WORK 置賜のしごと WORK 置賜のしごと

人とおくるまを結び、未来のワクワクを創造します

株式会社ヤリミズ自動車 / 福祉車両改造エンジニア

インタビュー記事

更新日 : 2024年03月05日

「働きたくなる企業」を目標に地域に根ざした活動を行なう

1人1台、車を持つことが当たり前の車社会では「良い車屋選び」は重要になります。今回、お話を伺うヤリミズ自動車は、創業50年以上の老舗自動車販売店。まだ米沢で中古車販売店がメジャーではなかった時代から地域の支えとなっています。専務取締役の鑓水伸一さん、社員の新野勝さん、片山一美さんにお話を伺いました。

株式会社ヤリミズ自動車 事業概要

創業は昭和42年。先代は元々、ホンダの二輪車販売員として働いており、その繋がりの中で自動車部品商を起こし、その後中古車販売店をスタートさせました。
新車中古車販売のほか、新車リース、車検、メンテナンス、保険の販売など、カーライフをトータルでサポート。車販後のアフターフォローには、とくに力を入れています。
2019年には山形県で初の福祉車両専門店「らぷれす」をオープン。障害者本人が運転できるように車を改造したり、後付け回転シートや手動運転装置、車椅子リフト、スロープ、補助ステップなど、障害者、高齢者のニーズに合わせた製品を扱っています。
レンタル、メンテナンス、リースといったサービスも提供し、他店にはない取り組みを始めたことは、大きなチャレンジです。

車に関する悩みはすべて解決できる店に

中古車販売店としてスタートしたヤリミズ自動車ですが、現在は新車販売もしています。2005年から展開し始め、その後業績がグッと伸びたと言います。

「その当時、中古車のタマ数が減っている状態が続いていました。バブル崩壊後、ずっと車の販売不振で中古車となる車が増えなかったんです。中古車が少なければ、取り合いになって値段も上がります。良い車を仕入れようと思うと、こちらの負担も大きい。そこで自社で新車を販売し、お客さまから下取りして入ってきた車を販売する方法に切り替えました。例えば、5年落ちの中古車を販売して、5年乗った後にお客さまから戻ってきたら、その車は10年落ちになりますが、新車であれば5年落ちになりますよね。10年落ちに比べたら、5年落ち程度の車のほうが売りやすくなります。そういうことも見込んで新車の販売を始めたんです」

専務取締役 鑓水伸一さん

新車取扱いは、会社として利益を上げるためではありますが、正規ディーラーではない店舗から車を購入するのは、利用者にとっても「多様な車と出会える」という大きなメリットがあります。

「トヨタ車に乗っているけれど、次は日産の車が欲しいとなったときに、トヨタの正規ディーラーでは扱っていないので、馴染みのない日産の正規ディーラーに行かないといけないですよね。弊社であれば、メーカー問わず扱っていますので、新しい店舗に行かなくてもご相談に乗ることができます。お客さまには最初にアンケートを書いていただいて、その後にお話を伺っていきます。車のことが詳しくないお客さまでも、色は絶対黒がいいとか、そういう希望はあると思うので、会話から聞き出して提案を。話を進めるうちに現在は販売のない車種で希望に沿うものがあるときには、中古車から探してくることもできます。新車、中古車、両方を扱う利点であり、弊社の強みです」

リピーターも多く、50年以上の実績があるので、三世代で通っているお客さんもいるほど。地元を支える役目を担っています。

「車検もメンテナンスもすべて弊社で請け負っているので、何か困りごとがあれば、駆けつけていただける場所であると思っています。最近はコンピューター制御の車が増えていて、センサーや電子部品となると、目視では不具合がわからないので、それを診断するための診断機も設置。アフターケアをしっかりと行なうことが、お客さまの信頼に繋がっていると思います」

 

福祉車両専門店にも力を入れていきたい

2019年から福祉車両専門店「らぷれす」をスタートさせました。専門店としてのオープンは、山形県では初の試み。また、車両の改造ができる技術者は日本でも30人ほどしかいないそうです。

「ご高齢になれば、足腰が不自由で普通の車には乗れなくなってしまったり、介護するほうも車に乗せるのに苦労することがあると思います。少子高齢化が進めば、そういう場面はもっと増えるかもしれない。でも、福祉車両は一般的な自動車整備店ではメンテナンスすることが難しいんですよ。だからこそ需要があると思いました。また、障害を持っている方が社会復帰するきっかけ作りができればと考えています」

障害者本人が運転できるようになるためのお手伝いをしたり、車椅子リフトを付けるなどの改造のほか、メンテナンス、リース、販売も行なっています。

「改造を担当しているスタッフは、入社後に研修などを受けてもらって知識を身に着けました。実際に仕事をしながら、新しい技術も学んでいます。普通の車の整備士とは違って、福祉車両独自の専門知識が必要となる部門ですが、会社でも講習会に参加してもらうなど、積極的にサポートしています。いずれは、村山や庄内地方にも店舗を増やし、県内全域をカバーできるような体制を作っていきたいです」

 

米沢で働きたいと思ってもらえる会社を目指す

鑓水さんは、福島の大学に進学し、県外で就職。その後、Uターンしてきました。自社の再生はもちろんですが、米沢を盛り上げたい気持ちから地域に根ざした活動も行なっています。

「働き口がないわけではないのですが、県外に就職する若者のほうが圧倒的に多い。それは、米沢の会社に魅力を感じていないのがひとつの要因だと思っています。また働いている親世代が『うちの会社はいいぞ』と言えないのも問題であるとも思っていて。『うちの会社はすごくいいから、就職したらいいよ』と勧められる会社が多ければ、地元に残る人も増える。県外に進学したとしても、就職しに戻ってくるとも思います。その受け皿となるためにも、自社の環境を良くしていきたいと考えています。そういう企業を増やす活動にも協力したいです」

「米沢で働きたい」。そう思ってもらえる会社にするため、鑓水さんは社内整備と事業拡大も進めていきたいと話します。その情熱がリピーターを呼び、地域に愛される店であり続ける理由ではないでしょうか。続いて、社員の2名にお話を伺います。

 

お客さまの不安を取り除き、感謝される仕事

—— 仕事の内容を教えてください。

新野勝さん:2016年入社の7年目です。福祉車両専門店「らぷれす」の店長をしています。専務の鑓水さんとは高校の同級生で、転職するタイミングでお声がけをいただき、入社しました。販売、修理、改造と、ほとんどの業務を担当しています。前職はまったく違う仕事をしていたので、車両の改造については入社後に研修を受けて学びました。障害を持っている方は、一般の方と比べて緊急の対応が難しくなります。僕たちの仕事は命と関わる作業なので「これでいいか」では、済まされません。100%完璧でないと許されない仕事だと思っています。

片山一美さん:2014年入社の9年目です。事務をしています。お客さまの接客から伝票整理、電話対応、自動車保険の業務も担当です。前職が生命保険の営業だったので、それを活かした職種ということで、入社いたしました。

—— 仕事のやりがいはなんですか?

新野さん:障害に合わせて改造の種類も多様にあり、取り付ける位置や角度も人によってさまざまです。実際に運転してもらって、うまくいかなければ手直ししというのが続いていくので、ひとつの案件にものすごく時間がかかります。だからこそ、完成したときに言っていただける「ありがとう」には特別感がありますね。中にはリハビリを繰り返して、やっと自分の車に乗れるようになった方もいらっしゃるので、喜んでいただけるのはうれしいです。僕たちが頑張ることで、障害者の方が社会復帰できるかもしれない。その手助けができることに、何よりもやりがいを感じています。

片山さん:整備でいらっしゃる方ですと、車の警告灯や異音がして不安になられている方もいらっしゃいます。弊社に来たことで原因がわかり、お客さまがホッとして帰られる姿を見ると、私も安心します。私自身、車の知識はそこまで豊富ではないのですが、整備士と協力しあってお客さまと向き合えていると思います。あとは、まだ子どもが小さいので、急にお休みしなくてはいけないときにも快く受け入れてくださる方が多く、働きやすい環境です。

—— 今後、挑戦していきたいことはありますか。

新野さん:福祉車両の改造ができる技術者は全国でも30人ほどしかいません。それには身に付けなければいけない知識が多く、恐ろしく難しいというのが理由としてあげられると思います。しかし、その中でも若手を育て、次に繋げていきたいです。

片山さん:お客さまが来店されたときに最初に接客するのが私なので、担当者が来るまでの間、整備や車のリース、販売の相談をいただきます。そのときに、お客さまに少しでもお伝えできるように自分なりに理解し、広範囲に活躍していきたいと思っています。

 

「お客さまの不安を取り除きたい」。「障害者の方が社会復帰できる手助けをしたい」。ヤリミズ自動車のみなさんは、常にお客さまの立場になって、どうすればサポートできるのかということを先回りして考えています。多様なニーズにも対応し、“地域に根付く”ための改革は怠りません。感謝をされる喜びを感じられる仕事であり、働きやすい環境を提供する会社だと思います。

取材・文_中山夏美