「ととこ」は「にわとり」の方言で、その語感には愛着がこもる。ここは鶴岡市の三井農場直営の焼き鳥店。鮮度、焼き加減、タレのコク、塩のひとふりなどに直営店の腕を見せる。しかも1本1本が安価で、串を持つ手も止まらないというものだ。

ととこは、焼き鳥をはじめ、から揚げ、とり天、チキンカツ、オムライス、サムゲタンなど名物が多い。その一つが「庄内鴨」だ。三井農場では、バルバリー種というフランスでも人気の鴨品種を生産している。芳醇な香り、濃厚な赤身、上質な脂で味にクセがなく、店では焼き鳥やスモーク、ソーセージなどで出しているが、中でも鴨のスライスとつみれをたっぷりのねぎで味わう「鴨しゃぶ鍋」が一押し。ここで初めて鴨肉を食べて、好きになったという人も多い。

また「鶏そぼろ弁当」もよく知られている。鶏がらスープで炊いたごはんに、そぼろとから揚げ、錦糸卵の親子弁当。店頭販売分は数に限りがあるが、取り置きや大量注文もできるのでぜひ一食を。

今年、ととこ10周年の感謝祭には大勢のお客さんが訪れた。「子どもたちがいて、おじいちゃんもいて、若い人もいて、そういう空間が楽しくて、うれしかったです」。老いも若きも集う焼き鳥店、それを叶えたのは「長く幅広く受け入れてもらえる、おいしいものを出したい」という店のスタッフの純な気持ちにある。シンプルイズベスト、素朴こそ最良、これが日本人の大好きな焼き鳥の味だ。