
包装資材の供給を通じて地域を支える
マルソーの主軸となる包装資材の販売事業は、創業当初のポリエチレン袋の製造・販売から始まり、現在では食品スーパーや食品工場、農業関連など、幅広い業種の顧客を抱えるまでに成長した。取扱品目も、お惣菜用パック、ポリ袋、物流用パレットやコンテナ、紙製容器など多岐にわたり、「必要な時に、必要なものを、必要な分だけ」届ける柔軟な対応が評価されている。「消耗品という性質上、一度採用いただければ継続的に流れる商材も多い」と語るのは、専務取締役の松井氏。現在、仕入れ先は全国に170社以上、販売先は累計で1400件にのぼる。
地域の小規模事業者から大手スーパーまで、頻度や納品内容は多種多様であるため、配送担当が在庫状況を確認しながら細やかな調整を行っている。「発注はEOS(電子受発注システム)を導入しているお客様もいますが、小規模なお客様だと直接倉庫などを拝見しながらコミュニケーションを取って在庫管理をしています。また、果物用包装資材のように年ごとに出荷量が変動する商材では、需要を見極めるために顧客との対話を大切にしており、業界団体や取引先とのコミュニケーションを通じて情報を集め、適切な数量の納品に努めている。

環境配慮と市場の変化に応える柔軟性
昨今、プラスチック容器から紙製品へのシフトなど、環境への配慮が求められるようになった。マルソーでは、容器業界の展示会や業界団体とのネットワークを通じて、最新情報を積極的に収集。顧客のニーズに合わせて、新素材や代替資材の提案を行っている。
環境対応の方法も多様で、石油の使用量を抑えた紙容器の導入や、使用済みトレーをガス化して再生原料として再利用する仕組みなど、様々な選択肢がある。マルソーは一つの方法にとらわれず、顧客の要望に応じて最適な対応を提案している。
また、使用済み食品トレーの回収・リサイクルにも積極的に取り組んでおり、メーカーと連携して資源循環型社会の実現に貢献している。プラスチックの再資源化や再加工技術など、再利用に向けた様々なアプローチを顧客に紹介している。

再生可能エネルギー事業への転機と挑戦
2013年、東日本大震災の体験を契機に、マルソーは再生可能エネルギー分野への進出を決断する。最初の発電所は、自社の遊休地を活用して設置した250kWの太陽光発電所だった。「震災当時、信号も止まって、当たり前の生活が突然奪われました。エネルギーの大切さを痛感しました」と松井氏は振り返る。
この決断を皮切りに、翌年には500kWの第2太陽光発電所、さらに2018年には2ヵ所の小型風力発電所(各19.8kW)も稼働を開始。現在は、2025年9月の小水力発電所(345kW)の維持管理業務の開始に向けて準備が進んでいる。
発電設備の建設には、許認可取得から資材調達、地元住民との合意形成、資金調達など様々な工程が必要となる。中でも、小水力発電所の開発には5年の歳月をかけて取り組んだ。しかし、資材価格の高騰により採算が合わず結果的に発電所の運営権を他社に譲渡し、小水力発電事業の為に取得した資格を活かして維持管理業務を受託することとなった。

2013年に自社の遊休地に開設した太陽光発電所

2018年に開設した小形風力発電所
主任技術者の育成と未来の事業基盤
この過程で着目したのが「第三種電気主任技術者」の資格だ。これは500kW以上の自家用電気工作物の保守・運用に必要な国家資格で、電気回路や設備管理に関する知識と実務経験が求められる。マルソーでは自社の発電所での業務を通じて実務経験を積む機会を提供し、資格取得を支援している。
「今後は自社のみならず、他社の発電所や大型施設のメンテナンスにも対応できる人材が必要です。電力の固定価格買取制度(FIT)は20年の期限がありますが、東日本大震災後に設置された多くの発電所が2032〜2035年にかけてその期限を迎えます。そのタイミングに向けて、当社が発電所の管理を受託したり、設備の廃棄支援を行ったりすることができるよう準備を進めています」
また、包装資材を納品しているスーパーマーケットや工場といった施設においても、第三種電気主任技術者による定期点検が必要となる場合がある。松井氏は、「包装資材の配送に行った際に、あわせてメンテナンス業務も担うという新しいサービスの形も視野に入れています」と展望を語る。
庄内地域では、第三種電気主任技術者の数が減少傾向にあり、同社が担う社会的役割の重要性も高まっている。
100年企業を見据えた挑戦
現在、同社が掲げるビジョンは「100年続く企業経営」。人口減少や市場の変化が進む中で、包装資材と再生可能エネルギーの両輪で地域と未来に貢献する道を選び続けている。「地道なことの積み重ねが一番大事です。知識はあとからでも身につく。根気強く続けられる人と一緒に、未来をつくっていきたい」
包装とエネルギー。一見異なる二つの事業には、「持続可能な社会を支えたい」という一本の軸が通っている。マルソーはこれからも、その軸をぶらさず、地域とともに歩み続けていく。
