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安らぎと生きがいを持てる「第二の我が家」を目指して

サードステージ株式会社 / サードステージ株式会社/通所介護管理者

インタビュー記事

更新日 : 2023年10月05日

少子高齢化の進む中、そのニーズがますます高まる介護事業。しかし量的な増加だけではない。利用者のニーズは時代とともに変わる。また社会状況や法律も変わっていく。質的な変化もある。今回伺ったサードステージはその変化に対応する会社だ。その柔軟な変化こそが福祉なのだと思わせてくれるインタビューとなった。

サードステージ株式会社 事業概要

2012年に酒田市ゆたか町にて、デイサービスセンター「ゆたかの家」を開設。定員20名、3食付きおよび宿泊機能付きデイサービスとしてスタートした。ゆたかの家には、出張美容院ゆたか、福祉タクシーなど、利用者とその家族のニーズに合ったサービスをプラスしていった。また、2014年には訪問介護事業所、在宅支援サービスゆたかを開設し、さらに広いニーズに対応するようになった。その後、庄内地域でも、余目、三川町といった、酒田、鶴岡の中間地点の利用者にも配慮し、2016年に鶴岡市友江にてデイサービス「澄花」を開設した。また、同年サービス付き高齢者向け住宅「アヴァント」も開設した。在宅生活から施設生活での介護援助に加え、重度者への対応、看取り(ターミナルケア)まで幅広く対応できる体制を整えている。 2020年に山形県知事より、山形いきいき子育て応援企業「優秀(ダイヤモンド)企業」の認定受けるなど、スタッフの働き方にも配慮し、利用者、家族、そして従業員、地域、会社という、五者満足を理想として掲げ、それぞれのニーズを見極めて福祉事業を展開している。


社会への恩返しを
サードステージが酒田市にてデイサービス施設「ゆたかの家」を開設したのはいまから10年前の2012年のこと。代表取締役の堀将は、さまざまな課題を解決したいとサードステージを設立した。もともとスーパーに勤務していた堀は数字に追われる毎日を疑問に思い、介護の世界に飛び込んだ。そこには一つの想いがあった。
「私が8歳のときに父が亡くなり、それから母子家庭で育ちました。それから民生委員の人や役所の人が定期的に来てくれ、生活を支えてくれました。子どものときに母にそのことを聞くと『福祉といって、国やみんなが助けてくれるんだよ。だから決して忘れてはいけないよ。大きくなったら恩返しをするんだよ』と言ったんです」

 この母親の言葉はずっと堀のなかにあったという。だから勤務していたスーパーをやめたときに介護の世界に入り「恩返し」をしたいと思ったのだ。

しかし、その介護の世界でも所属していた会社の管理職になってしまうと数字に追われることが多くなってしまった。自分ではまだまだ利用者様のニーズに応えきれていないという想いがあったなかで数字ばかりが先行していくことになり、ならば自分で利用者のためのサービスを展開したいとサードステージを設立、ゆたかの家を開設することとなった。

 

介護離職をなくしたい
最初に目指したのは、母一人子一人の家庭での困りごとを解決したいということだった。介護事業で働く中で一つの課題として見えたのは、家族の負担だった。特に母一人子一人という家庭では、介護のために仕事をやめざるを得ないという人も多かった。それに対応できるように堀はゆたかの家を設立した。デイサービスという形だが、3食付きでしかも宿泊にも対応するというものだった。今回インタビューに参加してくれた副社長の富樫悌治は「実はデイサービスに加えて提供する泊まりのサービスは大変なんです」と言う。
「何が大変かというと、スタッフへの配慮です。定期的に、同じ人たちが泊まるというわけではありません。いついつは用事があるので泊りにしたいとご家族の方から言われるわけですから、その都度スタッフのシフトを組まなくてはいけません。そうなるとスタッフの負担はどうしても大きくなってしまうんです」

それでもご利用者様のニーズは大きかった。だからサービスを提供するために、受け入れ体制やスタッフの配置など、さまざまな工夫を凝らしてサービスを続けることとなった。ご利用者様からは好評を得て「助かります。ありがとう」という言葉を多くもらえた。
ご利用者様とそのご家族様のニーズはさまざま。そのご利用者様の声を聴くことで、サードステージは柔軟に変容していく。デイサービスに来た人の多くが「家でも自由に暮らしたい」という想いを抱いていた。そこで訪問介護のサービスも開始し、通所する際にも快適であるように介護タクシー事業も始めた。また、実は要介護者はなかなか美容院に通うのも難しいという状況がある。連れていく家族も大きな負担となる。そこで出張美容院という事業も始め、現在では介護美容師が常駐しているほど人気のサービスとなった。

 

さまざまなニーズに応える
そのように細かなニーズに対応することに加え、大きな流れのなかでドラマチックに事業を展開していくのもサードステージの特徴だ。訪問介護を始めたこともそのひとつだが、その次にサードステージが動いたのは、鶴岡でのサービス提供だ。しかも、余目、三川町といった、大山地区の方々の他、そこからアクセスしやすい鶴岡市友江にデイサービス「澄花」を開設した。

また、次に手掛けたのはサービス付き高齢者向け住宅「アヴァント」だ。これには大きな特徴がいくつかある。その一つが、利用者は賃貸借契約をすることだ。多くの介護付き有料老人ホームは利用権契約を結ぶ。そのデメリットは、入所一時金が高いこと。そして、例えば入院といったことで施設を長く空けるときには退去を求められることだ。賃貸借契約、つまりそこが自分の家であれば、出ていく必要などない。そうなれば、安心して入院でき、退院後も戻ってくることができる。しかも、アヴァントは高速道路の近くにあり、県外からのアクセスもしやすい。つまり、ご家族様が遠方にいても受け入れる体制を整えているということだ。「ご利用者様に何かあったときに誰に連絡をすればいいんだという理由で、家族が遠方にいる場合利用できない施設も多くあります。でも、ニーズはある。ならば可能な限り対応したい。そう思い、サービスを提供しています」と堀は話す。
また、賃貸借、特に老人の契約となれば、金銭的な不安が会社にはのしかかってくる。お金が払えないという状況が出てくることもあるからだ。実際にそういったトラブルもあったという。
「ただし、それを会社が我慢すればいいとは思いません。我慢し続けていればそれはきっとスタッフにも影響してしまうことなので。だから、いま、サードステージとは別の社団法人として身元保証会社を設立準備しています」
堀は「逃げない福祉」という言葉を使った。そのようにニーズがあるなら対応する。対応するためにさまざまな方策を取る。そうすることで「福祉」という言葉は幅を広げていき、多くの人にいきわたるようにできるのだ。「世間に恩返しするんだよ」という母親の言葉を胸に堀は奔走する。
「会社には大きな利益を残さなくてもいいんです。その代わり、ご利用者様、ご家族様、そしてスタッフに利益を還元し、幸せになる形が目指すところです。さらに地域と会社も加えて五者満足というのが理想の形です」

 

五者満足を目指して
副社長の富樫は泊まりのデイサービスの話で「スタッフが苦労する」という話をしてくれた。ならば「スタッフは苦労をしてもご利用者様の満足のために奉仕すればいいのか」といえばそうではないという。
「もちろん、介護の現場はさまざまなハプニングも含めて、厳しいものです。そこを否定はしませんが、楽しいこともたくさんあります。まず、自分がどんな仕事をしているのか、それを知ることでも仕事が楽しくなるはずです。なかなか時間がかかって難しい作業ですが、そういうマインドの変革からスタッフに伝えたいと思っています」

また実は離職者の多くが職場の人間関係によるストレスを感じているそうだ。そこで働きやすい環境を整え、スタッフ同士の関係も良好にしていくために努力している。
「実はスタッフの体調管理も非常に大切なんです」というのは、訪問介護で管理者兼サービス提供責任者として働く若菜理恵だ。「体調が崩れればシフトが崩れてほかのスタッフに負担を強いることになる。そういう実際的な面もあります。加えて、体調が悪いと笑顔になれない。つまり、介護の現場でも雰囲気が悪くなってしまうんです。それでは誰も幸せになれません。だから気づきが必要なんだと思います。ちょっとしたことでも、声をかけて話を聞く。それが体調でも働く環境のことでも、しっかりと受け止めて改善できるところは改善する。そうしてスタッフに気を配ることがサービスの質もあげてくれるのだと思います」

ゆたかの家で管理者として働く石原琢也も「話を聞く」という言葉を使った。

「以前も介護の仕事をしていました。そのとき現場で利用者さんとのやりとりで気づくこともありました。ただし、いまは管理者として利用者さんの介護の仕事以外の対応が多くなって新たな気づきが出てきました。スタッフの勤務状況、ケアマネさんやご家族、業者さんとのやりとりからいろいろなものが見えるようになりました。それぞれが『何を考えているか』を聞き取るようにしています。そしてそれぞれが満足できるような体制を作りたいと考えています。専門学校時代に介護事業はサービス業だと先生が言っていたのですが、その言葉の本当の意味がわかってきたように思います」
そんなふうにサードステージという会社が目指す「五者満足」は現場にも伝わっていた。
現在、定期巡回訪問という形で地域と連携しているが、地域というワードはまだまだ実現できていないと堀は話す。その形がどのようなものになるのか。法律も時代とともに変わる。ご利用者様とそのご家族様の生活環境も時代とともに変わる。その変化に対応しながらサービスの形を変えていく。若菜理恵は「やっぱり利用者さんとの一対一の現場は大きなやりがいがあります。じっくりと話をして、ゆっくりと介護をする。そして『ありがとう』という言葉をいただけるとやはりこの仕事でよかったと思うんです」と言う。その想いは変わらない。変わらない想いを実現するために、変わっていく会社。それがサードステージの福祉事業なのだ。