鶴岡の市街地から庄内空港へと伸びる、辺り一面田んぼが広がる道。その途中にある2004年オープンの農家レストラン、やさいの荘の家庭料理 菜ぁ。2013年にご両親の後を継ぎ、併設の民宿とともに運営を指揮する小野寺は、重化学工業分野の研究職という変わった経歴の持ち主だ。
「仕事のあてはなく、あったのは庄内が好きだという気持ちだけで」と10年ほど前、仕事を辞めてUターンしたときのことをを語る小野寺。40年ほど前から両親が営んできた無農薬無化学肥料栽培の農業や、菜ぁでの接客業務を手伝ううちに、喜ぶ顔が見える仕事に魅力を感じ、この世界に足を踏み入れた。

米と野菜をつくり、自ら調理場にも立つ小野寺だが、「料理人」と名乗ることはない。料理をする上でも、「農家」であることが強みだと考えているからだ。

「とれたての野菜を使えることはもちろん、刻々と変化していく野菜のコンディションを把握した上でその野菜が最も活きるメニューを考え調理できるのは、農家をやっているからこそなんですよね。そして、何より味わっていただきたのが米です。炊き方にも気を遣っていますが、それ以前の米自体が持つおいしさを感じていただけると嬉しいですね」。

農作業などもあり日中お客さまの前に出られない代わりに、夜はお客さまとのコミュニケーションを大切にしているという小野寺。「料理の裏側にあるストーリーを感じていただくことにも意味があるかなと思い、農業のこと、食のこと、地域のことなどをお話させてもらっています」。より深くゆっくりと料理やお酒を味わいたい方は、夜に訪れてみるのもいいかもしれない。