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健康でありたい、健康であってほしい。その想いを“食”を通じてつなげ、支え続ける。

株式会社ベスト / 営業及び企画開発

インタビュー記事

更新日 : 2024年11月21日

 株式会社ベストは、食事の宅配、給食事業、介護食事業を展開している会社。健康を願うのは、介護をされる本人だけではない。介護する側も「健康であってほしい」と願っている。その両方の想いを、食を通じてつなげたい。そう考え事業を展開している。高齢化や人口減少といった社会情勢が変わるなか、ベストはどんなチャレンジをしていくのか。

株式会社ベスト 事業概要

庄内地域を中心に、新庄、最上、村上など山形県内外に食事宅配事業、給食受託事業、介護食事業を展開している。1985年の創業から40年近く、「健康は『食』にあり」を社是とし、介護食を中心とした製造や個人宅への宅配を行い、病院・福祉施設や幼稚園・保育園、学校の給食の受託も手がける。40年で蓄積されたノウハウを生かし、食形態の個別対応を施し、見た目やおいしさにもこだわった食事を提供。中でも特許技術を持つまろやか食専科といわれるソフト食は食材そのものの見た目、風味を再現し、ミキサー食の代替としても大きな定評がある。
 創業以来庄内地域を中心に食を提供してきたが、人口減少など社会情勢は大きく変化してきた。それに伴い事業も変容を迫られる中、地元に根付くために、課題を発見、解決していくチャレンジをこれからも続けていく。

食を通して皆様の健康に貢献したい

 株式会社ベストが中心としているのは介護食事業だ。庄内地域を中心に、新庄、最上、村山地域で、1985年の創業より宅配事業、委託給食事業を展開してきた。特に「食を通じて皆さまの健康に貢献したい」との想いから、エネルギー制限、塩分制限といった食事療法を必要とされている方へ、食形態の個別対応を施し介護食を提供している。また、個人宅へは、昼食と夕食の時間それぞれに食事を直接届け、そのほか病院・福祉関係施設の給食提供事業などを行っている。加えて工場や学校、幼稚園などへ給食を提供する事業も行い「食を通して健康に貢献する」事業を行っている。
 創業から40年という歴史のなかで、さまざまなノウハウを蓄積し、単なる介護食ではなく「おいしさ」も追及している。
 
「私たちの商材で、ソフト食というものがあります。噛むこと、飲み込むことが困難な人たちの多くは、いわゆるミキサー食というものを食べています。名前の通り、食材をミキサーにかけ、ドロドロの状態の食べ物です」


 そう話すのは、2022年よりベストの代表取締役に就任した野澤俊彦だ。ミキサー食は栄養面では補完できるが、冷たいものも温かいものも同じくミキサーにかけてしまうので、「料理」そのもののおいしさは味わえない。
 
「でも料理はやはり見た目も重要ですよね。そこで例えば鮭なら鮭の見た目をしているもの、肉なら肉の形をしているものを提供できるようにしています。だから食事の楽しみも変わらず味わえるんです。隣にいる普通の食事をしている人といっしょに楽しめる。これは大きなことだと思います」
 確かに食事は単に栄養を取る行為ではない。見た目に「おいしそう」と心をはずませ、いっしょに食事をとる人と「おいしいね」と楽しく話をする。それこそが食事だろう。この「いっしょに」というところに、ベストの想いはある。


豚肉や鮭などを模したソフト食。味も匂いも本物そっくりだ。

健康でありたい、健子であってほしい。その想いを"食”を通じてつなげ、支え続ける。

 もともとベストには「健康は『食』にあり」という社是はあったのだが、それをさらに明確にするために、野澤が代表取締役に就任して、会社のパーパスを定めた。山形県工業技術センターが主催するプロジェクトに参加して、ゆっくりと時間をかけて会社のパーパスを作っていったという。そのプロジェクトに参加した管理栄養士でもある営業部の山本智恵美は当時のことを思い返しこう話してくれた。
「弊社は創業以来、健康は食にありという社是のもとに健康食、介護食を提供してきましたが、健康というのが身体だけのことではないとこのプロジェクトで再認識されました。精神的、社会的にも健康はあって、それらが三位一体だからこそ健康でいられると思いました。それを実現することが私たちのパーパスだと思ったんです」


そうしてできあがったパーパスが「健康でありたい、健康であってほしい。その想いを“食”を通じてつなげ、支え続ける」というものだ。
 食事にはもちろん食べる人がいる。その本人は「健康でありたい」と思う。そして、いっしょにいる家族や施設の人間は「健康であってほしい」という想いをもって食事を提供する。ふたつの想いを食を通してつなげるのが、ベストの目指す仕事なのだ。だから、栄養だけ摂れればいいというわけではない。「いっしょに」楽しく食事を通してつながるための介護食を提供しているのだ。

社会課題に直面する事業

 しかし、野澤はこうも話す。
 
「私たちの事業は、現場での食事提供が最重要というのはもちろんなのですが、そのための『社会環境』というものが大きく関係してきます。日本の高齢化も大きいですし、庄内地域でいえば人口減少も大きく関係してきます。現状、給食委託事業の受け手が少なくなっているという状況も生まれています。そういったなか、地元で40年続けてきた企業として、そして新しく定めたパーパスのもとどのようなことができるのか考え、行動していきたいと考えています」

 こういった社会問題に対する方策は、マーケットとしてもまだ定まった方向を見つけられていないという。介護をする側、される側、双方が求めているものは何か。その想い、考えなのか、できることは何か。模索しながら事業を進めざるを得ないということだ。
 「だからこそ、課題意識のある人、事業としても社会としても課題を見つけてチャレンジできる人といっしょに仕事ができれば新しい発見も出てくると思います」と山本も話す。「先ほどお話したプロジェクトのなかで東北芸術工科大学の学生とセッションをする機会があったのですが、介護食とは関係のない人たちからの意見は新鮮だったんです。例えば介護食の技術を介護食だけで使うのはもったいないとか。そういった、言ってみれば外側からの意見も取り入れて今後事業を進められればと思います」と話してくれた。


 総務部の齋藤靖も同じように、外からの意見は新鮮だったという。
 「2022年に野澤が代表取締役に就任し、会社として様々な改革を始めました。その最初の年に、中小企業大学校のオンラインの研修を受けたんです。そこには全国からいろいろな業種の方が集まっていました。介護食とは関係のない人たちです。その人たちに『介護用ソフト食』といっても当然通じません。それだけでも、確かにそうだよな、と考えを改めさせられました」と話してくれた。
 続けて「私は総務としていわばバックオフィスの仕事をしています。バックオフィスは売り上げを作れるわけではないので、現場で働いてくれる人がいてこそ、自分の価値があると思っています。そうして会社を見渡すと、そこにも『課題』がある。それを働きやすい環境へと変えていくのが、私のできることだと思っています。それが、現場に反映されて、社会的な課題の解決に少しでも協力できればうれしいです」とも話してくれた。
 現在は労働環境の改善の一環として、人事評価制度の再構築を行なっている。「当社は全体で約280名の社員がいますが、勤務場所はさまざまです。普段、密接にコミュニケーションが取れないからこそ、社員さんがモチベーションを高く持って働けるように評価基準を明確にしたい」と齋藤は話す。

 介護食というと、介護の現場でのミクロな仕事のようにも感じられるかもしれない。たしかに「おいしさを求める」といった部分では、ミクロな視点も必要となる。それに加えて地域や社会といったマクロな視点も取り入れて、事業全体を俯瞰して課題を見つけていくことも必要なる。社会貢献度の大きな仕事なのだ。
山本は「顧客との対話をきちんとして、課題を見つけて解決していく。そのなかで選ばれる会社にしたい。やっぱりベストがいいと言ってもらえる会社になりたいと考えています。そのために、様々なことにチャレンジしていきたいと思います」と語る。
 最後に野澤は「私たちの事業領域は、少子高齢化と地方の急速な人口減少という社会課題と密接に関係しています。全国的に見ても高齢化率と人口減少率が高い庄内地域で、私たちがマーケットの先頭に立ち成功事例を作っていく必要があるのです」と話してくれた。
 創業から40年間、庄内の生活を食を通して支えてきた株式会社ベストはいま、社会課題を解決すべく大きく変化しながら未来の庄内を見つめている。