海軍さんの料亭 五月荘

海軍さんと共に呉の歴史を歩んだ老舗料亭

初代となる井口清吾さんは、岡山に庄屋の三男坊として生を受ける。子どもの頃はきかん坊で、お寺に預けられた後、江田島市にある当時の海軍兵学校の軍馬の世話係として奉公。この経験が後の五月荘で海軍関係者が利用する大きな足がかりとなった。その後、安芸郡群役場の近くで天秤棒をかついで商売を始め、岩方通店、中通店を経て明治34年に現在の本通2丁目に店舗を構えた。呉鎮守府の兵士の間で「五月(さつき)」の店名から「メイ」の愛称で親しまれた。〝メイでエスをスリー〟これは海軍内で使用されていた隠語で「五月で芸妓を3人呼んでほしい」という意味だ。大正7年頃には5万円で天応大屋橋奥の海岸を埋め立て、天応海水浴場の営業拡大。旅館や娯楽施設、はては最寄り駅まで作ったというから驚きだ。また、2代目の井口秀夫さんの時代には「五月荘広店」があり、3代目の井口秀一さんは小学校6年間を広で過ごしたという。「住み込みの仲居さんがたくさんいて、お抱えの芸妓さんが唄と踊りで宴席やお座敷を華やかに彩って、いつも賑やかでした」と当時を懐かしむ井口さん。館内では今も『日露海戦海図』や『旧海軍大臣嶋田繁太郎 弔辞』など貴重な資料が多数残されている。現在は4代目店主 池田佳幸さんと4代目女将 池田聖子さんが来年創業120年になる歴史を受け継ぎ、老舗料亭の看板を支えている。

店名 海軍さんの料亭 五月荘
住所 広島県呉市本通2-4-10
TEL 0823-21-5121
営業時間 11:30〜14:30、17:00〜22:00
定休日 火曜