この会社で働いていて40歳になって気づいたことは、「誰と働くか」が最も大事だということです。
「どんなに忙しくても、こうして続けてこられたのは、ひとえに「人」ですね。」
新入社員で入ってから現在まで、ずっと失敗してきたんですよ。でも、その度にまわりの先輩や上司、同僚が支えて来てくれたんです。そうやって育ってきたら、僕も自分に出来る範囲で何が出来ることはないかと探すようになりますよね。「ドンマイ」って先輩たちの声が、自分に対しても「ドンマイ」って思えるようになって、自然と人にも「ドンマイ」って思えるようになるんです。いま起きてしまった失敗よりも、今後どう対処するか、問題が起きないようにどうするかが大事だと教えられてきましたので、チャレンジする気持ちが後押しされてくるのです。
チャレンジの話で言うと、先輩方の想いと視野に感謝しています。僕はもともと体力に自信がなかったので「事務方」、特にホテルの受付業務を希望していたんです。それでも入社からしばらくは宴会サービスの現場で働いていました。その時は「早くお家に帰って寝たい。」などそこまで自分の将来について考えていなかったんです。そこへ先輩方々の勧めで総務へ転属になりました。チャレンジって自分ではできませんよね。でも、先輩方がこの道を開いてくれて僕に合ったキャリアとなったんです。
話は変わりますが、呉市は日本の中でもいち早く少子高齢化している街なんですが、私たちの冠婚葬祭業にもその影響が大きく出ています。特にホテルのお客様の高齢化が進んでいて、今後のホテルの運営方針の課題にもなっています。今の大事な年長者のお客様が求めるサービスと、今後の世代が求めるサービスを同じホテルで提供することが非常に難しいんです。施設の話だと分かりにくいと思いますので、分かりやすい例で言うと、印刷物ですね。文字が大きくないと年長者は読めません。でも、若い方が求める空間とスペースを効果的に見せるようなデザインをする場合、写真とそのイメージに合ったキャッチが必要で、そうすると説明の文章は必然的に小さくなってしまうのです。ホテルの施設のメニューや表示、英語の量や食の種類などがその複数のターゲットに向けたものになると、今度はコストがかかり過ぎます。日本全体でも起きている高齢化社会の問題に向き合っているんです。この会社も今までの良いところは継承した上で、今後もたくさんのチャレンジが必要です。それは全社でも共通の認識で、そんな課題解決を楽しんでいけるような仲間を求め、育てていこうとしています。僕もそんな変化を楽しめるように、働く人が「ドンマイ」って言い合えて、キャリアを積めるように総務の一員として支えられていければと思っています。
Twitterのコミュニティを通して呉とホテルを知ってもらうのも一苦労
「新たな層を発掘する」これが当時の経営企画部に求められた課題でした。呉市の人は誰もが一度は訪れたことがあるホテルではあったのですが、隣の広島市の方には馴染みが薄いホテルだったのがクレイトンベイホテルの実情でした。
新たな層を発掘するきっかけは、Twitter、TikTok、Instagram、FacebookなどのSNSを活用してコミュニティに働きかけることがホテル、延いては呉に人を呼ぶきっかけになるのではと担当者が思ったことです。
単にホテルのイベント情報や料理の画像をアップするのではなく、ホテルが利用者の皆様を歓迎している事と、スタッフがキャストとなり、キャスト自らが出演して商品のPRをしたり、お料理や調理の様子などを紹介することで、他県よりスタッフを目当てにご来館いただく事もあり、スタッフとお客様が一緒に記念撮影をするまでになりました。
また、海軍の街・呉市ということもあり、海軍さんの知恵と工夫、食材の無駄を無くし身体に優しい海軍再現料理には特に力を入れており、海軍時代のレシピをもとに各艦船で食べられていた海軍メニューをホテル内のレストランで提供し、それをSNSで発信する事で遠方より海軍料理を食べにホテルへお越しいただいております。
社内でも活動当初は不安げな顔で見守っていた人もいましたが、そのSNSとニッチなコア層の力を感じていただくことで、その後に取り組んでいく様々な企画と活動に賛同してくれる様になり、今ではSNSの有効活用も社内の方針としてしっかり掲げられています。
「チャンスを支えてもらえること、地道に続ける事を支えること」は私が今後も大切にしたい社風です。
食にこだわる往年のシェフによるクレイトンファーム
呉市狩留賀の山間には「クレイトンファーム」という農園(約600坪)があります。2014年3月から土、肥料を入れ開墾、苗付け・種まきを始め、18品種の野菜を育て、収穫し、ホテルで提供しはじめました。畑の手入れや種まきなどの管理をしているのは、元総料理人の物部義昭さんだという事にも意味があります。先のインタビューでもあるように、「本物」と「チャレンジ」を社風に持つ当社では、料理人達も味と素材にこだわっています。そこで行き着いたのは調理スタッフが仕事の合間をぬって交代で収穫を行う「生きた食の提供でした」。「料理人自身の手で育てた野菜は、お客様にもとっても、料理人にとっても、大事なことだ。」それは自らが収穫したものであることが、より料理を美味しくする第一歩だということだからです。それは愛情のこもったお料理の提供には必須なのです。
「これからの時代だからこそ、「人」によるサービスをと考えています。」と笑顔でお話される杉原会長
コンビニエンスストアが自動販売機で運営できるようになっても、吉野家の決済が券売機になっても、「非日常」と「食」を提供するホテルを求めるニーズには「人によるサービス」が必要だと思っています。「どこまでいっても、レストランで頼んだスープは、人に持ってきていただきたいですよね。」機械が運ぶ外食はあくまでも「餌」であって、非日常を楽しむ「食」は人でないと成立しないのではと思っています。そういうこともあり、「私は社員の方々に人の温もりを感じてほしい想いから、誕生日に贈る社員へのプレゼントと共に直筆メッセージカードを贈ることにこだわっています。社内での繋がりを通して、人の繋がりを大切にすることが、お客様への人によるサービスの提供に繋がっていくのだと考えています」。