銀座と名の付く場所は各地にある。モダンで格式高く、流行と文化の発信地である東京・銀座に由来するものだが、鶴岡にも街の表情を映す、夜の銀ぶらにもってこいの店がある。バー・シックが銀座通りに店を構えて20余年。界隈に老舗も多い中で、オーナーの鈴木克人さんは「その古き良き形を受け継ぎながら新しいものを作っていきたい」と話す。

店のカクテルメニューは100種を超えるが、進化するカクテルの世界において、数は過程に過ぎない。例えばスタンダードのラスティネイルも、ここではヒッコリーのスモーク(煙)を混ぜ込んでグラスに注ぎ、また、ウォッカにコーヒー豆を浸漬するなど、古典や伝統にインフュージョンやミクソロジーといった新しいカクテル技術を盛り込んでいる。庄内でいち早く取り入れたフレッシュフルーツのカクテルはこちらの大定番。庄内柿、ラ・フランスなど旬や地産といった特別感に加え、ビタミンを補給するようなみずみずしさをカクテルで楽しむことができる。

「庄内は食の都と謳うだけあって、手ごろにおいしいものを味わえる贅沢な場所。バーでも、東京と変わらないクオリティのものを提供したい」。バーは空間すべてが味わいの要素となる。フードメニューもハバナ産のシガーも、そして音楽も。店に流れるジャズはすべての人を主役にするBGMだ。店では月1回ライブも開くなど、音と酒に酔いしれることができる。ドアを開けば、奥に伸びるカウンターをほの灯りが照らす。この洗練された空間と至極の一杯と共に、今日も鶴岡は更けゆく。