田園に建つその場所では、子どもたちが夢中でピッツァを頬張り、大人たちは食べて笑って、一様に自然体だ。緑のイスキアはイタリアの味を正統に伝える「真のナポリピッツァ協会」認定のピッツェリアで、自家菜園イスキアファームを営む農家レストランでもある。

「穂波街道」は庄内のイタリアン×農家レストランの草分けで、ピッツァや前菜、パスタなどに畑の四季がふんだんに盛り込まれる。「料理は母が作った野菜とハーブが主役」と話す庄司建人さんは、ナポリのイスキア島で修業を積んだピッツァヨーロ(職人)。現地イタリアの人々が日々食べている「余計な手を加えず、素材の良さが生きる料理」は自身の食事の原点でもあり、旬素材の持ち味をいかす日伊の食の原風景が、緑のイスキアの料理となった。

真のナポリピッツァには、材料は小麦粉と塩と酵母と水、生地は手のばし、窯の炉床で直焼きなどの伝統的な製法がある。そうした条件はあっても、焼きあがった一枚の完成度は、職人の経験と感覚に頼るところが大きい。450℃で90秒、高温で一気に焼き上げると、ピッツァを縁取る「額縁」はパリッと、内側は適度な水分を保ってもっちりと。その食感のメリハリが、小麦粉からトッピングまですべての素材の味を引き立たせる。これがナポリピッツァの真髄だろう。

店のお客さんの中に「ここに来ると子どもが野菜を食べてくれてうれしい」と話すお母さんがいた。庄司さんは「とれる野菜を大切に、スタッフが笑顔でいること。そんな普通のことを大事にしています」と言う。イタリアのまま、庄内のまま、自然のままに。緑のイスキアでは作る人も食べる人も、素材もすべてが生き生きとしている。