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地産地消 再生可能エネルギーで地域貢献

おきたま新電力株式会社 / 事業企画・総務

インタビュー記事

更新日 : 2024年02月13日

再生可能エネルギーが地域を変える。電気の地産地消を目指す

2016年4月の法改正で、電力の小売が全面自由化されました。私たち消費者は、自分に合った電力会社を選ぶことができるようになっています。そのうえで「再生可能エネルギーを重視した電力会社に切り替えたい」という声も。今回、ご紹介する「おきたま新電力株式会社」は、再生可能エネルギーで発電した電気を小売する企業です。代表取締役社長の後藤博信さん、社員の山本裕介さんにお話を伺いました。

おきたま新電力株式会社 事業概要

2021年設立。置賜地域内にて、再生可能エネルギーを利用した電力を販売するのが主な事業です。小売事業自体は2022年11月から開始しており、置賜三市五町を対象エリアに各自治体、民間団体、会社に供給しています。現在、100社以上と契約中です(2023年12月現在)。
置賜地域の自然環境下で生み出されている「電気エネルギー」を計測すると、置賜地方全世帯の電力消費量よりも多く、ほぼ自給自足が可能。おきたま新電力株式会社では、この豊富な自然を「地域資源」と捉え、置賜地域が目指している「おきたま自給圏推進都市」の力になることを最終目標としています。
今後は一般家庭に向けての小売も増やしていく予定です。

地球を守る地域づくりの橋渡しを行なう

2020年の調査によると、置賜地域内で再生可能エネルギーによってつくられる電力は一般住宅7万世帯を賄うのに十分な量があることがわかりました。それを受けて設立されたのが「おきたま新電力株式会社」です。

「再生可能エネルギーといわれるものには『太陽光』、『小水力』、『風力』、『地熱』、『バイオガス』の5つの資源があるのですが、そのうち太陽光、小水力、バイオガス、風力の4つの有力資源が置賜地域にはあります。外部から電力を買わなくても、地域資源だけで十分賄えるだけのエネルギーが存在しているのです。それを活用して、地域住民のみなさんや企業、公共的な施設で使う電気を供給する。それが私たちの主な役割です。これは現在、世界的に問題となっている温暖化の影響にも関係していきます。原因となっているひとつに温室効果ガスであるCO2排出量の多さがあげられていますよね。現在、日本で最も多く使われている発電方法は石炭、石油をベースとした化石燃料ですが、火力発電がその代表です。これらは発電するときに大量のCO2を排出していることはご存知ですか。このまま化石燃料だけに頼っていては、温暖化は深刻になっていくばかり。再生可能エネルギーは発電時にCO2を排出しないため、温室効果ガス削減に大きく貢献できるのです。世界的に2025年を目標にして、この化石燃料利用を少なくしていこうという動きがあるのですが、置賜地域でも“地域環境を守る地域づくり”として弊社がその橋渡しをしていきたいと考えています」

大手に委ねられていた電気供給体制は、東日本大震災後に大きく変わりました。民間、個人が電力供給に関わることができるようになり、消費者もそれらを選ぶことができるようになっています。

「電力の自由化が進んで、発電事業、小売事業が民間、個人でも行なえるようになり、我々もそれで才覚させていただきました。私は別会社で長井市に発電所を運営していて、そこでは小水力発電という農業用水の流れる水の力を借りて発電し、置賜地域に供給しています。これまでは大きな発電所から広い範囲に供給するのが当たり前でしたが、これからは地域でつくったものを地域で使う『小規模で分散型』という考えに変わりつつあります。外部から供給するのではなく、地域内の電力は地域内で賄うのが、どんどん主流になっていくと思っています。水車であったり、薪を燃やして発電したり、住民と一緒になって、『このエネルギーなら電気に変えることができるよね』と相談しあいながら、生活に取り込んでいく。それは自然の恵みが豊かな場所だからできる特権ですよね」

置賜地域に再生可能エネルギーが多いのは、自然と共に生きてきた歴史があるおかげです。

「米沢は盆地なので夏は暑いし、冬は雪も多い。生活環境として厳しい部分もあります。しかし、その環境を大事にしながら、自然と共に生きていこうという強い意識もあると思うんです。その強い意識があるからこそ、自然の恵みをエネルギーとして回収できる技術が生まれたのではないでしょうか。近年、始まった取り組みのひとつに米沢牛となる牛の牛糞を利用した発電方法があります。通常であれば、排泄物は産業廃棄物としてお金を払って捨てるものです。その牛糞を発酵させてエネルギーにし、発電する仕組みをつくったんです。“BAD”を“GOOD”に変えた取り組みです。邪魔だったものが活かすものになる。これこそ循環ですよね。そうやって『自然環境をよくしたいよね』という考え方が地域の人たちに根付いていると感じています。まだまだ使い切れていない資源があるので、そういうものを活かす方法を一緒に考えながら、弊社も協力していきたい。小さな動きでもみんなが参加することで大きくなっていけると思うので、少しずつでも増やしていきたいですね」

 

一般化が課題。いずれは地域全体を支えたい

2022年に電力供給を開始。現在の契約者は自治体や企業のみですが、1月からは学校での大規模な供給も始まり、契約は増え続けています。

「ご契約いただいている自治体、企業の方には営業担当からメリットと変える社会的意義などをご説明させていただいて、契約していただきました。今年の1月から、長井市にある市立の小中学校8校で使用する電力をすべて再生可能エネルギーで賄うことが決まりました。主な電源の発電事業者は、長井市内にある『東北おひさま発電』と野川土地改良区のふたつです。弊社が供給を担当しています。学校内には、電力使用量や発電している場所、CO2削減量などをディスプレーで表示し、電気を“見える化”。子どもたちが環境に対して興味が湧いたり、行動するきっかけになればいいと思っています」

一般家庭での契約も検討中。それにはインフラの整備が課題です。

「一般家庭に供給するには、料金の徴収の仕方やインフラを整備しないといけないので、それらをひとつずつクリアにしていきたいと思っています。今も個人の方から契約したいという問い合わせをいただいたり、ニーズがあることも承知しています。最終的には、再生可能エネルギーだけで全エリアを賄いたいと考えます。地域の中でつくった電力が100%だとしたら、外部からの影響を受けないので、電気料を安定化できるメリットも生まれます。私たちの考えでは20年後には100%地域で電力がつくられているはずです。全国では考えられない地域づくりですよね。それが実現できれば、置賜に移住しようと考える人、移転する企業も増えると思います。すでに生活されている人だけではなく、新しく『来たい』、『住みたい』と思われる地域になる。それも私たちが目指すところです」

 

再生可能エネルギーが見出す未来を共に考える

企業や学校などが再生可能エネルギーによる電気を利用することで、災害に強い街になるとも話します。

「いずれは、電力の供給に送電線ではなく、蓄電池を配達したり発電所に充電をしに行く仕組みも整備したいと考えます。大規模発電所の電力供給に頼らず、地域でエネルギー供給源と消費施設を持ち地産地消を目指す『マイクロブリッド』の導入も加速していくはずです。そうなれば災害時の復旧が早くなりますし、エネルギーの供給拠点としても活躍できます。我々は、設立するときの信念として『地域貢献、地域課題解決のために自分たちの収益の一部を還元すること』を掲げています。自治体では解決できない隙間の部分を住民と相談しながら、あるいは『こういうことを一緒にやりましょう』と提案していきたい。あくまで地域のために何ができるのかを再生可能エネルギーの観点から、着手していこうと思っています」

今後は、自社で発電所をつくり、発電から供給までする事業も始める予定です。

「今は発電所から供給していただいたものを小売するのが弊社の役割ですが、これからは電気をつくるところから始めていきたいと考えています。電気をつくるお手伝いという意味では、学校の屋根、スーパー、個人住宅などに太陽光の発電設備を提供し、自家発電ができる仕組みもつくっていきたいですね。ただ、雪の多い置賜地域では太陽光発電に不安がある人も多いと思うので、その問題も解決しなければいけません。地域の人たちが特色のある電源を利用しあう、助け合う、融通しあっていけるように、仲介し、どの組み合わせがベストなのかを提案していくのも私たちの仕事だと思います」

事業は始まったばかり。まだ第一歩を踏み出したところなので、手探りな部分も多いと話します。新しいことへの挑戦が多い分、「こうでなくてはいけない」という固定概念で行動するのではなく「こうしていきたい」と新しく考えて行動できる人を求めているそうです。

「チャレンジ精神を持った人を求めています。『これまでこういう状況だったから、未来もこうなるしかないよね』ではなく、変われる環境をつくってチャレンジしていく。その行動ができる方がいいです。そのうえで地域に対して深い愛情を持てる人でしょうか。日本が変わるためには、地方が変わらなければいけないと思っています。自然の中で生活している人だからこそ芽生える感性を大事に、行動を起こしていきたい。未来を共に変えていこうと思える方と仕事をしていきたいですね」

置賜地域の特色を発展させるために活動し、近い将来、住民に還元するために、その一歩を踏み出したばかり。課題もありますが、柔軟な考えを持つ後藤社長は、実現に向けて確実に進んでいます。次は、2023年に入社した社員の山本裕介さんにお話を伺いました。


ストレスフリーの職場。自分で働き方が決められる

—— 入社したきっかけを教えてください。

山本裕介さん:2023年の10月に入社しました。私は静岡県沼津市の出身で、大学で東京に上京後、ずっと東京で働いていました。妻が山形出身でUターンしたいという希望があったのと、おきたま新電力株式会社で働くメンバーに大学の同期がいたのがきっかけです。

—— 担当の仕事は何ですか。

山本さん:電気の需給管理業務をしています。契約者様がどれくらいの電気を使用するかと、発電所がどれくらい電気を発電できるのかを予測して調整するのが主な内容です。パソコンでできる作業なので、自宅でもできますし、基本的に毎日出社することはないですね。ただ、毎日管理する必要があるため、土日祝日も交代で作業しています。その分は休日残業手当も貰えます。

—— リモートで仕事をする方が多いですか?

山本さん:弊社の仕事のほとんどはデスクワーク。各々が好きな場所で仕事をしています。毎週水曜日に定例会議があるので、そのときは全員が出社して顔を合わせます。それ以外は基本自由。会社で仕事をすることもあれば、同僚の家に集まることもあります。9時〜18時がベースですが、フレックスなのでフリーランスの働き方に近いかもしれません。

—— この会社に入ってよかったことは何ですか。

山本さん:完全にホワイトなことです。残業や休日に働くこともありますが、その分は自分で決めて休みをとっていいですし、出退勤もアプリで管理しています。上司、同僚含めて、壁がなく何でも話し合えることにも救われています。社長は常に新しいことにアンテナを張っている人なので、私たちの意見も聞いて取り入れてくれることも多いんです。仕事内容としては、エンドユーザーが近いことがモチベーションに繋がっていると思います。隣のオフィスの電気は弊社が供給しているとか、契約してくれているお客様を身近に感じることでリアルな声も伝わってきますし、その言葉がやる気に繋がっていますね。

—— 移住したいと思っている方に向けてアドバイスはありますか。

山本さん:移住する以前と今では、置賜について印象はあまり変わっていません。温暖な地域で育ったので、雪に不安はありますが、それ以外は居心地の良さを感じています。私は移住について悩まなかったんですよ。それは仕事が先に決まっていたことも大きいとは思います。ゼロスタートでは来られなかったと思うので、仕事をまず見つけられれば、踏み出せるのではないでしょうか。

—— 今後、チャレンジしたいことを教えてください。

山本さん:前職は発電所をつくる側にいました。その経験を活かし、会社に貢献していきたいです。弊社は今後、発電所をつくる事業にも力を入れていく予定なので、そのときには積極的に参加し、指導する側にもなりたいと思っています。

 

「電気供給」の仕事は、ほとんどがデスクワークなので基本的なパソコン知識は必要となります。しかし、出社義務がないので、リモートで働けるのは大きなメリットです。「再生可能エネルギー」は、地域貢献だけでなく、地球を救う一手になり得る重要な資源。置賜地域にある豊富な資源をどう活かしていくのか、おきたま新電力株式会社と共に挑戦しみてはいかがでしょうか。

取材・文_中山夏美