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積み重ねた土台の上に建てられる、人生に寄り添う住宅

株式会社本多建設 / 現場監督・設計・営業・不動産業務

インタビュー記事

更新日 : 2023年01月16日

家が集まり、集落ができ、集落が集まって街ができる。家づくりと地域づくりは今でこそ乖離したイメージがありますが、昔はより密接に関わっていたのでしょう。そして今もその使命に熱く燃える会社がありました。一見幅広く事業展開をしているように見えますが、その理由は一貫して「住宅を通して地域を豊かにすること」につながっています。社長の本多作之助さんと、社員の色摩崇さん、青木美佳さん、田中俊之さんにお話を聞きました。

株式会社本多建設 事業概要

創業50年を迎える株式会社本多建設。半世紀に渡って、住宅を専門に置賜地域の風景と暮らしを紡いできました。そして「住宅」にまつわる「リフォーム」「不動産」へと事業範囲を拡大し、さまざまな顧客のニーズに寄り添いながら業態を進化させています。掲げている目標は「住宅を通して地域を豊かにすること」。創業からこれまでの新築棟数は1,000棟以上にものぼります。その圧倒的な経験と、知識が積み重なり、地域から信頼される建設会社というイメージが定着しています。

最近では、古民家の保全にも意欲的に関わり、土地の文化が詰まった建物を未来に受け継ぐため、2014年、山形に古民家再生協会を立ち上げました。そして、その取り組みは技術が失われ始めている大工の育成にも活かされています。古民家への移住者が、地域を元気にするという循環も起き始め、様々な角度から地域を豊かにする企業として注目されています。

地域密着型住宅をつくる、という使命

—— 本多建設の考える家づくりや、理念をお聞かせください。

「家づくりって一生に一度の大事業でありながら、実際には考えることや、検討することがたくさんあります。住宅ローンの使い方から、家族それぞれの生活の仕方、これから先どのような生活をしていくのか…。大きな希望や不安も含めてお客様に寄り添いながら家づくりをしています。置賜地方は雪が多いということもあり、メンテナンスが必要な時も多々あります。また、長年住み続ければ家族構成や住まい方が変わっていくこともあります。「家守りとしてお客様と一生涯のお付き合いをしていくこと」に向き合うことは地域密着型の工務店としての使命だと思っています。」

—— その使命が生まれたきっかけがありましたら教えてください。

「創業した祖父の代から、住宅会社が自分勝手な家を作っていくというよりも、お客様に満足していただけるものを作ろうという目線がありました。祖父が創業する前に勤めていた会社で欠陥住宅の多さを目の当たりにしたそうです。その時の気持ちが原点にあるので、いい家を作ること、お客様に対して一生涯サポートし、メンテナンスをしていくという覚悟が根底に流れています」

 

家を建てた者の責任として始めたリフォームと不動産事業

—— リフォーム事業も一生涯サポートするという覚悟から生まれたのですね。

「何かターニングポイントがあったというよりは、祖父の代、父の代と連綿と積み重ねてきたものの上に今があります。当初リフォームにはメンテナンスのイメージしかなかったのですが、長持ちさせるために必要なリニューアルだけでなく、新しく命を吹き込む作業も、家を建てた者の責任として、きちんと事業としてやっていく必要があると考えました」

—— リフォームの概算を早く出すことができるというのも、お客さまにとっては安心できるサービスだと思います。

「新築だと家の大きさ×坪単価で、すぐに概算の見積もりが出せるのですが、リフォームは金額のつかみが難しい。そこで私達が積み重ねた経験やバックデータ、様々なシステムを使うことによって、早めに概算を出すことができます。そうすることで、お客様も雲をつかむような話ではなく、地に足をつけた打ち合わせができるようになる。リフォームの悲劇は、金額が見えないまま打ち合わせを何回も重ねて、いざ見積もりを出したら全然合わなくて諦めてしまうこと。もちろん進めていくうちに予想外の出来事も起きますので、必要な修繕であれば、誤魔化さずにお客様に正直に伝えていくことを大切にしています」

—— 不動産事業は社長の代から始めたとのことですが、こちらはどのような経緯があったのですか?

「元々も不動産は行っていましたが、お客様から自分の家を誰かに譲りたいもしくは自分の土地を誰かに活用してもらいたい、という話が増えてきたので、事業部として6年前から始めました。建築を知っているからこそ、アドバイスできることがたくさんあります。ただ単に中古住宅を仲介するのではなく、より良い環境にするためのリフォームの提案もしており、実際そういう相談たくさん受けるようになってきました。また、『住まいの終活』ニーズですね。今の住まいの今後についての相談が増えてきたこともあり、きちんとした形で住み繋いでいただくために、住まいのプロとしてアドバイスできるようになりたかったからです。」

 

ニーズに寄り添った事業の多様化、そして古民家再生協会の立ち上げ

—— 様々なお客さまのニーズに応えていく中で本多建設の事業が多様化してきたということですが、異色の事業として山形で古民家再生協会を立ち上げた理由をお聞かせください。

「地元でリフォームの仕事をしているので、以前から古民家に対するリフォームの相談はありました。ただ、建築基準法が昭和25年にできたものなので、それ以前の建物を法的に見れば、不適格になります。果たして今の建築基準法を基にしていいのか、という疑問から、古民家鑑定士という資格を取得しました。その頃、全国で古民家再生協会が立ち上がっていたのですが、山形にはなかったため、私が立ち上げることにしました。」

—— 古民家を遺していく意義はどんなところにありますか。

「古民家はその土地の気候風土、文化が詰まった建物ですが、維持も大変なので壊してしまうのが今の流れ。それではあまりにももったいない。ただ、直すにも知識や経験が必要です。貴重な建物をきちんと残し、未来の子どもたちに伝えていきたかった。また、今の建築は、プラモデルとまではいかないけども、カンナを使ったりとか、ノミで加工したりしなくてもいいようにできている。古民家を通じて大工が喜ぶような仕事を作っていくことが、技術の継承にも繋がっていくだろうと考えました。始めてみて分かったことは、古民家は色んな人を惹きつけるということ。魅力的な方が移住してくることが分かったし、移住者によっては地域の情報発信源にもなる。また、空き家の課題解決になるなど、枝葉が増えてきました」

 

実力派のピアニストが入居したことで起きた地域の変化

—— 実際に関わった古民家のエピソードを教えてください。

「米沢市の南原という地区にある古民家は、上杉鷹山公に仕えた吉田綱富氏が1803年に創建した家で、その子孫の方から誰かに引き継げないかという相談がありました。まずは古民家鑑定をして、情報を全国に発信したら、たくさんの方から問い合わせがあり、最終的には東京生まれ東京育ちの福田直樹さんというピアニストの方が入居されました。2月の下旬、真冬の雪深い時期に引っ越して来られたのですが、福田さんは春の雪解けから田舎を味わいたかったそうです。「何かあったらSOSしてくださいね」と言ったのですが、電気が止まって水道が凍結した時も、キャンプ道具を使って雪を溶かして水飲んでいました。「そんな生活ができるなんて最高じゃないですか!」って(笑)。その地域にお住まいの方たちからは福田さんが来る前には「東京生まれ東京育ちの人がここに来たらすぐ帰ってくよ」とか言われました。でも1年経った段階で「本当にありがとう」と。地域行事や朝のドブさらいも一生懸命やってくださっているそうです。古民家に地域の方を招いてコンサートを開催することも頻繁にあって、ものすごく喜ばれています。」

 

ずっと愛される家をつくり、守っていく

—— 古民家事業も含めて、地域の未来を見ていらっしゃるのですね。

「家を建てるだけだったら誰でもできる時代。でも、地域や家族構成に合わせた住宅をしっかりと提案することは、人と人の関わりの中からしか生まれません。そしてずっと愛され続ける家を建て、守っていくことが、家を建てる者の責任でもあります。その裏付けとして大工の技術が必要不可欠ですし、お客さまの話を聞いて形にする設計士や営業のコミュニケーション能力が大切になってきます。そう言った意味で、一生涯ずっとお客様と付き合っていく覚悟を持った人たちがこの会社にいます」

—— 現在はどのような人材を求めていますか?

「より良い住宅を提案できるような考えを持っている方ですね。自分が生活するためだとか、テクニックをちょっと磨いて家を売ればいいという人は残念ながら長続きしない。例えば「自然災害が起きて困った」と突然の電話が来て、すぐに駆けつけられなければ、この仕事はできません。でもその大変さを上回る感動が必ずあります。住宅は困りごとの解決や、「こんな生活がしたい」というお客様の夢を具現化できる仕事。そういった意味では、人と接する機会はどんな業種より多いですね。だからこそ直接の「ありがとう」をたくさんいただける。「住宅を通して人を幸せにしていく」という気持ちが根底にあれば、一生成長し続けられる仕事だと思います」

 

アットホームな社風の中で働く社員の皆さんの想い

—— この仕事に就いた理由や、本多建設に入社した経緯を教えてください。

色摩崇さん:住宅に特化している会社というのが一番惹かれたところです。幼い頃から家を建てることが夢だったので。親の転勤で東京に住んでいた時期が長かったのですが、選択肢としてマンションになってしまう。山形に戻ってきた時も、貸家で。特にマンションだったりすると、足音とか声が近所迷惑になるので、家では全然遊べない。それで友達の一戸建ての家に遊びに行くと、自由に遊べて羨ましくて。その頃から「家」に憧れを持っていました。

青木美佳さん:私はもともと本多建設のお客でした。中古で買った家の修繕が必要になった時、私自身も主人も結構ズボラなので、こまめにメンテナンスをするようなタイプじゃなかったので業者さんを探していました。ズボラなくせに、知らない方には頼みたくなかったので、知り合いも多かった本多建設にお願いしました。感謝祭などのイベントもあって、社長や社員の皆さんの人柄も知っていましたし、会社の雰囲気もアットホームな感じだったので。そこからのご縁で、たまたま社員募集があった時に声をかけていただきました。

田中俊之さん:東京で2年間現場監督の仕事をした後に米沢に戻り、6年間は設計事務所で仕事をしていました。転職を考えていた時に、父が本多建設で大工仕事をしていたつながりで声をかけていただきました。自分が設計した家を父に建ててもらうという夢もあり、リフォームという形で実現することができました。

 

—— 色摩さんと田中さんは設計と営業という二足の草鞋を履いていますが、大変ではないですか。

色摩さん:リフォームの設計はもともとお客さまからいろいろ話を聞きながら、図面に落とし込んでいく仕事。例えば別の営業が話を聞いてきて形にするとニュアンスなどの違いが生じることもありますが、直接話を聞いて形にしていくので、その辺はやりやすいですね。営業を兼ねることで、よりお客様の思いを反映することができます。

—— 先ほどの社長インタビューで「家族の暮らし方から考える」「地域密着」というワードとしても出てきましたが、営業と設計が結びついていることで実現できるのですね。

田中さん:当然家族によって暮らし方も違うし、家族構成も全然違ってくるので、その家族の希望をできるだけ聞く必要があります。聞くのって結構大変で、本音をどれくらい聞き出せるかにかかってきます。夫婦であれば、ご主人の前では奥様がちょっと上手く喋れなかったりしますよね。そんな時には、奥さんには個別で、旦那さんがトイレに行っている間に、これで大丈夫ですかと確認したりします(笑)。ただ、今は結構奥さん主導の形が増えていますが(笑)。

—— 本多建設には子育てママを応援するママエールというサービスがありますが、どのような事業なのでしょうか?女性の立場として青木さんが関わることはありますか?

青木さん:ママエールは家の中に一番長く居て、家事や子育てで一番家を活用しているママを応援するためのコンセプトハウスです。私が直接的に関わることは少ないのですが、完成した家を毎回みんなでチェックする際に、疑問に思ったところとか、言いたいこと伝えることはありますね。立ち会いの時などに、お客様と世間話をすることもあり、不安に思ってることや、気になることを言われた際には必ず設計士や監督に伝えるようにしています。

 

人との関わりが深いからこそ味わえる達成感

—— 皆さん業務を超えて自然と連携しているところに信頼関係を感じます。このお仕事のやりがいはどんなところにありますか?

色摩さん:お客様と関わる時間が長いので、偶然再会しても、声を掛けてくれる方がたくさんいます。「うちの子もこんなに大きくなったよ」とか。やっぱり建築的な達成感ももちろんありますが、人と人の温かさを感じる仕事ですね。仕事柄、家族以外は誰も入らないところに入ることがあります。その時に、ちょっと立ち入ったお話を聞くこともたまにあって、これは家の話じゃなくて人生相談なんじゃないかという時も(笑)。

青木さん:地元密着でやっているので、突然飛び込みでいらっしゃる方もたくさんいます。それだけ困っているということでしょうけれど、頼りやすい会社だと思ってもらえているのだと感じます。

田中さん:私は本当にゼロから作れるというところですね。話を聞いて、設計し、建てて、お引き渡しをする。これほどの達成感がある仕事は、多分建築ぐらいなんじゃないかと思います。家を建て終わってからもずっと付き合いが続いていくのは、住宅ならでは。創業からこれまで積み重ねて来た信頼があるので、社員として大切に受け継いでいきたいと思っています。

 

社長と社員さんのやり取りからも、アットホームで信頼関係がしっかりと築かれている会社なのだと感じました。それもまた、地域密着型住宅を建てる際の大きな土台になっています。一生に一度の家を建てる。そしてそれを受け継ぎ、人生に寄り添う仕事。そして、暮らしに関わる仕事だからこそ、地域をより深く知ることもできます。地域に溶け込みながら、本多建設で大きな達成感を味わってみませんか。

取材・文_山﨑香菜子