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地域シェアNo.1企業から、置賜の葬儀業界を盛り上げる

株式会社ナウエル / 葬祭ディレクター

インタビュー記事

更新日 : 2024年05月03日

人としてお客様と向き合い、業界リーダーとして地域と向き合う

山形県の南に位置する置賜地区で、「葬儀」といえば、多くの人が「ナウエル」と答えます。株式会社ナウエルで約42年前に設立した「フューネラル(葬儀)事業部」は、置賜地区の3市5町で葬儀を執り行い、地域シェアはNo1。企業全体収益における割合が約85%を占める主力事業です。事業部長・竹田博明さんと(右2)3名の社員鈴木雄大さん(右1)、尾形彬さん(左2)、小山奈津子さん(左1)にお話を伺いました。

株式会社ナウエル 事業概要

会社の起こりは1946年(昭和21年)、現代表取締役の酒井 登氏の祖父、酒井 巌氏が設立した酒井生活化学研究所(後の北陽食品工業、現HKY)に遡ります。「戦後の物資が少ない食卓を豊かにしたい」という思いで手がけた最初の事業は醤油の化学製造。その後、時代のニーズの移り変わりにあわせて柔軟に事業を転換・拡大し、缶詰などの食品販売、置賜地方初のヤクルト販売、お弁当や仕出しサービス、さらには仕出しから派生した式場の貸出などを行いながら、地域に深く浸透していきました。

ナウエルとして冠婚葬祭互助会事業を開始したのは1980年(昭和55年)のこと。会員から会費を集めて冠婚葬祭の式場や衣装等を提供する事業は、いまでこそ全国に普及しているものの、1980年当時は需要拡大中のサービスでした。創始創業当時と同様、「地域の人々の暮らしに豊かさを届ける」という思いから始まった同事業は広く受け入れられ、置賜地域のセレモニーの運営を一手に手掛ける企業へと成長します。2022年8月時点で会員は6万人以上、置賜地域内に冠婚葬祭施設とホテル計18施設を展開。置賜地域の人口は約20万人であり、単純計算すると人口の約3分の1の世帯がナウエルの会員ということになります。

近年では冠婚葬祭にとどまらず、2020年には訪問介護サービス、2021年には遺品整理や遺産相続などの葬儀後のお困りごとサポート事業を開始しました。また2022年からは、移住者促進のために地元の暮らしと仕事の魅力を見える化する転職求人紹介サイト「オキタマズカン」の立ち上げや、地域でeスポーツ人口を増やす仕掛けづくりなど、豊かなまちづくりに貢献する事業を幅広く手掛けています。

ナウエル株式会社のフューネラル事業部は、平成5年にエリアを拡大し、現在置賜地区内に所有する11のホールで、年間約1600件の葬儀を執り行っています。インタビューの前半では、平成12年に入社し現在フューネラル事業部長を務める 竹田博明さんに、事業のターニングポイントや大切している価値について伺いました。

3.11を機に生まれた社会的使命感

「フューネラル事業部のひとつ目の大きな変化は、平成16年。コンサルタントを導入し、今ではあたりまえになっている故人様らしいオリジナルの葬儀を行うというコンセプトが新たにできたときです。それまでは、100歳のおじいさんも若い女性も、同じ内容で葬儀を行わなければいけないという暗黙のルールがありました。私はそれに違和感があって、故人様に合わせて少しアレンジして叱られたことも。上司からの評価は低い反面お客様からの反応は上場で、営業成績は上位でした。オリジナリティが求められていたんでしょうね。企業として『みんな同じ』から『その人らしい』へと大きく舵を切ると、そこからお客様との関係性が格段に深まっていきました。」

フューネラル事業部長 竹田博明さん

「ふたつ目の変化は、平成23年の東日本大震災です。宮城県で被災して亡くなられた方を現地の遺体安置所から置賜の火葬場にお連れし、火葬をするということを100件以上行う中で、お客様から多くの感謝の声をいただきました。この経験から『普通に葬儀ができるありがたみ』を改めて感じるとともに、売上や評価だけではない、事業としての社会的役割・使命感について考えるきっかけになりました。」

フューネラル事業部メンバーの根本には「3つのこころ」があります。

  1. 故人様を敬うこころ
  2. ご遺族様を労うこころ
  3. 会葬者様をもてなすこころ

葬儀は結婚式と違い、当事者が亡くなっているため不在です。亡くなった方を中心にして弔い、同時に残された人の心のケアを行い、ご遺族の気持ちをいたわることをなによりも大切にしています。

 

対人、対地域。やりがいはとても大きい。

「事業の強みとしては、都心に比べると競合が少ない分、トライできることが多い点です。対お客様であれば、オリジナルの生花祭壇など、自分がお客様のためになると思った商品を自分自身でお客様にお届けすることができたり。もちろんお客様とのやりとりの中にも大きなやりがいがあります。気持ち・体力的にキツいときに、一番近くでその方を支えることができる、そんな中で得るやりがいは大きく、最後にお客様が『よかった』と感激していただけたときは、疲れが一気に吹き飛びます。」

「葬儀業界・市場という視点からは、我々は置賜エリアで地元の葬儀社と連携しており、市場でリーダーシップを取れるという点があります。置賜エリアの葬儀業界全体を盛り上げていけるという使命感の中で得られるやりがいは非常に大きいと思います。」

そしてもうひとつの大きなやりがいがあるそう。それは、全国でもいち早く人口減少に入りつつある置賜エリアで、これまでとは違った新たなビジネスモデルを創出するという取り組みに関われること。時代に即した未来を描き、この土地でこれからどんなビジネスを展開していくか、考えるととてもワクワクすると力強く話す竹田さん。未来を見据えるその瞳は、キラキラと輝いていました。

人の役に立つことを喜びへ感じられるか

「『人の役に立ちたい』という気持ちがある方に、ぜひ来ていただきたいですね。大それたものではなく、何かをして人の役立つことを喜びと感じられるかどうかの人間性を重視します。あとは、健康に気を使えるかどうかも大きなポイントです。」

現在、葬儀ディレクターの平均担当本数は月7〜10件ほど。お申し込みを受けた後の対応から、葬儀全体の取り仕切り、終了後のフォローなど、葬儀の一連を担当します。未経験者の場合、実際にしっかりと仕事を覚えるまでの目安はおおよそ3〜4年。その頃には葬儀ディレクターという仕事の醍醐味ややりがいに触れられるはずです。

もうひとつ注目したいのが、労働環境です。地域の業界リーダーであるナウエルでは、葬儀業界の労働環境改善にも積極的に取り組んでいます。

「葬儀業界は実際のところハードです。ホスピタリティは高いけれど、労働条件が整っていない職場が多いという現状に我々は向き合い、当社では夜間スタッフ体制を導入して夜間勤務をなくすなど、長時間勤務などの業界全体の改題改善にも取り組んでいます。また、先日2年越しで制作を進めていた教育マニュアルが遂に完成しました。葬儀するにあたっての心構えや知っておかなければならないこと、作業手順などをまとめたもので、今後の新人教育に活用していく予定です。このマニュアルの狙いは、スタッフが作業をスムーズに覚えることはもちろんありますが、それ以上に、働く仲間同士が同じ価値基準を持ち、お互いを思いやることにあります。共通のテキストを持つことで、コミュニケーションがより円滑になり、協働することのハードルを下げていきたいと考えています。」

ゆったりとしたホールのロビーでは、お客様との打ち合わせが行われることも。葬儀ディレクターは、大切な人の死に向き合い憔悴した家族をフォローする大切な存在です。

 

ホスピタリティを上げ、スタッフを守る「グリーフサポート」

「当社では『グリーフサポート』の研修制度があります。グリーフサポートとは、大切な人との死別によって生まれるさまざまな感情や感覚(=悲嘆:グリーフ)を自分の中に押し込めず、外に出せるよう周囲が寄り添いサポートすること。自分が受けたショックを開放できない「グリーフ状態」にあるお客様に対し、聞き方・対応の仕方を学びます。5年ほど前に導入し、今ではお客様への高いホスピタリティの一環となっているこの制度ですが、そもそもは「社員のメンタルを守る」ために始めたことでした。悲しみの底にあるお客様は、思いがけない対応や状態になることがあります。そこを客観視し動けるというのは、スタッフにとっても大きなメリットになります。ナウエルでは、山形県内で一人目の『グリーフサポートバディ』として自社スタッフが資格を取得しました。」

葬儀ディレクターのスキル基準として、社内認定試験のほかに、全国で通用する「厚生労働省認定葬儀ディレクター技能試験」取得も積極的に行っています。

葬儀だけにとどまらず、地域に寄り添い、業界リーダーとして地域の課題解決を担う役割。とくにマネジメントをやりたい人、リーダーシップを発揮したい人には、大きなやりがいを感じられるはずです。インタビュー後半では、3名の社員にお話を伺いました。

 

フューネラル事業部を支えるスタッフたち

——「葬儀」という業界に携わったきっかけを教えてください

鈴木雄大さん:山形県長井市出身です。大学で東京へ行き、Uターンで当社に新卒で入社しました。13年目になります。この仕事を知ったのは映画『おくりびと』でした。人のためになる仕事をしたいと考えたときに、人を送る、人生の大変なときをサポートできるというこの職業に魅力を感じて。家族や友人にも起こりうる人生の大きな節目、そんなときに大切な人たちをサポートできたらいいなと、地元山形でこの仕事に就くことに決めました。

尾形彬さん:私は、山形県の上山市出身で、東北福祉大で保育士・先生を目指していたこともありましたが、いろいろな職業を見ていくなかで、両親が体調を崩したこともあり、地元の山形での就職を決めました。大学生の就活のときに、ある就職セミナーに当社の副社長(現・社長)がいらしていて、こんな場に副社長が来てくれるということはきっと新卒や新入社員を真剣に見てくれる会社だろうと思いました。葬祭部門は、人の節目に携わって誰かを助けられる仕事っていいなと思ったんです。新卒で入社し、今年で4年目になります。

小山奈津子さん:私は山形県の米沢市生まれ米沢育ちで、大学は山形市でしたが、仕事もずっと米沢です。大学卒業後に食品卸売業に携わっていましたが、ある程度年齢を重ねたときに、自分が本当に好きなことを仕事にしたいと思い、思い切って転職することを決めました。もともと宗教や葬儀文化に興味あったので、葬儀業界へ、3年前に中途で入社し現在3年目です。祖母がナウエルで葬儀を挙げてもらったことがあり、それ以来、葬儀業界に転職するならまずナウエルを受けたいと思っていたんです。そのときに担当してくださったのが、鈴木さんでした。よい思い出を作っていただき感謝しています。

 

さまざまな人との出会いの中で成長できる職場

—— この業界の魅力を教えてください

鈴木さん:さまざまな人と出会えることでしょうか。どんな立場のひとでも、さまざまな障害を持っている方などさまざまな方に出会える点に魅力を感じます。また、友人のご家族の葬儀などをサポートできる存在になれたときにはよかったなと思います。

尾形さん:この業界に入ってから、それまでなかった年配の方とふれ合いが増えたんですが、その結果、日常の中で気遣いができるようになりました。身だしなみ、立ちふるまいも意識できるようになり、日常のスキルとして身についていると感じます。また、グリーフサポート研修では、座る位置などから話しやすさや聞きやすさの違いを学び、実務で役立っています。

小山さん:多くの人と出会う中で、その方の人生の大きなイベント(葬儀)に携われること。そして、最後に感謝の言葉をいただけることに充実感を感じます。喜んでもらえたときはより一層の嬉しさを感じることができますね。

—— 普段はどんな業務を担当されているのでしょうか?

鈴木さん:尾形さんと小山さんは、葬祭ディレクターとして、ご依頼があったらお迎えに行き、打ち合わせ、葬儀当日の司会等の儀式、葬儀後はおうちに送迎するなど、葬儀の一連の流れを担当しています。私は葬祭ディレクターのとりまとめを行っています。主に段取りの調整、数字管理等のマネジメントなどを担当しています。

 

常に学べる環境の中で、仲間を思いやりながら

—— 人生で大切にしている価値観や、この仕事で心がけていることを教えてください。

尾形さん:こころがけているのは、いつも誰に対しても感謝の気持ちを忘れないこと。同僚・上司・お客様など、歳・役職など関係なく、多くを学びを与えてくれる方々に「いつもありがとう」と感謝の気持ちを伝えるようにしています。自分にないものに気づかせてくれるのは、いつも自分以外の人。仕事でもプライベートでも大切にしています。

小山さん:葬儀といっても、地域によって習慣や風習が全く異なります。当社は米沢全域とエリアが広いので、各市町村のさまざまな風習を知ることができます。大変なこともありますが、何事も経験として自分の糧としたいと思っています。

鈴木さん:一緒に働いている仲間へ感謝することを心がけています。限られたメンバーで、お客様に対応し、マイナスの話しを受け止めていくのはメンタル的にも大変です。その中でメンバーの中に感謝や学ぶという姿勢が見えることを嬉しく感じます。これからも自分を追い詰めることがないように話しを聞いてあげたいと思います。

—— これからチャレンジしたいことは何ですか?

鈴木さん:今は家族葬がメインですが、「グリーフ=吐き出すための葬儀」の大切さまでが薄れていかないよう伝えていきたいと思っています。また、この地域ならではの風習や地域の特色も守っていきたいですね。

尾形さん:9月の葬祭ディレクター試験に向け勉強中です。試験勉強をしていく中で、ひとことで葬儀といっても全国には幅広い知識があることを知りました。これを機に幅広い知識を蓄えたいと思っています。

小山さん:私も尾形さんと同じく9月の試験に挑戦します。厚生労働省認定の資格なので、お客様からの信頼感が高まることを期待し、勉強に励みます。

株式会社ナウエルのミッションは「らしさを見つめ、人とつながり、人をつなげる。」こと。大切な人を亡くし数日のうちに執り行われる葬儀を、家族の近くで心を込めてお手伝いする葬儀ディレクター。ナウエルでは、さらにそこから先の、地域に根ざした業界リーダーという大きな役割にも挑戦することができます。人と向き合い、地域に向き合い力を発揮したい、役に立ちたいという方はぜひチェックを。

取材・文_高村ようこ