デザイナーが企画するゴミゼロ運動コミュニティ

Zero Waste Walk 青山浩子さん

青山浩子さん
岡山県出身/米沢市在住/J ターン

月に一度、朝の公園でゴミ拾いをして、コーヒーを飲んで、おしゃべりを。

—— 今朝も大学生・地元の方・移住者・海外の方まで30人近く参加していますね。Zero Waste Walk はどのような活動なのでしょうか?

Zero Waste Walk は、2021年に気候危機や環境問題への意識の醸成を目的に米沢市を起点に始めたゴミゼロ運動です。月に一度、朝の公園で1時間ほど、環境問題にまつわるレクチャーとゴミ拾いをして、最後はみんなでおしゃべりをしながらコーヒーを飲みます。参加者は、Instagram で発信される開催のお知らせを見て集まります。

朝の米沢市の公園に集まるZero Waste Walk 参加者たち

私は岡山県出身の移住者で、東京で17年近く働き、コロナ禍を機に夫の実家がある米沢に3年前にJ ターンで移住しました。仕事は、夫が代表を務めるデザイン会社(Graphic / Web)と米沢版DMO(観光地域づくり法人)の2社に所属しています。
米沢に移住したばかりで友達がいなかった私に、「友達ができるきっかけにもなるんじゃない?」と夫からの後押しがあったのもZero Waste Walk を始めるきっかけでした。

—— 参加のしやすさ・気候変動(環境問題)への視点をつくるレクチャーなど、ゴミゼロ運動にデザインの力が入ることによる面白さを感じます。

日本は世界と比べても、環境問題に対する対応が遅れています。一方で気候危機・環境破壊は刻々と進み、CO2を削減するよう今すぐ動かなければ“地球に残された寿命はあと3年”とも発表されているんです。びっくりしませんか?めっちゃ短いですよね(笑)地球規模の課題はスケールが大きすぎて他人事のように感じてしまいますが、私たちが住む地球を守るために一人一人が意識して主体的に取り組むことが早急に求められています。

Zero Waste Walk では、参加する方々に気候危機・環境問題への意識が少しでも芽生えて、行動が変わるといいなと思い活動しています。ただ、「伝え方」が過激になりすぎないように気をつけています。デザインの仕事にも通ずる部分がありますが、経験上メッセージだけを強く主張しすぎても受け取る側の理解や共感を得られないと押しつけ感が出てしまってあまり意味をなさないことが多々あります。なので、大学生や若い人でも「楽しそう!参加してみたい!」と思える場のデザインを心がけています。

Zero Waste Walkに参加する米沢の大学生。「あえてゆるさを残しているのが、人が集まる理由なのでは?」と教えてくれました。

—— 青山さんの本業はデザイン領域ですが、どのような経緯で環境問題に関心が向いたのでしょうか?

ゴミ拾いをする前に、参加者に気候変動(環境問題)の現状をレクチャーする青山さん。

昔ファッションを勉強していた頃があったのですが、探究していると行き着く先に様々な社会問題が見えてきたんです。例えば、2013年にバングラディッシュで発生した「ラナプラザ崩壊事故」はファッション業界を震撼させたファッション史に残る悲惨な事件でした。この事件では、ファストファッションの代償に、安価な労働賃金で厳しい労働環境で働かされて、死者、行方不明者、負傷者の全てを合わせて、4000人以上の犠牲者を出しました。大量生産・大量消費の背景には、人の命が搾取されていることや、環境破壊にも繋がっている事実を知り、このままでいいのだろうかと疑問を抱きました。そういった他にも、食の思想(マクロビ)や金継ぎなどの趣味や、生活基盤を整えるときの延長線上に必ず”気候危機や環境問題”の壁にあたることに気づき、それがきっかけで本を買ったり紙面やwebの記事を読むようになりました。

—— 青山さんが移住先でチャレンジする姿は、先輩移住者としてかっこよく感じます。ただ、よそものが活動することを、よく思わない人もいたのではないでしょうか。

ありがとうございます。私がチャレンジできるのも周りの人たちが優しく、興味を持ってくれる人が多いというのが大きいです。雪国ならではの土地柄、忍耐が必要な環境なのもあると思うのですが、優しい方が多い。特に男性は困っている人がいると自然に手を差し伸べられる。どこか利他的なところがあって、地に根付いているような感覚を得ます。移住される方で恋人や結婚相手を探している方がいたら、米沢の男性はおすすめですよ!(笑)

この活動をよく思わない人も中にはいるかもしれませんね。でも、それはどこにいても同じこと。生まれも育ちも違う環境下で育った人間が同じ場所に集まれば、違う意見があって当然だと思いますし、私の価値観として西の方で生まれ育ったからかもしれませんが、面と向かって伝え合うことは有意義な意見の交換だと思っています。そう言った意味でも、意見の交換ができるこのコミュニティを大切にしていきたいと思っています。

ゴミ拾いを終え、参加者とコーヒーを飲みながらおしゃべりする時間。

—— 最初から違う人間だということを前提に“意見の交換”だという認識で、地域とコミュニケーションを取る姿勢は大切ですね。最後に移住を考えている方へメッセージをお願いします。

「Zero Waste Walk に参加して友達ができた!」という移住者の方もいる、あたたかい人たちが集まるコミュニティです。一人で参加されている方も多くいるので、まずは勇気を出して遊びにきてほしいなと思います。

世界が脱炭素社会に向かっているのに対して、日本の気候変動対策が遅れる大きな要因は、原子力、化石燃料、再生可能エネルギーなどさまざまなエネルギー源にかかわる利害関係者と立地地域間の調整に終始し、根本的な変革に踏み出すことができないからだと言われています。私一人が活動しただけではそういった方々の考えを変えることは難しいし、あまり時間に余裕はありませんが、Zero Waste Walk の活動を通して気候危機・環境問題に直面するであろう若者たちが「ストップ!と声をあげる or あげない」を自分たちで選択できるようなベースを整えられたら…と思っています。ゆくゆくは、参加した方の中で、運営にも携わりたいです!という方が現れたらとっても嬉しいですね。

米沢に来て3年、ようやく地方の良さもわかってきました。地方には、本来人間が感じてきたものや美しさがあります。その良さを伝える役割として、デザイン・マーケティング・観光分野などの仕事を通して米沢にこれからも携わりたいと思っています。

そして2023年は、Zero Waste Walk の活動を日本各地とオンラインで繋いだり、ファッションとも掛け合わせた企画を考えているので、開催できたらぜひ遊びにきてください!

👉 Zero Waste Walk の活動情報はこちらから

取材・文_谷山紀佳