移住先の暮らしで見つけた感動を、ストールにデザインする。
nitorito 斎藤美綺さん移住先の暮らしで見つけた感動を、ストールにデザインする。
nitorito 斎藤美綺さん斎藤美綺さん
神奈川県出身/米沢市在住/Iターン
米沢の風景をコンセプトにデザインしたニットストールを作るのは、米沢市にIターン移住した神奈川県出身の斎藤美綺さん。米沢織の企業に就職し、入社1年目に自分のデザインしたストールが商品化されました。「米沢に移住して5年目ですが、毎日移住1年目の気持ちで日々の暮らしにワクワクしています!」と話す斎藤さんに、米沢での移住ライフをうかがいました。
私は2018年に、米沢織の企業「青文テキスタイル」への就職がきっかけで米沢に移住しました。大学生の頃、美術大学でテキスタイルを専攻しており、全国各地の繊維産地に足を運んでいた時に米沢を訪れました。歴史と伝統を受け継いで産地一体でものを作る企業が多いところに感動したとともに、次の世代にどういった形で米沢織を繋いでいけるかチャレンジできる余白にも可能性を感じて、就職を決めました。当時、新入社員の応募はしていなかったのですが、ポートフォリオやデザインテストの結果を見て雇って頂きました。
斎藤さんが初めてデザインしたストール「mountain&moon」。見上げると360度山に囲まれ、星や月をすぐ近くに感じる事ができる米沢の夜空をイメージしてデザインしている。
nitoritoのブランドは、私が挑戦したいことと会社が挑戦したいことのタイミングが重なり、誕生しました。私の就職した青文テキスタイルは、明治10年創業の米沢織のテキスタイルメーカーで、ジャガードという柄を作る機能を持った織機と丸編機を兼ね備えている製造会社です。主にOEMのお仕事をしているのですが、「直接お客様に米沢織の産地である米沢のことを知ってもらいたい」という社長の想いもあり、会社としても自社生産で製品を作ろうと検討しているタイミングでした。nitoritoのストールは、私が入社1年目の夏に、会社で余っている糸を使って自分でデザインした柄のストールを試作したことが原点です。試作を社長に見せたところ興味を持ってくださり、翌年、関東での商談会にも出品しお客様からも想像以上の評価をいただき、本格的にブランドとして販売を始めることになりました。
—— なるほど、会社の方針と斎藤さんのキャラクターが重なって、nitoritoは誕生したんですね!nitoritoのデザイナーとして働くやりがいはどんな部分にありますか?
「長い時間をかけてブランドを育てていくスタイル」のものづくりができること、です。一般的にファッション業界は消費サイクルが速く、シーズンごとに商品が入れ替わります。一年間かけてデザイナーや職人が努力して作ったものが一瞬で入れ替わる儚さをずっと寂しく思っていました。私はどちらかというと流行に左右されず試行錯誤を重ねてクオリティを高めていくスタイルのものづくりが性に合っているので、nitoritoではその考え方を大切にしています。
5年目だと新鮮味が薄れてきて飽きるのかなとも思いましたが、全然飽きないんです(笑)毎日移住1年目の気持ちでワクワク過ごしています。私は車を持っていないので自転車生活を送っているのですが、歩きや自転車でゆっくりと風景を観ると日常の中にも小さな発見が沢山あるんです。
斎藤さんが米沢で撮影した写真たち。
田んぼの色が季節ごとに変わるのも美しいですし、雪の積もり方も可愛くて。山形県の置賜地方は特に四季がはっきりしているので、尚更面白いですね。家から自転車で40分程度で大自然に辿り着くので、自然の隣で生活できることが癒しやワクワクを感じ、制作のアイディアが生まれてくる源でもあります。
歴史や伝統のあるものづくりの精神を「次の世代にどう繋いでいけるか」をワクワク思える人は特に楽しい地域だと思います。私も、もちろん心が折れそうな日もありますが、応援してくださるお客様や後押ししてくれる社長の存在が頑張るパワーになっています。地方に残るものづくりを次の世代につなぐリノベーションを、ポジティブに一緒に頑張る仲間が増えると嬉しいなと思っています。
取材・文_谷山紀佳
ニトリトという言葉から、ニットや織物のイメージを連想し、テキスタイルに馴染みのない方にも親しんでもらえたらと思っています。ニットと織と=「knit to ori to」という言葉を組み合わせて「nitorito」が誕生しました。
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