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お客様のこんな暮らしをしたいを実現する仕事

株式会社佐藤江理子建築工房 / 現場管理担当

インタビュー記事

更新日 : 2024年07月10日

いい家とはどんなものか。庭付き一戸建て。吹き抜けのエントランスに大きなリビング。こんな家に住みたいなという想いは人それぞれ。その想いに寄り添って丁寧にひとつの家を作り上げる佐藤江理子建築工房だが、本当に作り出すのは「こんな暮らしがしたい」を実現する空間だった。

株式会社佐藤江理子建築工房 事業概要

2008年に設立された建築工房。現在、新築注文住宅の設計、施工を中心に、リフォームや不動産売買、管理を手掛けている。「お客様を大事にする気持ち」を掲げ、一棟一棟じっくりと時間をかけてお客様と丁寧に家を作り上げることを信条としている。そのためには「生活」がうまくいくことが大事とし、家族構成、時間帯による行動など、生活に関するあらゆることを話し合い、それに合った家をデザインしていく。そして家そのもののデザイン、施工はもとより、資金計画、土地探し、アフターメンテナンスなど、家に関するあらゆることに精通し、お客様の生活をよりいいものに変えていく仕事をしている。

お客様に寄り添うために独立

 2008年に設立された佐藤江理子建築工房。独立の契機となったのは、ふたつの想いだった。ひとつは自身の生活。職業の性格上、時間がルーズになることもあり、子どもといっしょにいる時間があまり取れなかった。自分の人生を考えたときに、やはり家族といっしょにいる時間がほしいと思ったという。それからもうひとつは仕事に対する想いだ。

「当時、営業をしていたのですが、分業体制がけっこうしっかりしていたんです。だから私の仕事は、売ることが中心。お客様のご要望を聞いて、商品の魅力を紹介し、お客様に買っていただく。もちろん、いろいろと楽しい瞬間があり、充実はしていたのですが、どこかさびしいというか、そういう想いがありました。私がお客様とかかわるのは最初の部分だけ。やはり、ひとりのお客様、ひとつのご家族と関わるとき、最初から最後まで関わりたいなと思ったんです。それができる環境を作りたくて独立をしました」

お客様にとって最後とは?

 こうして佐藤が話してくれたなかに出てきた「最初から最後まで」という言葉。それには強い想いがあった。家を建てるための「最初」は、お客様と話をすること。こんな家を建てたいという相談から、始まるお客様とのコミュニケーションだ。それでは最後とはどこか。家が完成して引き渡しをするところだろうか。しかし、「それはひとつのゴールでしかない」と佐藤は言う。

「家というのは、当然ですが家だけで存在するものではありません。そこに住む人、家族がいて完成するものです。生活がある。それが快適になってこその家だと思うのです。だから、本当の意味では最後というのは存在しないのかもしれません。生活が続く限り、ずっと続くのですから」

 最初から最後までという言葉は、佐藤とともに工房設立当初からともに働いている高橋正紀の口からも出てきた。高橋はもともとハウスメーカーに勤務し、営業の仕事をしていた。

「でも佐藤と同じように、あるときから売ったら終わりというのではつまらないなと感じるようになったんです。それでフリーランスとなって仕事をしていました。そんななか、設計士の先生から佐藤を紹介されて、彼女の想いを聞いていっしょに働きたいと考えるようになりました。ハウスメーカーはどうしてもお金のフローが一番になってしまうところもあります。でもいまはお客様としっかりと向き合い、工期、工程もゆったりととり丁寧な家づくりができていることがうれしいです」

 高橋は現在、建築現場の管理とアフターメンテナンスを担当している。そういう意味では最後の部分とその先を担当しているということだ。つまり、お客様の生活に関わっているということだ。

暮らし方をデザインする

 佐藤は「暮らし」というキーワードをインタビュー中に何度も繰り返していた。暮らしというのは、人それぞれだ。お客様が違えば、家族構成、生活時間帯、さまざまな違いがある。佐藤はそれを丁寧に聞き出し、それに合ったデザインを進めていく。ただし、もっと細かく言えば「暮らし方をデザインする」という言葉のほうが近い。その暮らし方というのはどんなことなのか。具体的な例を聞いてみた。

「本当にそれぞれ違うので難しいですが、例えば家事のしやすい家がいいとした場合、キッチンを中心に洗濯、お風呂などの水回りを作る。そうすることで動く範囲が小さくなり、家事をするのにあっちこっち動かなくて済むようになります。そういう細かなところで生活は変わっていくんです」

 家をデザインすることで、暮らし方が大きく変わるということだ。また、佐藤はお客様と話をするなかで、趣味や集めているものの話まで聞くという。それを生かすために家をデザインする。暖かい、涼しいといった家のスペックを担保しつつも、その人の暮らし方がよりいいもの、より快適なものになるデザインを模索していく。

 お客様と話をするなかで、佐藤は暮らし方の重要性、多様性に気づいた。そこで、NSAA(一般社団法人日本住まい方アドバイザー協会)の主宰する、住まい方アドバイザーの資格を取得した。例えば収納や片付けといった、「日常」の暮らし方までアドバイスできるようになった。いまでは雑誌で連載を持っているほどだ。「これまでは家に関することでお客様が最初に口にするのは機能の問題であることが多かったんです。断熱性、気密性そういったことです。しかし、最近になってよく聞く言葉は『快適さ』です。それはつまるところ『暮らし方』だと思うんです。それを実現することが私たちの仕事だと思うんです」と佐藤は話す。

お客様との信頼関係を築く

「家というのは大きな買い物なので、当然お金のこともつまびらかになります。家を建てたはいいけど、ローンで生活が苦しいというのでは、快適なはずもありません。だから資金計画もきっちりと練ります」

 佐藤は住宅ローンアドバイザーの資格も持ち、的確な指示をしてくれる。ただ、収入、預金、生活費などいろいろとお金のことを知るところまで親密になるのだから、それだけ信頼関係が必要になるというということだ。もしかしたら家族ですら知らないお金のことまで入っていくということでいえば、家族と同様の深い関係になるということでもあるのだ。信頼関係ということでは、現在宅地建物取引士として働く菅原恵子も違った観点から話をしてくれた。

「私は土地の売買のお仕事もしているので、お客様というと買い手の方もそうですが、売り手の方も同じくお客様なんです。例えば売地になっていない、つまり持ち主が特段売りに出していない土地があるお客様にとって最適な土地であるとき、売ってくださいという交渉から始めることがあります。そこでじっくりと話をすることで、地主の方と信頼関係ができあがると、売り手の方、買い手の方の両方がお互いに『ありがとう』と言ってくれるんです。それを見るとすごく力になれたなとうれしくなります」

 2018年に設立10周年のパーティーをしたときに、それまで手掛けた家に住んでいる人たちが大勢集まってくれたという。それはとりもなおさず、「お客様を大事に」という佐藤江理子建築工房の想いが伝わっているという証拠だ。そこで佐藤は「これだけのお客様に支えられてここまでこられた。これまでの道のりは間違っていなかったんだ」と思ったという。これから社会が変わることで「暮らし方」も変わってくる。それに合わせるようにして、新しいデザインをしていきたいと話してくれた。そして、最後に高橋が言った言葉が印象的だった。

「家の相談をしにきてくれるのは、みんな幸せになりたい人。そういう人と話をしていっしょに仕事ができるのはすごくうれしい。こんな職場はほかにはないかもしれませんね」