「花鳥風月」は、自然界の美しい風景を意味する。色濃い四季の移ろいを感じられる庄内を慈しみ、店主の佐藤勇太さんは自身のラーメン店をそう名付けた。老舗店での修業を経て 「酒田のラーメンをもっと身近な存在にしたい」との想いから、2006年に開業。研究に研究を重ね、今日まで受け継がれた伝統のラーメンに“花鳥風月らしさ”が加わった。

一口目のぷるっとした弾力が特徴的な麺は、数種類の小麦粉をブレンドし、時期や気温などに応じて配合を変えて生成する。鯛出汁をベースにしたスープは、白身魚ならではのあっさりと上品な風味が特徴。原材料から調理工程まで研究を重ね、花鳥風月を語るに欠かせない存在であるワンタン。口の中を泳ぐような極薄皮で、海老丸々一尾を包んだ海老ワンタンは、佐藤さんが修業時代からずっと挑戦したかったもの。肉餡が主流だった当時、周囲の懸念をよそに作り続けて13年。今では「酒田ラーメン」の新しいスタンダードとなった。

ラーメンの作り手として、佐藤さんは「その歴史と伝統を、若い世代へと守り継ぐ責任を強く認識するようになった」と話す。花鳥風月は、介護・保育施設への出張ラーメンや、早朝開店のセカンドブランド「酒田ラーメン照月」の営業、さらには海を越え、ニューヨークのラーメンコンテストに出店するなど、より多くのお客さんのもとへ酒田のラーメンを届けようと努めている。毎日食べても飽きのこないその味わいは、今日も人々を“ふるさとの味”で魅了する。