3つの「ワン」がつくりだす立方体
「キューブ、つまり立方体というのは3つの軸からできています。それが社名の由来なんです」と話すのは、キューブワン情報株式会社の代表取締役、芳賀吉徳だ。「立方体には縦、横、奥行の3つの軸があります。私たちキューブワンは、ナンバーワン、オンリーワン、ワンストップという、3つのワンという軸で1つの立方体を作り上げる。それが私たちの目指すところなのです」と言う。
キューブワン情報の創立は1961年。家電製品の卸業を始めたことがその起こりだ。その後、パソコンや周辺機器の販売を主業務とし、システム販売なども行うようになった。のちに、オリジナルのシステムやアプリケーションも開発、販売。技術者を自社で抱え、さらにお客様に合ったサービスを提供するようになった。
「私たちの仕事は、システムを売ること、導入することではありません。それはあくまでも方法の1つ。目的はお客様の困りごとを解決することです。課題の発見から、解決方法の提案、システムの導入、その後の運用までお客様とともに向き合っていくということが仕事です」
IT、ICTの技術を活用して、事業の効率化などをするのが主事業なのだが、芳賀は自分たちの仕事の姿勢を「扱うものはデジタル。しかし、仕事はアナログ」と言う。なかには、自分たちが何に困っているかに気づかないこともある。その課題をお客さまとともに発見し、どのようになりたいかを話し合い、ソリューションを提案する。システム導入後も、メンテナンスはもちろん、運用の手伝いなど、お客様に寄り添ってサービスを提供する。その姿勢を芳賀は「アナログ」と呼ぶのだ。
手書きからタブレットへ
まだITなどという言葉のない頃、国がようやくコンピュータ導入に本腰を入れ始めた頃から、業務用アプリケーションやシステムの導入を進めてきた。ただし、長く続く業界であればあるほど、古くからの慣習が続いており、人力の作業をコンピュータに置き換えるのに抵抗があったという。
「例えば、競り。かつては、すべてが手書きでした。競りの現場で、金額をメモに書き込んだものを、夜になって電卓を使いながらパソコンに入力。それでは間違いが多くなるのは当たり前です。間違えば直さなくてはならない。そうなると当然時間もかかる。夜まで作業が長引いてしまうということもしばしばでした」
そこで導入したのがタブレット入力だった。競りのその場でタブレットに金額を打ち込む。もちろんそれはサーバーを通して、すべてつながっているから、改めて事務所で金額を打ち込むなどという作業は必要なくなった。便利になって万々歳……かと思いきや「私たちのクビを切る気か」と昭和の頃から働く事務員に言われたこともあったという。
「もちろんそんなつもりはありません。私たちはムダな作業を省き、より広く仕事をしてもらうためにシステムを提案しています。それはひいては自分の時間をより有効に使うことにもつながります。つまりお客様の生活のための技術なのです」
その想いをお客様とじっくり話し合い、ITが未開であった業界にもだんだんとその考え方を浸透させていったそうだ。そのなかで最も大事にしたのが、芳賀が「アナログでお客様に寄り添う」と言う、社名の軸の1つである「ワンストップソリューション」だった。課題発見から運用まで、すべてワンストップで行うからこそ、迅速かつ丁寧な「アナログ仕事」ができ、信頼を得ていったのだ。
ワンストップが社内にもたらすもの
そのワンストップ体制は、社内にも好影響をもたらしている。「営業との距離が近いので、プログラマーとしては最終的に作るものが見えてやりやすい部分が大きいです。お客様に寄り添うサービス開発のためにお客様の声を直接聞けるので質もあがっていると思います」
そう話すのは公共ソリューション部門で、自治体などを対象としてネットワークの組み立て、運用、メンテナンスなどを主に担当する富樫大樹だ。開発部門でプログラミングをする大井まゆみも同じことを感じているという。
「お客様の空気感も共有できるというのは、システムを組み上げるためにはすごくいいと思っています。実際にこちらが用意してもうまく使えなかったり、実際には必要ない機能などがあっては本末転倒。あくまでもお客様が『困りごとを解決する』ことが第一義で、システムやアプリケーションなどはそのために『使う』ものだと思うので」
お客様と開発の間をつなぐのが営業を担当する大瀧康平。「こちらもやりやすい」とすぐに答えを返してくれた。「お客様の要望を技術部門とシェアして、それをどうやって作り上げるか、ゴールが一致しているのはやりやすいですね。ときには開発の人間といっしょにお客様のところへいき、さまざまな話ができるので、お客様からも信頼してもらえています」
社内でのコミュニケーションは、技術の属人化を避ける作用も生んでいる。プログラミングなどの技術は、属人化の傾向があるのが常だ。それを避けるため、キューブワン情報では、コミュニケーション会議と称した会議を行っている。全技術者が集まり技術の共有を行う。また、仕事上のサンプルも共有することで、技術がどのようにお客様の要望に反映されているかという「経験」も共有している。「最新技術の吸収のためのセミナーなど、自分の能力を伸ばすための制度を会社が用意してくれているんです。しかも資金的、時間的に後押しをしてくれる。それをさらに共有することで、できることの幅は間違いなく広がっています」と富樫は話してくれた。
お客様の成長の傍らにいること
営業の大瀧はいまの仕事の面白さをこう話してくれた。
「立ち上げて数年の建設会社と仕事をさせていただいたことがあるんです。まだできたばかりの会社なので、当然社員は少ないし、規模も大きくない。でも社長の語る夢は大きかったんです。もちろんほぼゼロからのスタートだったので、資金的なものも含めてやれることは限られていました。そのなかで、どうやってよりいい仕事をするか。そのために、どういうシステムを作り上げるか。そこから話ができ、会社が伸びていく傍らで彼らの仕事を支えていけたのが楽しくもあり、うれしくもありました」
まさに芳賀の言う「アナログ仕事」がここにあった。それは開発でも同じだ。大井が入社したのは新型コロナウィルスの流行が始まったころ。もともと神奈川でプログラマーをしていたが、子育ての環境を考えて、夫婦の地元である庄内に戻ってきた。出産を経て、キューブワン情報でプログラマーに復帰した。
「そのときは、コロナで休校などが続いた時期でした。それをどうにかするためにGIGAスクールが推進され、タブレットが各学校に導入された時期です。そのとき実は、9000台のタブレットを設定しました。正直なところ、目が回るような仕事です。でも、自分の子どもと重なったんです。まだ生まれたばかりでしたが、将来のことと重なったんです。それがモチベーションになりやり遂げることができました」と話してくれた。
ITを通して地域に貢献する
芳賀は庄内出身。神奈川で無線を勉強し、コンピュータ関係の仕事に就いていた。家族の事情で庄内に戻ることになったとき、これまでの経験をもって地域に貢献したいと考えたそうだ。ただし、ときは昭和58年。さきほども述べたがまだコンピュータが浸透していない頃だ。それが徐々に広がっていったのも述べた通り。ただし、それだけでは話は終わらない。キューブワン情報はIT、ICTシステムのプロフェッショナル。それはもちろん仕事の効率化にだけ使うものではない。私たちの生活を豊かにするものだ。学校など公共のシステムを支えるのもその一環だが、もう1つ象徴的な例がある。それが「無線」だ。
キューブワン情報は防災無線機を、無線専門の会社とコラボで開発し、自社ブランドとして販売した。そのきっかけは、行政が発令する防災無線が聴こえないことにあった。とくに家のなかにいると聴こえないことが多い。「それでは何の意味もなくなってしまいます。それを受け取る無線を作った。ただしそれではただの無線機。そこにさらにITの技術を入れて、受信だけでなく、発信もできるようにしたんです。例えばそこに登録したグループに一斉発信ができる。高齢者の一人暮らしで何かが起きたときにはそこにSOSを発信すれば、みんなが受け取れる。そうすればそれに気づいた人がすぐに駆け付けてくれる。そんな無線機を発売し、鶴岡市の由良地区300世帯に導入しました」
ほかにもさまざま、自社の技術を生かした異分野の商品がある。ただしそのすべては「ICTで地域に貢献する」という理念だ。「そういった社会貢献の姿勢にひかれて入社したという部分もあります」と大瀧は話す。「常に庄内の人が何に困っているかを考える。それがもし私たちの技術で解決できるのであれば、ソリューションを提供していく。そのためには、常に世の中に目を向けていなくてはいけません。私は建設業界を主に担当していますが法改正も含めて、さまざまな変化をしていくので、そのなかでどう私たちが協力できるか常に見ていないと、結果的には庄内が遅れてしまう。それを防ぐことが地域貢献につながってもいるのかなと感じています」
芳賀の言葉「扱うものはデジタル。でも仕事はアナログに」。その意味は、社員にも浸透している。仕事を効率化し、クオリティの高い仕事につなげる。省力化してできた時間を自分のためにつかう。加えて、学校の友達とつながったり、高齢者の見守りをしたり、ITが庄内の人々の豊かな生活を支えていくのだ。
代表からのメッセージ
キューブワン情報株式会社 代表取締役 芳賀吉徳
私どもは、ITやICTのシステムを構築し、提供する会社です。しかし、それだけでは私たちのキューブは成立しません。私たちのスタートは、お客様の課題を発見することです。そこからお客様と話し合いをし、解決策を提示。さまざまなソリューションを提供、導入し、課題を解決していきます。さらに、そこから運用面やブラッシュアップのためにバックアップ体制を整えていきます。つまり、お客様の「困った」の最初から最後まで寄り添って、それを解決していくことが、私たちの仕事です。扱う商品はデジタルですが、仕事はアナログ。もちろんITの知識は必要ですが、それとともに人間力がとても重要な仕事です。
農業、漁業を含めた事業者だけでなく、コロナの流行によりオンラインでの授業や行事を余儀なくされた学校や高齢者の生活の手助けをすることなど、庄内地域にはまだまだ課題がたくさんあります。ICTで地域に貢献する。これを胸に、誠実に、真摯に仕事に向き合えるみなさまのご応募をお待ちしております。