季節ごとの香りに、心が満たされます

イラストレーター rikkoさん

「さかたのかわいい」シリーズや「rikkoの楽しい音楽会」など、ほっこりと心温まるイラストを描くイラストレーターのrikkoさん。 自分の「好き」を大切にしながら酒田で暮らす彼女に、Uターンの経緯やお仕事について伺いました。(2022年12月取材)

<かわいい雑貨屋さんに憧れていました>

市街地から少し離れた里山で代々お寺を営む家に生まれました。一人っ子だったものの年上の子は年下の子の面倒をみるのが当たり前で、地域みんなが大家族という感じの環境で育ちました。
酒田南高校では吹奏楽部に入り、野球部の応援のため県内外へ遠征に行くなど充実した日々を過ごしていました。私が通う普通科には県外から進学してきた子もたくさんいて、様々な夢や価値観を持った友人と出会うことができ、新しい世界が開けたようで新鮮でしたね。
小さいころから絵を描くのは好きでしたが、中学でも高校でも美術部に入ることはなかったし、それを仕事にしたいという気持ちも全然ありませんでした。ただ、田舎には売っていないかわいい雑貨や文具に憧れを抱いていて、東京へ行ったら素敵な雑貨屋さんに行きたい!そういうお店でアルバイトしたい!と思っていました。

<東京の大学へ進学>

高校卒業後は、父と同じ仏教学部のある大学へ進学しました。「お寺の子」として育ってきて、なんとなく自分が継ぐのかなあと思ってきましたが、本当にそれで良いのかを考えた時に、まずは仏教について学んでみてから判断しようと思ったんです。
大学では美術部に入り初めて油絵に挑戦し、先輩から新宿の大きな画材屋さんに連れて行ってもらった時は大興奮でしたね(笑)。酒田にいた頃には想像もつかないくらいの種類の絵の具や筆、紙類なんかが揃っていて感動し、やっぱり東京はすごいなと思いました。
ただ、最初の2年間は大学から少し離れた地域にある学生寮に入っていたのですが、とにかく通学時の満員電車が辛くてつらくて。徐々に鬱々としてきてしまって、大学3年からは学校の近くのアパートへ引っ越しました。あの空気感だけは、思い出すだけで息が詰まりそうになります。

それ以外は楽しいと感じることばかりで、大学3年からは念願の雑貨屋さんでのアルバイトも始め東京暮らしを満喫していたのですが・・・、楽しみ過ぎたんでしょうね! 完全に就職活動の波に乗り遅れてしまったんです。もともと大学卒業後すぐには酒田へ戻るつもりはなかったので、東京で就活をしなければならなかったのに、気付いたら興味のあった絵本や児童書関係の職種の募集はすでに締め切られていました。どうしようかと悩んでいた時、美術部の先輩がデザインのスキルを学ぶための学校に通っていると聞いたんです。私も雑貨や文具などを「作る側」の仕事をしてみたいと思い、大学4年になるとキャリアスクールに通い始めました。デザインの仕事に就くためにはIllustratorやPhotoshopなどのソフトが使えることが前提となったため必死でしたね。
そして、雑貨の販売を行い自社でキャラクターグッズのデザインなども手掛ける会社の求人を見つけ、「私のやりたいことが全部詰まっている仕事だ」と思い応募しました。内定をいただいたのは卒業式の前日だったんですよ!綱渡りみたいな人生ですね(笑)。
両親は、都内にある仏教関係の事務局などの仕事に就いて欲しかったようで、せっかく大学で仏教を学んだのに雑貨屋に就職するなんて・・・と思っていたみたいです。

新卒で入社した職場にて

<イラストレーターという職業との出会い>

私が就職した会社は、大阪に本社があり東京支社は私ともう一人の先輩だけの会社だったのですが、私以外の方は皆さんものすごく絵が上手で衝撃を受けました。私の直属の上司である東京支社の先輩は、すでにイラストレーターとして個人での仕事も受けている方だったので、そこではじめてイラストレーターという職業を間近でみて、自分もこんなふうに働きたいという思いが生まれました。とはいえ子ども向けのイラストを描きたいという軸はあったものの「自分らしい絵」というものがわからなくて、下請けのイラストの仕事などで経験を積みながら試行錯誤の日々でした。入社2~3年目には、有名文具メーカーの依頼で、私が描き起こしたシリーズがグッズ展開され大きな自信に繋がったこともあり、在職したままイラストレーターコースのあるスクールに入校し、独立に向けて「自分らしさ」を追及していきました。

東京でのグループ展

吉祥寺にて初の個展 「rikkoの楽しい音楽会」

そして、スクールで一緒に学んでいた仲間と開催したグループ展に来ていただいた出版社の方から、絵本の挿絵の依頼をいただくことができたんです。それがイラストレーターとしての初めての仕事だったのですが、子ども向けの絵本に関わる仕事をしたいと思っていたので、有名作家さんの物語に私のデザインしたイラストが挿入され、とても嬉しかったです。

<酒田にUターンしたきっかけ>

大学進学を機に上京した後、初めて酒田に帰省した際に、土と水が混ざり合った田んぼの香りを全身で感じたんです。酒田で暮らしている時には全然気が付かなかったその香りに胸がいっぱいになり「今までずっと、この環境に守られてきたんだ」という思いが押し寄せてきました。その記憶が東京で暮らしている間も鮮明に残っていたので、いつかはUターンしたいと思っていたんです。
実際にはイラストレーターとしてもう少し東京で経験を積みたい時期でのUターンだったのですが、家族や稼業の事などいろいろな条件が重なって、戻ることを決めました。
Uターン後に高校の同級生だった夫と再会し結婚。夫はお寺の仕事に興味を持って出家もしてくれたので、このタイミングでの帰郷はご縁あってのことだったのかもしれません。

<酒田でのお仕事について>

Uターンしてしばらくは東京の仕事がほぼ100%で、都内のギャラリーで個展を開いたり継続してクライアントさんから仕事をいただいたりしながら基盤を固めていきました。

そしてUターンから5年ほど経った頃、酒田市でギャラリーを営む「Lab」さんから、酒田市在住の写真家さんとの二人展へのお誘いをいただいたんです。せっかくだから「酒田」という共通のテーマがあると良いよねという話になり、その時に初めて酒田の様々なものをモチーフにしたイラストを描いてみることにしました。以前に山王くらぶで見た白鳥の吊るし飾りがすごくかわいかったことが印象に残っていたので、それをイメージしながら山居倉庫や北前船を加え制作したのがこちら(*1)です。この作品をきっかけに酒田でのお仕事が徐々に増えていき、酒田大獅子やはんこたんなのマトリョーシカなどを製作するようにもなったので、私にとってターニングポイントとなった1枚です。

その後、酒田駅前「ミライニ」の観光案内MAPのご依頼をいただいたり、ワークショップなども開催する機会も増え、どんどん酒田が仕事のフィールドになっていってとても嬉しいです。この夏から先月にかけては、ミライニや夢の倶楽「華の館」、アイアイひらたなどで立て続けにイラスト展を開催させていただきました。
個展では、自分の世界観を各回のテーマに合わせて展示するなどしていますが、クライアントさんからの依頼の場合は、やっぱり反応を見るまで毎回ドキドキします。出来ればご期待いただいた以上のものをお届けしたいという思いがあるので、ご希望の雰囲気やイメージを共有させてもらいながら取り組んでいます。

「はんこたんな」のマトリョーシカ

地元の染物店「斎染」さんと作った手ぬぐいやあずま袋(↑詳細は画像を“クリック”)

酒田市「自分らしくを応援するポータルサイト」イラストのお仕事も(↑詳細は画像を“クリック”)

<一生描き続けられたら幸せです>


酒田や山形をモチーフにした作品はたくさんの方々が喜んでくれるのでもっと描いてみたいですし、子どもたちとのワークショップもこれからも続けていきたい活動です。美術系の大学を卒業したわけでもない私がワークショップを開催するなんて、おこがましいんじゃないかって不安があり最初は抵抗があったんですけど、回を重ねるうちに一緒にやってみることに意味があると感じたので、子どもたちが何かに挑戦するきっかけになれば良いなと思っています。もちろん東京の仕事もまだまだ私の活動の基盤なのでそちらも頑張りたいし・・・、もっともっと、死ぬまで描き続けたい!という思いが私の原動力かもしれません。そして大きな目標ではあるんですけど、いつか「歌のお兄さんお姉さん」でお馴染みの幼児向けご長寿番組にイラストレーターとして関われたら最高です!

<オフの日は子どもと一緒に楽しみたい>

子どもたちは平日、保育園や小学校で頑張っているので、休日は子どもたちと楽しい時間を過ごしたいと思っています。先日も、小学2年生の娘が「鳥海山に登ってみたい!」と言ったことがきっかけで、山登り経験豊富な義母と一緒に行ってきました。頂上までは登れませんでしたが、私自身初めての鳥海登山だったのでとても楽しかったです。

また私はもともとビールが大好きだったのですが、酒田には四季折々の美味しいものがあるので、飲む機会がますます増えちゃいました。夫もお酒が好きなので、「美味しそうなお刺身あったから買っちゃった」「じゃ、飲んじゃう?」とか「枝豆の美味しい季節だね」「そうだね、飲むしかないね」みたいな会話が連日繰り広げられ、週末だけ飲もうというルールを作っても結局週5で飲んでいる・・・といった感じです(笑)。

東京で暮している時はあまり食事にこだわりがなく自炊もワンパターンだったのですが、Uターン後は地元の食材を丁寧に調理したいなという気持ちも生まれました。今後は昔ながらの郷土料理などにも挑戦してみたいですね。

<Uターンを検討している方へメッセージ>

Uターンを決めた理由のところでも少し触れましたが、季節にも匂いってあるんだということを実感しています。田植えの時期は若々しい苗と土の匂いが漂い、稲刈りの頃には少し香ばしいような稲や草木の香りが溢れます。都心ではなかなか感じられないので、これだけでも酒田で暮らす価値があるなあと思っています。
田舎には仕事がないと思っている方も多いかもしれませんが、今はテレワークや副業・兼業なども当たり前になってきていますよね。私の周りにも本業のみならず多岐にわたって活躍している方もいらっしゃいます。一つのことに縛られず、自分にとって住みやすい街、精神的に安定して暮らせる街に住むことってすごく大切なんじゃないかと思いますね。
子育てものびのびできますよ!!

酒田市は食べ物も美味しいし、季節ごとの香りも楽しめ、地域の人たちも温かいので暮らしやすくて大好きな街です。
そんな酒田の魅力を、私のイラストを通してたくさんの方にお届けできるようこれからも頑張っていきたいです。

名称 イラストレーター rikkoさん

at sakata

at sakataの転載の記事です。

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