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循環型社会を目指して地域貢献へ

株式会社横山興業 / 建物・ビル等解体業

インタビュー記事

更新日 : 2023年10月23日

「再生」で地球を支える。未来に繋がる仕事

 “サスティナブル(持続可能性)や“SDGs”に貢献する取り組みは、近年、世界共通認識になりつつあります。建物やインテリアにおいても、その考えは浸透し始めていて「サスティナブル建材」と呼ばれる再生材料も普及。建設リサイクル法の改正と共に、20年以上前から廃棄物をリサイクル資材に変える仕事を担っているのが、横山興業です。今回は、代表取締役社長の横山直人さん、社員の星章央さん、尾形蒼空さん、片野佑哉さんに、お話を伺いました。

株式会社横山興業 事業概要

昭和49年に「横山砂利」として、砂利を販売する会社を設立。その後、土木の下請けを始め、生コンクリートの製造販売、解体工事、リサイクル資材と事業を拡大。2022年からはグランピング事業をスタートさせ、現在は5つの事業に取り組んでいます。
売上のメインは建物解体事業。大小問わず、家屋から大きなビルまで解体を請け負っています。置賜地区を中心に、南東北で多数の実績があります。解体した建材の95%以上をリサイクル資材にして他社に販売。自社でリサイクルセンターを持っているので、廃棄物の中でリサイクルができるものについては、そこで処理が可能。他社に依頼することがない分、低コストで解体工事を行なうことができます。
生コンクリートの製造販売においては、毎時90㎥、日産720㎥の自社生コンプラントを所有。 日本産業規格表示認証工場でセメントは住友大阪セメントを使用。南東北に系列会社を持ち、各社からの配送も行なっています。
置賜地区初の試みとしてオープンさせたのが、グランピング施設「ルーラグラン ソラシタ」。北欧をテーマに3種類のテントを用意し、全8棟を運営しています。

リサイクル率95%以上の実績

リサイクル資材とは、廃棄物を別の新しい材料として利用できるように処理した材料のことです。建築建材での利用も普及し、環境問題の観点からも今後、さらに需要が高まることが予想されます。解体工事を担っている横山興業では、木材とコンクリートをメインにリサイクルを行なっています。木造住宅の解体であれば、95%以上はリサイクル資材として生まれ変わるそうです。

代表取締役 横山直人さん

「エコフレンドリー部(リサイクル事業の部署)を設立する以前は、解体で出る廃材はすべて燃やしていました。自社に焼却炉を持ち、そこで処理していたんですね。しかし建設リサイクル法が2002年に執行され、建設資材を建築現場で分別し、建設廃棄物をリサイクルしなければいけなくなりました。家屋からは、窓ガラス、サッシなどのアルミ、鉄、コンクリート、木、プラスチックなど、さまざまな廃棄物が出ますが、それをすべて分別。そこから木材は、木製チップ、おがこ(家畜の敷き藁)、ペレット燃料に処理をして他社に販売をしています。当初は、木製チップを購入してくれる業者がいませんでしたが、現在は庭リフォームのガーデニング資材に使われるなど需要が増えていますね。おがこは、畜産農家から敷き藁代わりに使える細かさであれば購入していただけるということで、こちらで機械を導入して販売することになりました。ペレットストーブに利用する木質ペレットは、燃やした時に排出される灰や煙が少ないという特徴があり、今後、期待できる資材だと思っています」

解体工事費は1/3が処分費となります。近年は廃棄物を捨てる料金も高騰しており、その分、解体工事費の価格も上がっているそうです。

「弊社は自分たちで解体した現場の廃棄物のほとんどを自社で処分できるので、その分、他社よりも安く請け負うことができます。60年以上、米沢で事業を続けていますし、弊社に信頼を寄せてお願いしてくださる方が多いのが強みです。その信頼を裏切らないためにも、『横山興業さんの現場はキレイだね』と言われることを徹底しています」

 

年齢問わず、社員のやる気に見合った報酬を

解体工事現場では、重機の取り扱いは必須となります。その操作をする「重機オペレーター」は高い技術と専門性が必要で、資格を得た人だけが行なえます。

「重機オペレーターが操作できる重機は、資格によって異なります。ですから弊社ではいくつも資格を持っている人が多いんですよ。当日の試験料は社員に負担してもらいますが、試験を受けるための講習費はすべて会社負担です。例えば、中型車両以上の免許を持っていれば、トラックが運転できたり、資格を持っていることで仕事の範囲が広がるので、ステップアップしたら給料にもしっかり反映します。年齢や勤続年数は関係なく、社員のスキルに見合った賃金が得られる仕組みにしていますね」

現場から「こうして欲しい」などの要望が出た場合には、社内で検討し、それを反映することもあるそうです。

「以前、現場スタッフから『この重機の評判がいいので購入してもらえないか』という要望が入ったことがありました。現場のことは、毎日働くスタッフのほうが熟知していると思うので、そのときは意見を取り入れて購入しましたね。弊社で売上を上げてくれるのは、現場スタッフ。1番大事にしていきたいと考えています」

 

解体のイメージをクリーンに変えたい

建設業というと、騒音、汚染、森林破壊など、マイナスなイメージを抱くかもしれませんが、実際は違います。とくに横山興業においては「リサイクルは当たり前」を提言しており、地球環境、住環境に配慮した解体を行なうことに尽力しているのです。

「ハードなイメージを持つ方が多く、避けられる業種ではあると思います。解体工事というと壊すだけだと思われるかもしれませんが、弊社は『リサイクル』がメイン。環境に配慮した企業であることをもっと広く知ってもらう必要があると考えています。現状は、現場から出た廃棄物のリサイクル率は95%以上ですが、それを100%に変えていきたい。それが目標です」

また、グランピング施設をオープンしたのは、地域貢献という意味合いも大きいと話します。

「置賜地区にはない施設だったので、地域の観光に繋がればと思いました。高速道路から車で5分ほどの場所にあり、アクセスの良さから隣県からのお客様もいらしています。宿泊施設は、すべてSDGsを意識した建物で、もしも閉業となったときには元の自然に戻るというイメージで作っています。米沢は雪が多いので、冬の観光業は厳しい。でも目線を変えれば、雪遊びができるスポットでもあります。冬もお客様を呼べる施設を目指して試行錯誤しながらチャレンジしていきたいですね」

横山興業は「壊す」から「再生」に視点を変えて、解体工事の印象を払拭する取り組みを行なっています。廃棄物の減少が地球環境にとって大きなメリットとなるのは、確実です。いらなくなったものに付加価値を見出し、再利用が当たり前の世の中を目指しています。次は、実際に現場で働くスタッフ3名にお話を伺います。

 

—— 仕事内容を教えてください。

星章央さん:入社12年です。エコフレンドリー部に所属しています。解体・工事部で解体した発生材を受け入れて、処理しリサイクルするのが仕事です。

尾形蒼空さん:入社3年です。解体・工事部で住宅解体をしています。

片野佑哉さん:入社2年で、グランピング施設「ルーラグラン ソラシタ」のスタッフです。お客様の接客、清掃、予約サイトの管理のほか、予約プランの作成やサービス内容などの企画の提案もしています。

 

—— 仕事のやりがいはなんですか。

星さん:廃棄物の分別は大変ではあるのですが、この仕事を通して地球環境に貢献できていると思えることですね。何もしなければ、ただの廃棄物だったものが手を加えることで生まれ変わります。それを実感できるのは大きいです。

尾形さん:家屋を解体するのは、平均2週間ぐらいかかります。内装がとくに大変で、重機だけでなく、手作業で解体していく作業も多いんですね。とくに新しい家は複雑な造りになっていたり、地震に強い家は壊れにくいので、苦労します。無事に更地になり、廃棄物をひとつも残さずに現場が終われたときには、やりきった気持ちが大きいです。

片野さん:お客様から口コミをいただいたり「楽しかったです」と声をかけていただけるのは嬉しいです。まだオープンして1年ぐらいなので、僕たちも手探りな部分が多く、トライアンドエラーを繰り返しながら運営している状況。その中で「よかった」と思っていただける土台を作れていることにやりがいを感じています。

 

—— 会社の魅力はどんな点に感じていますか。

星さん:現場で出た意見をキチンと上に通してくれることですね。何かを新設してほしいときなど、意見を聞いてくれますし、考えを伝える機会もいただけます。現場の意見に耳を傾けてくれるのは、働くうえでとてもありがたいです。

尾形さん:失敗して怒られることもあるのですが、できるようになると認められて、ちゃんと評価していただけるのは、モチベーションに繋がります。重機の資格を取りたいと言うと、会社負担で講習が受けられるのもありがたいです。入社して3年ですが、すでにいくつか資格を取らせていただきました。

片野さん:今、僕を含めて3名で施設を運営しているのですが、全員宿泊業が初めてということもあって、社長がすごく気にかけてくださいます。「これどうだ」とか声をかけてくださいますし、話しやすい環境を作ってくださっているのもありがたいです。新規事業ということで基盤がないため、3名でいろんなサービスを考えながらやれているのは楽しいです。

 

—— 今後、チャレンジしたいことを教えてください。

星さん:働きやすい環境を作っていただいているので、しっかり会社に貢献していきたいです。その中で、地球環境への配慮やリサイクル率のアップなど向上心を持って続けていけたらいいですね。

尾形さん:重機オペレーターになるのが目標です。現状は職長の指示で動いているので、自分も現場が回せるようになれたらいいと思います。

片野さん:お客様を増やしたいというのが1番の目標です。もっと地元の人が気軽に来られる施設を目指したいとも思っています。どうしても冬の売上は落ちてしまうので、その時期に楽しんでもらえる企画も考えたいですね。

 

ただ壊すだけでなく、そこに利用価値を見出し、新しい命を生み出す。「再生」するリサイクル資材は、未来に繋がる仕事だと言えます。その一端を担えることに、やりがいを感じられるのではないでしょうか。

取材・文_中山夏美