ふらっと立ち寄れる憩いの場を提供
古民家カフェわだや 林 千歩ふらっと立ち寄れる憩いの場を提供
古民家カフェわだや 林 千歩「古民家カフェわだや」のオーナー林千歩さん。ここのお店は、町をあげての事業である「空き家再生支援事業」として募集していた古民家物件に千歩さんがオーナーとして手を上げ、町民の方々と力を合わせて約1か月に渡るDIYを経て出来たお店です。 尾花沢市出身の千歩さんは湧き水汲みにハマって訪れた遊佐町に、旦那さんの晶さんと一緒にIターン。大学時代に海外旅行に出たことで、逆に「日本のことをもっと知りたい」と思うようになり、日本各地の民宿やゲストハウスに住み込みで働いていた経験があります。どんな転機があったのでしょうか。また、「古民家カフェわだや」とは・・・?
(北は北海道、南は沖縄、各所で住み込みバイトを経験!農作業などを行った)
庄内に住んでいる人からすると、すっかり古民家カフェわだやの店主像が板についている千歩さんですが、こうしたお店をやりたいと思うようになった思いとは・・・
「沖縄の与那国島の旅館で一人の女将さんと出逢ったのですが、その女将さんは自分の大好きな島のことや、島行事のことを、私に教えてくれました。そんな女将さんの元でアルバイトをしながら過ごしながら、夜には外から来てくれた宿泊者の方と一緒に生活感の溢れたパジャマ姿で飲んだり、人との出逢いを大事にして過ごしていくうちに、こうした宿泊施設をいつか自分でも店舗を持てたらいいなと思うようになりました。」
インタビュー中も終始笑顔が素敵な千歩さん
-遊佐町へ来るようになったきっかけは?
「2015年の6月頃に湧水巡りにハマっていて、遊佐町を訪れました。そのときたまたま入った温浴施設で出逢ったお母さんが親切に町中をあちこち紹介してくれて。そこから遊佐町がよいとこだなと感じるようになりました。」
鳥海山の麓に湧き水がとれる場所がたくさんあると聞いて、千歩さんは遊佐町へ
-ステキなお母さんですね。どんな場所を案内してもらいましたか?
「胴腹の滝や、十六羅漢、丸池様とか、いろいろなところに連れて行って頂きました。途中でお母さんのご自宅に寄って大きなペットボトルをとってきて湧水を汲んだりもして、遊佐町のことが好きなんだなと思いました。」
遊佐町・西浜でキレイな夕陽が見えるお気に入りの場所
「その話を主人にすると、「俺も行きたい!」と2人で再度行くことに。もともと、鳥海山に興味のあった主人にとっては、山もあり海もある、遊佐町は魅力的だったようです。」
一方でそのときに、遊佐町らしいものが食べられる場所がなく、役場の人に聞いても「ないのです。」と言われしまい少し寂しさを感じたという千歩さん。
「空き家再生支援事業」でのDIYをまとめた冊子
遊佐町らしいものが食べられる場所の代わりに、役場の人から教えてもらったのは移住に関する情報。そのときに、鳥海山を舞台に観光振興をミッションとする地域おこし協力隊募集を募集していることを知りました。英語も堪能で、アウトドアにも興味があった晶さんは、応募することを決め、無事に採用されることになりました。
晶さんと一緒に、遊佐町に来た千歩さん。これまでの経験から、農家のお手伝いをしながら、調理師の免許をとるなどいつかお店を持つときのために準備をしていました。そんなときに、町の築70年の古民家が空き家になっており、町としてもここを利活用して、遊佐町の新たな交流場所にしていきたいということで「空き家再生支援事業」で空き家物件のオーナー募集がはじまります。周囲の人からの後押しもあり、応募をしてみると見事決定。
-この「空き家再生支援事業」とはどんなものだったのですか?
「町が空き家再生活用店舗を使って、不動産屋さんや大家さんと連携をとりながら、空き家物件のオーナーの募集を募るもので、公募された空き家のオーナーから希望を聞きながら、一定期間の家賃補助が出るというありがたい事業でした。」
今回、そのリノベーション物件に遊佐町の地域おこし協力隊の方や、地元の大工さん、左官屋さんなどにも関わって頂き、町の方30名とDIYを実施。壁・床・障子の張替や、ペンキ塗りなど1か月半をかけて完成させたのだそう。
-わだやをつくる上でのこだわりを教えてください。
「元々この家自体のつくりは勿論、ここにあるものが立派なので、この家の雰囲気を崩さないようにしようと気を付けました。高価でなくても良いのでちゃんとした作りであるものを取り揃えたいなと。もともと人の手が入ったものの方が、古民家の雰囲気に合いやすいので、古物屋さんに行ったり、家財整理について行ったりして集めたのです。」
店内にある掛け軸もDIYでお世話になった町の表具屋さんが余していた掛け軸を頂いたのだそう。その掛け軸を書いた本人がわだやをたまたま訪れて、それを見てびっくりされたのだとか。
古民家カフェわだや・ゆったりとくつろげる1F大広間
古民家カフェわだやのメニューはこちらの黒板でご確認を
-看板メニューは「おやき」!!ちなみに、なんで「おやき」なんですか?
「遊佐町は、海・川・山・里があって、食材豊富。水もおいしい。こうした旬の町の食材を気軽に楽しめるようなものにしたい。こうした古民家に来てゆったりとしながら、年代関係なく気軽に食べられるもの。手で食べられるもの。食事でもおやつでもいけるもの。持ち帰りできるもの。と、試行錯誤をしていたら、おやきに辿りつきました。」
実家の祖母がおいしいあんこを作っていて、そこからも「おやき」という着想を得たのだそうです。
千歩さんは、最初に遊佐町に訪問したときに 町にこれがあったらいいなと感じたものをこれからも「わだや」を通じて添えていこうと考えています。
現在も、おやきに使うのは、遊佐町の小豆を使った「あんこ」、町のアスパラを使った「アスパラベーコンポテト」のほか、町の事業者「遊佐カレー」さん・「BON!BOUNO」さんとのコラボおやきを提供したりしながら、遊佐町らしさを提供しています。
古民家カフェわだやの看板メニューのおやき
-どんなお客様がお店に来ますか?
「お子さま連れのお母さんや、1人で本を読みに来る人などが来てくれます。また、数十年ぶりに遊佐町に来る方もいてお知り合いの方と再会する場面もありました。」
たまに、小学生が1個200円のおやきを買うために100円玉を握りしめてきてここで宿題をしたりして使ってくれたり、メディアにも取り上げられたことから遊佐町出身の方がここへ来たり、わだやが出来たことを機に十数年振りに遊佐町に来てくれる人もいるそうで、幅広い年代の方がお店に来て頂いているのだそうです。
-どんなところが魅力ですか?
「春には桜が満開で、町の漆曽根から見る桜並木と鳥海山が見える景色は、天気の良い日は気持ちのよい絶景で遊佐の魅力的な場所の1つです。夏は釜磯海岸でとれた大ぶりな牡蠣は口に含むとクリーミーな味が楽しめます。春・夏は湧き水の良い時期でもあるので、湧き水がとれる場所を紹介したりもします。」
遊佐町にある桜回廊という桜の場所を記したパンフレットを店内に置いており、素敵な花見スポットがたくさんあるのだそう。
-実際お店を持たれてプライベートはどう過ごされてますか?
「以前から海沿いに暮らすことに憧れていたのですが、今は海まで徒歩10分のとこに家があるので楽しく暮らしてます。店のことで考えるようなことがあっても、海を見にいったり、たまに散歩をしたり、手仕事をしたり、そうした時間を大事にして過ごしてます。」
遊佐町に来た当初は朝夕旦那さんと散歩をする時間を持ちながら、その心の余裕を持つ時間を大事にしてきたそうでしたが、現在はなかなかそうした時間もとれないことも。それでもお店づくりを行いながら、身近な暮らしから幸せを感じられる時間をとるようにしているのだそうです。
-「わだや」をどんな場所にしていきたいですか?
「ただのんびり過ごせるだけでなく、暮らしの豊かさを感じられる場所にしていきたいです。昨年から草木染めやわら細工、糀を使った味噌づくり、遊佐町の食材を使ったおむすびづくりなどのワークショップをはじめました。『ていねいな暮らし』とまではいかないけれど、ここに来れば地に足が着いた『ちょっとよい暮らし』が感じられる場所にしていきたいです。」
遊佐町を歩いていると、なかなか子連れのお母さんや、年配の方がゆっくりできる場所がないことに気づいたところから、そんな方々が一人でもゆっくりのんびり出来る場所にしたいとはじめたわだや。現在は、そこから暮らしの中にある幸せを感じられるような、ワークショップを昨年行うようになりました。
最後にこちらの質問を聞いてみました。
-「ショウナイターンズ」のキャッチコピーである「庄内でなりたい自分になる」。千歩さんは庄内でなりたい自分になれている実感はありますか?
真剣に考えてくれた千歩さん。その答えとは・・・・
「もともとなりたかった自分は、人間的に良くしてくれることをプライベートで行っていきたくて。アクティブに外に出ながら出逢いを大切にしつつ、ちゃんとした暮らしをして穏やかに過ごしていくことで、良い出逢いをしていきたいと思ってます。そうした意味では、まだなりたい自分にはなれてません。実際、お店でワークショップをしていくことで、同じように興味のある人たちが集まってくれて、良い出逢いを運んできてくれました。そうした人との出逢いをしつつ、刺激をもらえている自分になれたらいいなと思ってます。」
昨年、新たなアルバイトが2人加わり次なる構想が膨らむ古民家カフェわだや。
店内のことをやってくれる仲間が出来たことから、今後は千歩さんがイベントなどに出ることで、活動を広げていきたいと語ってくれました。
名称 | 古民家カフェわだや 林 千歩 |
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首都圏での子育てに課題を感じて、2018年5月に三川町地域おこし協力隊として、山形県・庄内地方にIターン移住。「人生思い出作り」をライフコンセプトとして、「書くこと」「話すこと」「場作り」事業を中心とした「ものかきや」として現在活動中。