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化学分析の本質は、人間の想像力にある

ネクスト環境コンサルタント株式会社 / 分析員

インタビュー記事

更新日 : 2022年10月06日

化学分析の本質は、人間の想像力にある

水質、大気、土壌などの分析検査を行っているネクスト環境コンサルタント株式会社。私たちの生活に直接関係するだけでなく、工場の安全な操業などには欠かせない仕事です。置賜エリアで唯一の本格的分析センターを有し、地域の安全を提供している会社で働くお二人に仕事のやりがいなどを聞きました。

ネクスト環境コンサルタント株式会社 事業概要

2005年に山形県置賜エリア初の本格的分析センターとしてオープン。ほとんどの工場の操業には、排水などによる汚染がないように、定期的に環境分析をして安全であるという証明を提出する必要がある。その分析を行っているのがネクスト環境コンサルタント株式会社。排水から廃棄物、土壌・大気の分析および作業環境測定を行っている。工場の計量証明事業がメインとなるが、そのほかに一般家庭の水質検査や、農業、酪農業など一次産業の土壌・水質検査も行っている。

ただし、分析だけでは終わらないのが特徴。社名に「コンサルタント」とあるように、法定分析・検査だけでなく、その先のコンサルティングまで請け負う。企業と労働監督署との間で折衝を行い、何をどこまで調べるのかを調整したり、分析により望んだ結果が出なかったときに解決策を提示して、設備導入、施工を行うこともある。専門的な分析とともに、クライアントに寄り添った親身なコンサルティングが好評を得ている。

分析からコンサルティングまで

ネクスト環境コンサルタント株式会社は、その名の通り環境に関する分析、検査、調査を行う会社です。水質・大気・土壌の環境基本法に規定する環境基準に関する分析や、水質汚濁防止法・大気汚染防止法に規定する排水基準に関する分析などを行っています。また、公共水域の水質汚濁・大気汚染・土壌汚染(健康項目・生活環境項目)を防止するために必要な分析も行っています。また、それとともに、さまざまな作業を行う職場において、粉塵・石綿・有機溶剤・特定化学物質・金属等の有害物質がないかの測定も行っています。簡単に言ってしまえば、私たちが安全のもとに生活できる環境かどうかを分析するとともに、工場などが安全のもとに動いているかどうかを調べる仕事です。

法律上、工場の操業などの仕事に必要な検査も多いので、各地に分析センターがありますが、置賜地方には事業所がありませんでした。だから検査が必要な場合は、遠方の分析センターに依頼を出していたという状況でした。そのなかで2007年に置賜地方初の分析センターを設置。
そのため依頼が多数……という話になるかと思いきや、それよりも「話を聞くことが重要」と代表取締役の武田誠一郎さんは話します。

「実は、クライアントの方のなかには『何を、どう検査すればいいかわからない』という方もいらっしゃるんです。専門的な分野なのでそれも仕方ないかもしれません。でも、大きな分析センターでは、そのすべてには対応できないのが現状なのです」

どういうことかというと、つまり、ネクスト環境コンサルタントが、クライアント企業と労働監督署との間に入り交渉をして、何の検査をするのか、どの程度の数値を目指すのか、といった詳細を決めていく作業もするということです。それとともに、分析の結果、想定していなかった数値がでたときにクライアントは「どうすればいい?」と聞くことあります。分析センターの多くは「わかりません」ということがほとんど。しかし、ネクスト環境コンサルタントは、解決策とそれに伴う設備を提案、施工までを行います。だから「コンサルタント」という言葉が社名についているのです。

「実際のところ、分析を主業務にしていると、『そこまで手が回らない』ということもあるのだと思います。しかし、私たちが大事にしているのは、人が助かることが自分たちのやりがいとなる、という仕事をしようということです。だからクライアントに寄り添って『その先』までやってみる。それが仕事の面白さ、やりがいにつながると思っています」
そう武田さんは話します。分析というと、数字と向き合う仕事のようにも聞こえますが、最終的には人と向き合う仕事。そして実はその内容も人の想像力が必要な仕事なのです。その意味を、環境事業部で働く小西秀明さん、保原楓さんのお二人にお伺いしました。

 

現場の声が反映される職場

—— 現在のお仕事の内容をお教えいただけますでしょうか?

小西秀明さん:環境事業部で調査・分析の全般を担当しています。それとともに管理職という立場にもおり、事業部のマネジメントも手掛けています。いま事業部の方向性としては、自動化を進めている最中です。分析業務そのものを自動化していくとともに、報告書などの部分でも進めています。大きなベクトルは社長以下経営陣が決めていきますが、最終的には現場で必要なことなど、現場で感じた部分を柔軟に取り入れていろいろと自分たちで決められます。規模の大きな会社ではないので、上司、経営陣との距離が近いのがよさです。こちらの提案もすぐに届く。だから改善や新規のアイデアなども発言しやすいし、すぐに着手もできるので、現場を尊重してくれるその体制はすごくやりやすさを感じています。

保原楓さん:私は環境事業部で分析作業をしています。達成感を得られるのは、自分が立てた道筋が、想定通りにいったときです。分析作業というと、これとこれをこうして検査をする、というふうにも思えるかもしれませんが、実は、最初に何も情報がないところから出発することも多々あります。そういったとき、そもそも何を調べるべきか、そのためにはどういう検査をすればいいか、といってみれば設計図を作るところから始まります。それが想定通りにいったときにはすごく大きな達成感があるんです。ただ、それには知識とともに経験が重要。先輩、上司に相談しつつ仕事を進め、これからその経験をどんどん積み重ねていきたいと思います。

 

自分を成長させる環境がある

—— 環境分析というお仕事にどうして就こうと考えたのでしょうか?

保原さん:もともと環境科学という分野に興味があったということもあります。それで高校時代は化学コースで学んでいました。そのとき先生が「身の回りのものはすべて化学式で表せる」と言ったんです。それがすごく面白いなと思ったんです。私たちが何気なく見ているもの、触っているもの、感じていること、すべては化学で成立しているのかもしれない。それを目で見える形にしていく方法のひとつが分析というものなのかもしれないですね。そういう実践の場がすごく楽しいんです。それで化学に関する仕事に就ければと思って、ここに入社しました。

しかし、さっきもいったように、化学というのは単純ではなく、知識と経験を組み合わせて、設計図を描く「想像」も必要になるんですね。それは仕事をしていくうえで、強く感じています。いま入社4年目ですが、仕事をきちんと覚えていけばさらに自分のできることが広がっていくと思うので、頑張りたいと思います。

小西さん:私は入社5年目です。それまでは12年ほど関東におり、仕事は同じく環境に関する分析の仕事をしていました。妻が米沢の出身で、子育てを考えると妻の実家が近くにあったほうがいいなと話し合いをして、子どもが2歳のときに移住しました。Iターンで関東を出るときは、新しい気持ちで心機一転という感じだったので、不安はあまりありませんでした。ただ、やはり前職の経験を活かしたいとは思っていました。しかし、特殊な分野でもあるので、なかなか募集がありませんでした。実はネクスト環境コンサルタントも当時募集はしていなかったのですが、連絡を取って面接をしてもらいました。置賜地方初の分析センターということを知り、自分の経験をさらに活かせるのではないかと思いました。面白いのが化学畑をずっと歩いてきた人ばかりがいる会社ではないということ。ある種、特殊な分野でもあるので、学生時代からそのなかにどっぷりというと、考えが偏ることもあるかもしれません。でもここはいろいろな考え、発想があり、ハッとさせられることもたくさんありました。結果的に自分の成長につながる環境だったのだと思います。

保原さん:会社としても研修、講習などへの参加をバックアップしてくれます。コロナ以前は同業他社と合同での現場研修もたくさんありました。現在は、ウェビナーも含めた講習会に積極的に参加しています。

小西さん:専門技術ということもありますが、法律も日々変わっていくので、やはり知識の吸収は必須です。それに加えて、私はいま組織マネジメントの勉強もしています。自主性を重んじてくれる会社なので、個々人が必要だと持ったことには時間的、資金的な応援をしてくれます。自分の成長を後押ししてくれるのはすごくうれしいですね。

環境分析という、一般の人の目には見えないところから安全を守ってくれる会社。化学分析というといかにも理系という言葉で、数字と向き合うだけの仕事のようにも聞こえるかもしれません。しかしその本質は「人と向き合う」こと。想像力が安全を生み出し、安心して仕事をし、生活をする環境を生み出しているのです。

取材・文_海老沼邦明