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地元の米をなないろに変えるパン屋

なないろプラス / なないろプラス / 米粉パン専門店(千石町)製造及び販売・管理

インタビュー記事

更新日 : 2024年08月05日

2022年12月7日に酒田市千石町にオープンした米粉パン専門店「なないろPLUS」。材料の80%超に米粉を使用し、お米の甘さともっちりとした食感が魅力。クロワッサンや惣菜パンなどバリエーションも豊富で話題を呼んでいるお店にインタビューを行った。

なないろプラス 事業概要

2022年12月7日に酒田市千石町にオープンした米粉パン専門店(定休日は毎週火曜日)。材料の80%超に米粉を使用した米粉パンを製造販売している。米粉パンというと、食パンなどのシンプルなパンが多いが、なないろPLUSではクロワッサンやコッペパンや揚げパン、惣菜パン、シフォンケーキなどの焼き菓子など、試行錯誤のうえに豊富なバリエーションの米粉パンを提供している。 主原料の米には、東北産低農薬栽培米を使用。将来的には酒田を中心とした庄内で収穫された米を使って地産地消を目指すという。現在は食味のために、小麦に含まれるタンパク質であるグルテンを使用している。おいしくてカラダにいいパンを目指しさまざまな取り組みにチャレンジする。また、地域社会や行政機関・学校・企業などとタッグを組んで食育での活動もしていきたいとしている。 さらには酒田市新橋に2店舗目を1月7日にオープン(定休日は今の所毎週月曜日と火曜日)。 そちらも同じく全商品米粉パンを提供。さらに広がりを見せていく米粉パン専門店だ。


「おいしい」を作りたい
「子どもが学校給食で米粉パンを食べて『おいしかったぁ』と帰ってきたんです。それで、米粉パンを買ってこようと探したのですが、見つからなかったんです。もちろん、パン屋さんやスーパーにあるにはあるのですが、数が少なかったのとどれも食パンのようなシンプルなものだけだったんです」
そう話すのは、2022年12月7日に酒田市千石町にオープンした、庄内初の米粉パン専門店「なないろPLUS」のアドバイザーを務める堀早苗だ。「じゃあ、自分で作っちゃおう」というのがお店を設立するモチベーションだったという。
堀はもともとパン屋に勤務していた経験はゼロ。未経験からの出発だったが、米粉パンは製造方法も小麦のパンと似たようなところもあり、それほど不安はなかったそうだ。ゼロから勉強していくうちに、情報をかき集めながら様々な方からお話しを伺いつつ、ご協力やご指導を頂き、庄内で初めての米粉パン専門店をはじめることとなった。
米を細かく砕いた米粉を使用した米粉パン。焼き上がったパンからは、ふんわりと米の香りが漂い、食欲を掻き立てる。ひとつ手にとってをふたつに割るだけですぐわかるが、小麦粉を使用したパンと比べると、もちっとした米独特の柔らかさがある。口に含むと、香りとともに米本来の甘さが口のなかに広がっていく。香り、食感、甘味。食卓に上がるところから口に含んで食べ終わるまで、米粉パンならではの楽しみが続く。また、米を使用しているために腹持ちがよく、「子どもたちも間食がいらないぐらいなんです」と堀は言う。続けて使用する「米」について話してくれた。
「酒田、庄内は米どころ。その米を使ったパンがないというのは、いろいろ知るうちにもったいないと思ったんです。庄内米はおいしい。それをさらに違った形で提供できたら、米を作る、そして売るというだけでなく、新たな形での産業も生まれるのではないかと期待しています」
店舗名「なないろ」、まさに米のおいしさをなないろに変えて提供いくことを目指している。

楽しそうが働く原点
千石町にオープンした店舗に続き、酒田市新橋にも2店舗目をオープンしたなないろPLUS。今回はその2店舗の店長にインタビューを行った。2人に共通しているのが「楽しそう」というキーワードだ。
千石町店の店長を務める加藤洋子は、もともと友人だったというが、あるとき「米粉パンのお店を始めたい」という話を聞いたそうだ。そのとき最初に思ったのが「楽しそう!」ということだったという。そこで求人が出たところですぐに応募したそうだ。加藤も堀と同じくパン屋勤務無経験。それでも不安はほとんどなかったという。

「いま振り返るとそれよりも楽しそうという気持ちの方が強かったですね。むしろ経験値のないところからの出発だからみんなでいろいろ積み上げていけるんじゃないかなと思いました。その後はさまざま研修して勉強をしていくことになったので、新しく知ることが多くて、やっぱり不安よりも楽しいことのほうが多かったです」
新橋店の店長、梅津えりも「楽しそう」がモチベーションとなり求人に応募したという。「新橋店の内装を工事しているときに、ドアにはすでにオープニングスタッフ募集という張り紙があったんです。気になって見てみると『米粉パン専門店』。そういえば米粉パンだけを扱っているお店ってないよなってすごく印象に残ったんです」
もともとカフェ巡り、グルメ巡りは大好きで、SNSのかわいい画像を見るのも好きだったと梅津。それが高じてカフェで働いていたが、オープニングスタッフはまだやったことがなく、最初からお店作りに関われるのも楽しそうと応募した。
「当然大変なことは多い。しかも全商品米粉パンですから、まさにゼロからというところも多いので大変です。ただ、おもしろいところはゼロからだからいろいろな発想が出てくるところ。米粉パンという言葉だけ聞くと、食パンなどのシンプルなパンのイメージがありますが、みんなでこんなパンが作りたいと話あって、クロワッサンやコッペパン、シフォンケーキ、惣菜パンなどさまざまなバリエーションが生まれたのも楽しい作業でした」と梅津は話してくれた。

食を通して地域に貢献する
最初に「産業」という言葉が出てきたが、なないろPLUSではさまざまな取り組みにチャレンジしている。ひとつは、介護事業との連携だ。なないろPLUSはショウナイズカンでも紹介した介護施設運営会社サードステージ(参考URL https://third-stage.net/)との連携を今後試みる。介護の現場ではいわゆる「買い物難民」が出てきてしまっている。彼らに対して、安心で安全、そしておいしいパンを提供する。「高齢の方にはやはりお米が好きな方もいます。その方にお米のおいしさを生かしたパンを届けたい。また、料理ができない人にもさまざまなバリエーションの食を楽しんでいただきたいと考えています。また、その連携の中できっと地域とのつながりも出てくるので、ぜひこの試みは成功させたいと考えています。」と堀は話す。
また、その延長線上とも言えるが、学校などとタッグを組んで食育活動にもチャレンジしたいと話をしてくれた。身体と食のこと、そして庄内でとれる米とそれが形を変えて食卓に届くという農業と産業に関すること。米がなないろに変わることで、さまざまなことが変わっていく。その姿を伝えられれればきっと子どもたちにとっては大きな財産となるのではないか。地元の素晴らしい米や食材を中心に6次産業化に取り組むことができれば、県外に生活の場を選んだ若い人たちは必ず地元庄内に戻ってきて、地元を盛り上げてくれるのではないかと考えております。また、庄内に住んだことが無い人たちにも、米粉パンを通じて情報発信を続ければ、地域に定住して頂けるのではないかと考えております。

おいしいを作ること。楽しいがモチベーションになっていること。まさに食が生まれる原点。そこから、さらに広がり、自分たちの身体、そして生活が変わっていく。その現場がこの「おいしいパン屋」にはあるのだ。