工事現場の幅広いニーズに応える“連携”
仮設機材工業は土木・建設工事関連の“総合商社”だ。創業当初から続けている建設現場での足場の組み立てはもちろん、土木・建設資材や電動工具の販売やハウス、トイレ、シャワーユニットのリース、レンタルも行っている。加えてアンカー、コアボーリング、ロードカッターなどの工事を請け負う事業部もあり、幅広い建設需要に応えることのできる体制をとっている。主な事業部は6部門で部門間の横の連携も強く、工事現場のニーズに迅速に対応できることも会社の強みだ。
今回インタビューした、髙橋孝義、齋藤陽一、佐藤怜の3人はそれぞれ、セーフティステップ事業部、営業部、事務部という別々の部署で勤務している。足場の掛払いやレンタル事業を展開するセーフティステップ事業部の営業部長を務める髙橋は「齋藤の担当する営業はもとより、佐藤が担当している建築資材、電動工具の販売店業務もありますし、道路を切ったりするいわゆるカッター工事を担当するコンストラクション事業部というものもあります。これらをひとつの会社の中で行っているというのはそれほど多くないかと思います。そのため多様な工事に対応できる体制ができています」と話してくれた。
営業を担当している齋藤は続けてこう話す。
「営業の案内先は主に土木、建築の現場事務所です。ただし品目は建築資材にはじまり、現場で安全に作業していただくためのリース品や休憩時間中を快適に過ごせるような商品など、大小さまざまなものです。そのため、事業部間での意見交換は必須なんです。そのコミュニケーションが円滑なのでわたし自身も助かっている部分は大きいです。あとは資材、工具、レンタル商品の配送も弊社で担当しています。これにも連携が生きているから迅速に配送できるんです。だからお客様からは安心して相談いただいています」
創業当時は、単管クランプの組み立てや足場パイプなどの卸販売店としてスタートした仮設機材工業。時代の変遷とともに様々な工事に対応できるように事業領域を拡大してきた。そのそれぞれが連携しているから多様な要望に応えることができる。そこから“安心感”が生まれるのだ。
地域とともにあるために真摯であること
創業は1971年(昭和46年)。以来、約半世紀にわたり主に庄内の地で事業展開を行ってきた。“地域”というキーワードで3人に話を聞くと、まず営業の齋藤から答えが返ってきた。
「約50年というお付き合いのなかでのつながりというのはもちろん感じます。そのほかにも例えば地元のイベントにレンタル品を貸出して、設営にも営業マンが出ていくこともあるんです。そういうときに個人的には地域とのつながりというのは強く感じますね」
「わたしの場合は、人口減少とそれに伴う工事の減少というのが課題です」。そう話すのは髙橋だ。「わたしの事業部は工事の“足場”に関するものです。つまり公共であれ民間であれ工事そのものがあってこその事業です。その工事自体が減少してきてしまっているというのが現状です。その事実は事実として受け止め、その先を考えていかないといけないなと感じています」
代表取締役を務める西村修も事前のインタビューで同じ危機感を抱いていた。
「わたしたちが目指すのはお客様から信頼され、地域社会に貢献できる企業であることです。仮設機材工業という会社が今後生き残っていくためには、“地域”が生き残っていかなくてはなりません。事実に目を向けると、その地域というものに元気がなくなっている。それ自体つらいことですが、同時に工事も減るわけですから弊社も当然他人事ではありません。だからこそ“地域”のことをさらに深く考える必要があるんです」
庄内という地域とともにあり、その発展を見続けてきた会社が見つめる衰退。それにも真摯に向き合わなくてはいけない。では、会社と地域の未来を仮設機材工業はどのように見つめているのだろうか。
建設の総合商社が手がける“不動産事業”
仮設機材工業の今後のビジョンとして、大きな事業はふたつある。ひとつは「環境エネルギー事業」だ。地球温暖化防止のための再生可能エネルギー拡大の観点から、太陽光発電売電事業を行っている。2014年に稼働を開始した酒田市平田砂越地内に建設された発電施設をはじめとし、遊佐町吉出、遊佐町杉沢(ともに2016年稼動開始)の3施設で事業を行っているほか、現在2ヶ所で工事を進めており、合計約5メガワットの発電量を有している。
もうひとつは「“地域活性化型”不動産開発事業」だ。文字通り、地域をキーワードに不動産開発をする。最近の大きな事例として、酒田市山居町複合施設整備事業がある。仮設機材工業が土地を取得し、様々な企業と手を組み複合施設を建設した。西村はその事業のことをこう話す。
「酒田市中心部の観光施設山居倉庫周辺の広大な土地が売りに出されると聞いたんです。例えばその土地が県外の業者の手にわたってしまえば、我々ではどうにもできなくなってしまう。地域の貴重な場所の土地が失われてしまうとともに、地元への利益が生まれなくなってしまうと思ったんです。そこで自分たちで土地を取得し、地域ということを念頭において開発を進めました」
西村は「交流人口」を増やしたいと話す。山居倉庫という観光の目玉はあるが、それだけでは人が通りすぎるだけ。地域の活性化にはあまりつながらない。その状況を変えることのできる不動産開発を行っていきたいと話してくれた。現在はほかにも、酒田の中心部にあり空家となっている名家を再開発する計画を進めている。また、西村は酒田市の第3セクター「酒田まちづくり開発株式会社」の代表取締役も努め地域の振興に務めている。酒田まちづくり開発と仮設機材工業は、酒田柳小路屋台村「北前横丁」でコラボをして地域の活性化、魅力の発信などに力を注いでいる。
人が未来を作る
これまで“地域”というキーワードで話をしてきたが、もうひとつ仮設機材工業の大きな魅力は「人」に焦点があたっているところだ。社是は「元気・笑顔・感謝」。これは“社員が”元気で笑顔でいられること、感謝する気持ちを忘れないでほしいという意味だ。そのために会社としても、山形いきいき子育て応援企業や健康経営優良法人に認定されるなど体制を整えている。インタビューをした、セーフティステップ事業部の髙橋孝義、営業部の齋藤陽一、事務部の佐藤怜の3人もそれを感じているようだ。
佐藤は産休、育休を取得し復職した。「いままだ子育て真っ最中ですが、ものすごく子育てをしやすい職場だなと感じています。友人などに聞くと、例えば子どもが熱を出して急に早退したいといったとき、やはりまだまだ言い出しづらい雰囲気があるみたいですが、わたしたちの職場はそれがまったくありません。産休、育休のあとに復職したときも、すんなりと戻れたし、環境はものすごくいいです」
西村に話を聞いたときに出てきた言葉が「おせっかい部長であれと責任者には声をかけている」というものだったのが、セーフティステップ事業部で営業部長を務めている髙橋はそれをどう受け止めているか聞いてみた。
「おせっかい部長ですか(笑)。たしかに、会社にいるあいだだけのつながりという感じにはしたくないと思っています。もちろん、踏み込んでいいところとそうでないところはあると思うので、慎重にではありますが、仕事、プライベートさまざまな話を聞いて、それが悩みであるならば、会社として何かできることはないかと考えるようにしています」
会社を作るのは、社員。その社員が元気で、笑顔でいられること。それが社是にあらわれ、具体的に社内体制にもあらわれている。そして“地域活性化”の話も、常に西村は地域の住民、交流人口といった、“人”というキーワードで話をしてくれた。どのようなまちにしたいか。最後にそう現場で働く3人に聞いてみた。そのときの髙橋の言葉が印象的だった。
「とにかく“人”が来てくれるまちになってほしい。そのために自分たちのできることで力になれたらうれしいです」