小国の盛り上げに今日も全力!現場を走り回るディレクター

ヨカモス 村上友梨さん

村上友梨さん
福岡県出身/小国町在住/Iターン

今の願いは...自分があともう2人欲しいです(笑)」と答えるのは、1年半前に福岡から山形県小国町に移住した村上友梨さん。小国町のコワーキングスペースや日本酒の酒蔵で、経理・事務全般・接客・販売促進・ゲストハウスの管理など、多岐にわたる業務を行う。山形と新潟の県境にある雪深い飯豊山麓の町で、”地方暮らし=スローライフ”というイメージに当てはまらないパワフルな暮らしをしている友梨さんに、移住するまでの経緯や小国暮らしのリアルを伺いました。

—— 友梨さんのまわりは、1.5倍速で時間が流れているんじゃないか...(笑)と思うくらい、タイトな毎日を送っている印象があります。今はどんな仕事をしているのでしょうか?

今年から3つの企業で働いており、さまざまな業務に携わっています。1つ目は“発酵のチカラで、世を醸す”をコンセプトにした「一般社団法人YOKAMOS(ヨカモス)」。小国町にあるコワーキングスペース&酒蔵カフェ「カモスク」と滞在施設「ヨイドコ」の運営、経理、事務、接客などの業務を担当しています。2つ目は小国町で日本酒を造る「桜川酒造株式会社」で、経理、事務、販売促進などに関わっています。また、リモートワークで、“明日の「おいしい」を共に”をコンセプトに北海道を中心に全国の野菜を使用した商品開発や流通開発を行う「株式会社グーニーズグループ」の経理も担当しています。


「KAMOS”Q”」は、桜川酒造の石蔵を改装し、カフェ・コワーキング・イベントスペースとして活用。

1706年(宝永3年)創業の桜川酒造株式会社の日本酒。

—— 福岡出身の友梨さんが、なぜ山形県の小国町に住んでいるのか気になります。最初から「小国町に移住しよう!」と決めていたんですか?

いえ、2年前は小国町に住むとは想像もしていませんでした。私が住むことになったのは、一般社団法人YOKAMOS代表の石井との出会いがきっかけでした。私は前職では福岡で経理の仕事を数年しており、退職後は興味のあったホテルや飲食店の仕事をしていました。そんなある日、経理の仕事をしていた時代にお世話になった方から「北海道で商品開発をしている企業の社長が、食品の流通がわかる経理の人を探していているんだけど、興味ないかな?」と声をかけていただき、その企業の代表をしていた石井と初めて面談をすることになりました。働き方は3種類あり、①時間給制②業務委託③役員のどれが良いか?を来週までに決めて欲しいと提示していただいて、自分の成長にも繋がりそうだし面白そうだったので役員として働くことを決めました。

一般社団法人YOKAMOS代表の石井宏和さん

小国町のコワーキングスペースの立ち上げの仕事の相談を代表からいただいたのは、北海道の会社で役員として働くお返事をした2週間後でした。役員として仕事にコミットする姿勢を買っていただいたんですかね。『山形県の小国町に"世の中を良くしたい”と熱い想いをもったお米農家さんがいるんだけど、その方と共同で、事業や交流が生まれる拠点となるコワーキングスペースを小国町の酒蔵を改装して始めることになったんだよね。半年後にオープンするんだけど、よかったら「事務局」として働いてもらえないかな?』と相談がありました。山形県に行ったこともなければ、小国町がどこにあるのかも分からないし、コワーキングスペースの立ち上げ事務局がどんな仕事なのかもよく分かっていませんでしたが、酒蔵を活用して何が生まれるのか興味があったので、引き受けることにしました。仕事が始まって分かったことは、「事務局」はプロジェクトマネージャー業務のことを指していたようで、コワーキングスペース内のカフェの開業準備やWEBサイトの公開準備はじめ、あらゆるパートナーさんとの進捗管理を一手に行う仕事でびっくりしましたね。仕事は福岡からリモートで行っていたのですが、まずは現場を知るところから、ということで、1ヶ月間、小国にワーケーションしに行かないかと代表から提案いただき、2021年の秋に初めて小国町を訪れました。

—— 代表の石井さんと出会ったことが、友梨さんの人生を大きく左右することになったんですね。でもワーケーションということは、その時点ではまだ小国に住む予定ではなかったということですかね?

そうなんです、1ヶ月間の小国でのワーケーションが終わる頃に代表から『小国町でいい空き家があって、さっき買ったんだけど、ここに住んで仕事してみない?2日以内に返事をきかせてほしい』と言われて、急きょ小国町への移住を考えることになりました。(笑)

ワーケーション滞在中は、宿泊していた民家で一生分見たんじゃないかというくらい大量のカメムシを見て福岡生活とのギャップに驚きましたが、同世代の移住者もいて安心できたり、ご飯は美味しいし地域の人もあたたかくていい印象があったのと、自然の中で住むのも面白そうだと思い、2021年の11月頭に小国に住む決断をしました。福岡から山形へ移住するのは冒険のような感覚で自分でもびっくりしていたのですが、さらに年末に代表から『カモスクがオープンしたら友梨ちゃんに店長になってもらうことに、今日の役員会議で決まったからよろしくね!』とお電話をいただいて、驚きましたが、こちらも面白そうだったので引き受けることに決めました。

—— 仕事も住まいも用意されていて、頼れる知り合いもできて、あとは小国に住むか決断するだけの状況になっていた...!代表の石井さんの無茶振りには驚きますが、友梨さんもNOと言わずに面白がって挑戦しちゃうのもすごいですね(笑)お二人が信頼しあっているんだと感じとれます。

代表の突飛な発想と決断の速さには毎回驚きますが、私も挑戦が好きな性格なんですよね。やったことない仕事に対しても不安に考えるよりかは「私がやったことあろうが無かろうが現場は用意されているから、どうしたらできるかを考えてやるのみ!」という覚悟で乗り越えてきました。今でも自分の効率の悪さに悔しさを感じることもありますが、『友梨ちゃんがいてくれて本当に助かっています、ありがとう』と感謝されると嬉しいですし、現場にいるからできる仕事もたくさんあります。必要とされているから応えたいという気持ちが、私の原動力となっています。

—— 都市部の大企業で組織の一部を担う働き方とは真逆といいますか、個の力が試されたり責任や裁量が大きいのも地方企業の小規模なチームで働く面白さかもしれませんね。福岡と小国町は気候も大きく違うと思うのですが、小国町に住み始めてからの印象を教えてください。

引っ越し初日に見た大雪は印象深かったですね。今でも覚えてるのですが、その日は町中がスキー場かと思うくらい雪が積もっていて驚きました。(笑)

住む予定の一軒家も1階が雪で埋もれて中に入れず、代表からは雪国初心者が一人でいきなり一軒家に住むのは危険と判断されて、初めての冬は小国町の若手移住者の方がされているシェアハウスで暮らしました。半年後に迫る「カモスク」の開業準備もあり仕事面の心配も大きかったのですが、暮らし面ではシェアハウスの方や地域の方に除雪などお手伝いいただき、なんとか初めての冬を生き延びることができました。

—— 2022年3月に「カモスク」がオープンして以降も忙しい日々は続いていると思うのですが、オフの日はどんな過ごし方をしていますか?

車で町外に買い物に行ったり、小国町の人たちと集まってご飯食べたりですかね。小国町に住み始めてから驚いたんですが、山形の人ってBBQやお祭りなどの集まりが多くないですか?各家庭にBBQコンロを持っていて、夕方になるとスーパーでお肉を買ってきて、家のガレージでBBQしながらビールを飲む風景が日常にあるのが、地方暮らしならではの楽しみ方だと感じています。
 

—— 最後に、どんな方が小国町の暮らしを楽しめると思いますか?

小国町に、関係人口や移住者として関わる仲間。

自然環境の変化も楽しめる人ですかね。冬は雪が2メートル近く降るし、秋は家の中にカメムシが何十匹もいるし、夏は暑いし、決して優しくない環境です。だからこそ、助け合いの心を持っている優しい地元の方々が住んでいて、若者も少ないからか孫のように気にかけてくださる方も多く、人間らしい暮らしがあります。また、地元企業勤務・リモートワーク・起業の他にも、最近では小国町の複数の企業で働く「マルチワーク」という働き方をする移住者もいます。いきなり「住む・働く」以外にも、ワーケーションやコワーキングスペース利用やイベントなど色んな関わりしろがあるので、まずはぜひ小国に遊びに来てもらえたら嬉しいです。いつでもお待ちしています。

取材・文_谷山紀佳

KAMOS”Q”(カモスク)/桜川酒造株式会社

👉 KAMOS”Q”(カモスク) 300年以上続く桜川酒蔵(山形県)の石蔵をリノベーションした【酒蔵カフェ&飯豊山麓コワーキングスペース】。(営業日:金・土 ※その他曜日は要予約) 

👉 桜川酒造株式会社 1706年(宝永3年)に創業した小国町の酒蔵。飯豊連峰から流れる伏流水で日本酒を醸す。