港町酒田から東に向かった出羽丘陵の山あいにある小さな里・生石に、140年の歳月を重ねてきた旧家の屋敷がある。その古民家を店主自らが３年がかりで修繕し、囲炉裏を使った炭火焼き料理と手打ちそばを提供しているのが「生石　大松家」だ。

「誰もが持つであろう遠い記憶の中の、田舎のにおいや時間、空間を、炭火を囲みながら郷土料理と地酒で楽しんでいただければ」と店主の漆山が語るように、店内は古民家の重厚な造りに加え、洗練された美の装いが隅々にまで行き渡り、郷愁だけでなく優雅で豊かな空間と時間に包まれている。料理も地元生石産のそばに始まり、庄内の四季折々の恵みがふんだんに取り入れられた郷土料理で、まさに土地の歴史や文化を感じさせる滋味あふれる味わいだ。

日頃の喧騒を忘れ、時が経つのも忘れ、日本の原風景が残る山里の古民家で、ただ食と空間を楽しむ。ここは、そんな豊かで贅沢な体験を可能にする場所だ。