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物流資材や農業資材の開発。山形のものづくりが全国にインパクトを与える。

株式会社三洋 / 製造職

インタビュー記事

更新日 : 2023年03月06日

農業資材、包装梱包資材、物流資材などの開発と製造を行い、近年では業務用保冷バッグの開発によって全国的シェアを誇る三洋。庄内地方三川町の本社に併設した工場で一括生産を行い、本社のみではなく、東京営業所でも大きく売上を伸ばしていてる。東京営業所で営業を担当する二人に話を聞いた。

株式会社三洋 事業概要

1965年に東京の電気メーカーに勤めていた先代が、地元で農業に貢献する企業を立ち上げようと創業。1968年に組織変更をし、株式会社三洋を設立した。 ポリ袋やポリカバーの製造に始まり、農業用コンバインの収穫袋(コンバイン袋)、自立して脱穀した籾を受け止めるロンバッグシリーズの開発など、ひとつの商品に頼らず、ニーズに応えながら開発を続けてきた。現時点で大きなシェアを誇っているのは、保冷ボックスや保冷バッグなどの運送に用いられる物流資材と、農業に用いられるパイプハウスや軽量鉄骨ハウス。営業マンがクライアントからの聞き取りを続け、他社が行っていない開発に着目し、現在では従業員数80名強、年間売上高30億の企業に成長した。 環境の維持向上のための廃棄物削減、省エネルギー、リサイクルへの取り組みを重視し、農工商のバランスがとれた地域づくりへの貢献を会社の基本理念に掲げる。10年前に先代から経営を引き継いだ代表取締役社長の石田伸が、社内の意識向上のために行う取り組みが魅力的だ。 「弊社では毎朝決まった時間に、気づきのための研修として、環境整備を社員全員で 行っています。日々の掃除や備品チェックなどを心がけ、気持ちよく働けるための環境整備を行うのですが、それを習慣づけることで、汚れやすいところや気持ちよく働くための整備などの気づきを得ることができます。気づくための癖、考えるための癖をつけるための取り組みです。 それともう一つが、社内でのサンクスカードのシステムです。何かいいことをしている社員の行動に気づいたら、『ありがとう』と紙に書いて渡すように義務づけています。紙に書いて渡せば残るので、その先の仕事のやりがいに結びつきますし、やはりこれも、サンクスカードを渡すために目を配り、気づきのトレーニングになります。委員会がメモをまとめて社内で共有し、さらには新しい改善点の発見にもつなげることができると考えています」 閃きを一瞬で終わらせず、仕組みを作ることで会社の継続的な成長を目指す。社内全体で行う取り組みが、物流資材や農業資材の分野でシェアを伸ばす三洋の成長を裏付けている。

−最初にお二人の経歴を教えてください。

藤森 省吾(以下、藤森):私は山形大学出身で、機能高分子工学科という学科の院まで進み、樹脂関係の合成の研究を行っていました。そこでは数字やデータを扱いながら研究を進めていたので、就職先としては、実際にものとしての商品があって、それを製造するメーカーであるという点で三洋に魅力を感じました。営業向きのタイプだとは自分では思っていませんでしたが、ものがどうできあがっているのかを考えた上でお客さまに提案できる、という点では研究の経験が活かせているのかもしれません。

−新卒で就職したのが三洋さんだったんですね。

藤森:そうです。最初の2年間は山形の本社で営業を勉強し、それから東京営業所に移ってきて今年で5年目です。

−控井さんの経歴もお聞かせください。

控井 勇貴(以下、控井):私は三洋が仕入先の、同業界の別企業から転職してきて2年になります。前に勤めていたのが商社機能とメーカー機能を両方持つ会社で、いくつかの企業と取引があったのですが、三洋は製品の質も営業担当者の対応もよかったですし、実際に工場見学に行くとものづくりの現場としてもとてもいい印象があったので、そのつながりがきっかけで転職をしました。

−「メーカー」の側面に惹かれたということでしょうか。

控井:大阪で大学を卒業して、最初に眼鏡屋に就職したんですね。販売員として接客をして売上を伸ばすことにもやりがいを感じていたのですが、たくさんのフレームを携えて販売に来るメーカーの人が単純にカッコよく見えたんです。小売業としてではなく、作り手の側からものを売る立場になれないかと考えました。それで眼鏡屋から前職に転職したのですが、そちらもメーカーよりも商社機能の占める割合の高い会社だったので、ものづくりの現場により近い三洋に転職を決めました。

−東京営業所ではお二人が営業を担当し、年間の売上額が7億にも上ると伺いました。その破格の営業実績はどのように獲得したのでしょうか。

藤森:もちろん私たちが新規開拓したわけではなく、前所長時代にお客さまと築いた関係があって、そこをきちんと引き継いだことが売上に反映されています。電話やメールはもちろんのこと、直接会いに伺うことも含めて、お客さまとのやりとりはマメに行っています。例えば、見積もりを依頼して何日も返答がないと、仕事が進みませんよね。お客さまの立場に立ち、問い合わせが来たらすぐに回答するなど、いつでも何かを頼みやすい関係を築くことには注力しています。

控井:私たちの現在の仕事においては、お客さまからご要望を伺うのが最初のステップです。お客さまの要望にお応えできる新しい仕様を絵に書き、お客さまにお見せしていいと思っていただいたら実際に工場で形にして、製品化するというのが一つの流れです。私は人と話すのがそこまで得意な方ではないので、お客さまの要望を聞いたら、新しい形を考えて仕様書にまとめることにおもしろさを感じます。営業職ではありますが、このように企画の部分を担当していることも、この仕事にやりがいを感じて、売上にもつながっている部分かもしれません。

−実際にお二人で7億の売上となると、内勤作業の比重も相当に大きいのではないかと想像できます。

藤森:たしかに営業を名乗っていながらも、営業らしくはないかもしれません。事務所で電話やメールに対応する時間が結構占めているので。実際のところ、私たちが取引をするお客さまは、企業の営業担当の方々です。ドライアイスのメーカーさんがドライアイスとセットで弊社の保冷ボックスや保冷バッグを営業されていたり、台車などの物流機器のメーカーさんが保冷バッグも一緒に販売してくださったり、全国に営業所を持つクライアントさんが全国の注文を集約して弊社の東京営業所に発注してくださるのが、大きな売上につながっているのは事実です。

−しかし、お客さまの依頼を的確に聞き取り、それを工場での生産につなげないと売上には結びつきませんよね。

藤森:お客さまと工場の間の納期の確認や、どのような仕様を形にするか、いくらで販売するか、ということを把握したうえで調整をしないと取引は成立しません。そういった意味でも、庄内の本社に月に1回か2回は訪れ、時間があれば製造の手伝いをすることで、実際に何ができるかをきちんと把握してお客さまに的確な提案ができる環境が、売上にも大きく反映されていると感じています。

控井:前職で三洋の工場見学をしたときには、整理整頓された綺麗な工場で、従業員の方々が真面目にものづくりをしているという印象でした。入社してからも定期的に工場を訪れる機会があるのですが、そこで実際に手伝っていると、作業の大変さや、そこにかかる時間と人手を実際に感じることができます。そうすると、どういった仕様書であれば工場に提案できるか、という判断ができるようになってきます。弊社の工場ではこちらのアイデアをしっかりと形にしてくれるので、お客さまからの要望を仕様書にまとめ、それが想像以上の形で仕上がってきたときには本当に大きな喜びを感じますね。

−距離的には東京と山形で離れてはいますが、工場と営業職のやりとりが密に行われ、実際にお二人が工場の生産現場を理解している点が、御社の強みなんですね。

控井:お客さまと打ち合わせをして、こういうものを作ってほしいと工場に伝えると、すぐに形にしてくれます。それはたしかに強みと言えるかもしれません。お客さまからの要望を聞いて新しい形を提案できるように、他社がどのような製品を作っているのかは日頃からよく見るように心がけ、新たな改良点を考えるヒントにしていますし、あとは、100均ショップなどに行くとさまざまなものが売られているので、商品を見ながら新しいアイデアの参考にしたりしています。

藤森:自分の場合は新しいアイデアを考えるのが控井ほど得意ではないので、引き出しを増やそうと心がけています。工場に行ったら、どうやって作っているのかをひたすら観察して、お客さまのところでは、どういう商品をどのように利用しているのかを把握するようにします。そういった積み重ねによって、お客さまからいただくご要望に対して、「あれとあれを組み合わせれば、この問題を解決できる」みたいな対応力が増すと考えています。

控井:三洋に入社して、「控井くん、これをやったらいけないよ」と言われたことがないんですね。もちろん営業なので結果を残さないといけませんが、アイデアがあれば試させてもらえます。いい意味での自由が与えられているんですね。うちの社長は、こちらから何かを提案して、よほど間違ったことを言っていなければ、即決で「やってください」となるので、そういう意味でオープンな環境というのはやりがいにつながりますね。

−お客さまの要望に的確に応えて、新たな仕様を商品化できることが大きな喜びなんですね。

控井:お客さまに喜んでいただけることは嬉しいですし、うちが販売している商品は実際に街中でよく目にするんですよ。例えば、宅配業者が道でガラガラ押して宅配物を運んでいる箱だったり、料理の出前の蓄熱用のカバーだったり、ショッピングモールやスーパーで食品を運んでいるケースだったり、そういうのを見かけると「あれは俺が考えた商品や」ってつい言いたくなります。社会に役立っているのではないかと、自己満足かもしれませんがそれは嬉しいですね。

−物流や食品業界に大きな影響を与える商品の数々ですからね。

藤森:業界として、需要は少しずつ増え続けていると感じています。国内での工場が減少傾向にあったり、人員減が進んでいたりという現実もありますが、需要は確実に増えています。弊社はものづくりを行うメーカーであることが強みなので、それを活かして、他社ができないことを実行して、保冷関係において三洋が明確に一番だというポジションを確保したいと思っています。現状だと、営業の人手が足りなくてお客さまの営業に頼っている状況なので、より末端まで自分たちがシェアを得られるようになれたら嬉しいです。