん売上は伸びました。さらにIT化することによって、組織やフローの流れも見ることができて業務改革もできました。今も事業部は継続されていて、旅館業界では珍しくエンジニアやデザイナーなどIT・クリエイティブ人材も雇用しています。

 

三浦ーーITの部署があるって旅館では珍しいですよね?

佐藤専務ーーうちは早かったと思います。片手間ではIT人材は来ないと思ったので、どんなに忙しくても旅館の仕事をさせませんでした。そういった取り組みがあり、いまでは予約管理やECサイトの運用、業務効率改善のためのDX化なども積極的に取り組むことができています。

 

三浦ーーそして今にいたるわけですね!これから山形のような地方にはどんな人材が必要だと思いますか?

佐藤専務ーーそれは・・・

頭で考えるだけではなくて、動ける人材です。地方こそ動ける人材、実際にやる人材が必要です。

 

三浦ーーアイデアをもってるだけではだめですか?

佐藤専務ーーそうなんです。地方では色んな人はいるけど、手を動かしてリスクを負って実際にやる人がいない。口を出すだけなら簡単なんだけど、実際に動いてみる人材が少ないので、そういった人材が必要だと思います。

 

三浦ーーなるほど・・・。耳が痛いです!山形のような地方で事業をする強みってありますか?

佐藤専務ーー誤解のないようにはしたいんですが、都心に比べるとライバルが少ないことです。頑張ればやりがいを感じることのできる実績が出せる可能性は東京に比べればあると思います。地方の人は地元にスターを求めている気がします。

 

三浦ーー若者たちに求めるものはありますか?

佐藤専務ーー言えることなんてないですよ(笑)逆にどんどん教えてほしいです。

強いて言えば・・・

既存の枠にとらわれないで新しいことにどんどんチャレンジしてほしいです。だからこそ、その受け皿になる企業も変わっていかないといけない。我々がそういったチャレンジする人材に選ばれるように仕組みを変えていかないといけないと思っています。

 

三浦ーー古窯ホールディングスの今後の目標を教えてください

佐藤専務ーーあくまでも旅館が基軸だけど、いろんな面白い事業をやっていきたいですね。山形を面白くできるような、地方創生に絡めるようなものにトライしていきたいです。

 

三浦ーー予期せぬ帰国がありながらも時代の流れに合わせて旅館というものの在り方にチャレンジし続けている専務は本当にかっこいいです!ありがとうございました!