御手洗の街並の南向きの明るい通りに面した作業台で肩を並べて時計の修理を行う４代目 松浦敬一さんと息子の光司さん。敬一さんは子どもの頃から自分がお店を継ぐのだと意識しており、祖父 哲次さんに同行した先で言われた言葉が今でも心に残っている。「売りよし、買いよし、世間よしがかなう人が近江商人。お客さんが認める商売でないと長続きせんで」。〝大切な人の形見の時計〟〝父の時計を息子に受け継ぎたい〟と全国からやってくる時計はどれも物語が込められたものばかり。「ただ修理して完成ではなく、ゼンマイ式の使い方など知ってもらい長く大切に使ってほしい」と敬一さん。光司さんは大阪で大学生だった頃からホームページの作成やお客様とのやりとりなど陰ながらサポートをしていたが結婚を機に帰郷。父の仕事を見て修理の腕を磨いていった。「今では時計修理を個人で行うお店は少ないので、修理をこなす父の姿と実際に時計に触れ、技術を学びました」と語る光司さんは、修理の腕だけでなく時計にまつわる話で思い入れを深めてもらうなど〝長く使ってもらう〟精神も受け継いでいる。