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「山形の未来を切り拓こう」

株式会社モンテディオ山形 / 指定管理事業部スタッフ(メンテナンス、マネジメント)

インタビュー記事

更新日 : 2023年07月11日

モンテディオ山形と聞いて、最初にどんなことを思い浮かべるでしょうか。
今回は、山形県でサッカーチームを運営するモンテディオ山形さんの、サッカーチームとしてではなく、会社としての魅力をご紹介します。固定概念にとらわれない、熱い想いを持った相田健太郎社長と社員の方にお話を聞いてみました。

株式会社モンテディオ山形 事業概要

「山形の未来を切り拓こう」をコーポレートメッセージにし、スポーツチームの運営にとどまらず、地域づくりに積極的に関わる。2019年に相田健太郎氏が代表取締役に就任。相田社長は、2003年にJ2水戸の運営会社に入社後、2007年にプロ野球東北楽天ゴールデンイーグルスを運営する楽天野球団、2017年にはJ1神戸を運営する楽天ヴィッセル神戸で勤務した経験豊富な人物。

現職ではサッカー好き以外の人や企業に向けての戦略をとり、売上をコロナ禍に関わらず2億増とした。ルーティンワークはほとんどなく、新しい提案、ワクワクするような提案をすることで、地域と人を巻き込み、山形を盛り上げることが結果的にスポーツチームを良くするという想いで事業運営している。

 

1.スポーツチームの運営にとどまらない、地域づくり

 

三浦――相田社長、今日はよろしくお願いいたします。今日はいろんなお話をお聞きできればと思っています!

相田社長ーーこちらこそ、よろしくお願いいたします。

三浦――早速なのですが、モンテディオ山形さんは、私もそうだったのですが、サッカーチームのイメージを持っている読者が多いと思うんですね。会社としてはどんなお仕事をしているのでしょうか?

相田社長ーー弊社は、スポンサー営業やチケット/グッズ販売、プロモーションやファンクラブ運営と当日の試合運営などがメインの仕事です。あまり知られていないのですが、サッカーの試合って年間21日しかないんですよ。

三浦ーー ー年間で21日間しかないのですか!?

相田社長ーーそうなんです。1年365日あるうち、約1ヶ月しか働いていないと思われているのが嫌なのですが(笑) 結局21日間の売上を最大化するために何をするか考えるのが私たちの仕事です。そのために残りの日にちがあるようなものなのです。

更に、その一環としてスタジアムのある公園を中心とした山形県内にある公園の指定管理業も行っていますね。

三浦――公園の管理もされているんですか?それはどういう経緯があるのでしょうか?

相田社長ーースタジアムのある公園の指定管理者になることで、自分たちが管理もするし、利用者の一員にもなります。そうするとコストが抑えられるだけでなく、公園を地域のためにどう活用するかを、行政とは違う目線で提案ができるんですよ。複数の公園を管理しているのですが、たとえば学生の部活動での利用など、せっかくある場所を活用してできることをやって、収入につなげていきたいと思っています。

三浦――そうなんですね!事業分野を拡げていこうとされているのですか?

相田社長ーー地域にスポーツチームがある意義は、生活を豊かにすることだと考えています。一緒になって盛り上がれる試合だったり、地域の良いものを外の人に知ってもらったり、他企業とコラボして新しい事業を作ったり……事業分野を拡大したいというよりも、そういう何にでもなれるプラットフォームのような存在でありたいから結果的にそうなっている、という感じでしょうか。

三浦――地域のプラットフォームという考え方は面白いですね。地域に根ざしたスポーツチームというブランドがあるからこそ、できることだと思います。他にどんなことを考えていらっしゃるか教えてください。

相田社長ーー自分たちはサッカーを広めたいわけではありません。スポーツを通した、まちづくりを目指しています。例えば現在構想中の新スタジアムを活用したまちづくりです。山形は公共交通機関があまり発達してないので、2次交通や3次交通に参入できるのであれば、それも一つの会社の事業になります。他にも、若い人たちがおしゃれして出かけられる街をつくることが地域の活性化につながるのであれば、それをやるのもいい。地域が良くなることで、モンテディオ山形というチームもより良くなるという考えで動いています。

三浦ーーサッカー以外にも何でもありなんですね!いろいろチャレンジしたい人には向いている会社ですね!

相田社長ーーそうなんです。思う存分やれる場所はつくれます。ですから、「この事業をやれば絶対利益も出すしやり切りますのでやらせてください」と言ってくれるような人が集まってくる集団でありたいです。

ただ、大前提としてブレてはいけないのが、モンテディオ山形というクラブがあることです。そのクラブ運営をしっかりやりながら他のこともしっかりやっていくということが大事です。

2.コロナ禍でも売上は増加、その理由とは

 

三浦――相田社長が就任されてから売上が2億円ほど増えたとお聞きしました。直近の年商を教えてください。

相田社長ーー2021年にコロナ禍にも関わらず、過去最高となる18.5億円の売上になりました。2022年は20億円を狙っています。

三浦ーーコロナで大打撃と思いきや、過去最高とは、すごいですね!その秘訣を教えてもらえてください!

相田社長ーーそれができる理由は、サッカー好き以外の人や企業にどうやって応援していただくか、理解していただくかを考えたことにあります。いきなり何かを大きく変えるのは難しいですが、今までまだまだマイノリティであるファンのためにやっていたエンターテイメントを、ファン以外の人にも知ってもらい、喜んでいただけるように動き方を変えました。まだ一度もモンテディオを見たことがない方や、サッカーに興味がない方に対してどうしたら知ってもらえるのか、どんな事業をしたら良いのか、自ら考え発信することが重要です。

三浦――なるほど。お話をうかがっていると、かなりクリエイティブな発想というのが求められるのかなと思うのですが、どのように社員に働いてもらっているのでしょうか?

相田社長ーー悩むよりも、前を向いてどのようにしたら実現できるかを考えて動け、と伝えています。失敗してもいいんですよ。どんどん色んなことを試していってくれればと思います。また、他の興行業界の良いサービスを受けることも大事だと思っています。良いサービスを受けて、自分がお客様の立場で満足度の高い経験をすれば、良いサービスを提案することにつながります。

三浦ーーたしかに、いいものを見る、体験するって大事ですよね。そのための制度などはあるのでしょうか?

相田社長ーー会社として社員のアイデアを活性化させるために、体験したいコンテンツに対してお金を負担して体験させるという制度があります。スポーツエンターテインメントはもちろんですが、ディズニーランドでもコンサートでも仕事に役立つならどんどん行ってほしいと思っています(笑)

三浦――それはユニークな制度ですね!うらやましいです……!

 

3.ぶっちぎりの当事者意識で、新しい提案を

 

三浦――常に新しい提案をしていく体制で取り組むなかで、会社としてとくに大事にしていることがあれば教えてください。

相田社長ーー会社の理念は「山形の未来を切り拓こう」です。そして、今年のチームスローガンは「ぶっちぎれ」です。このぶっちぎれというのは、ぶっちぎりの当事者意識を持つという意味です。自分のリミッターを切っていろんなことを考えて、お客さんのところに提案を持っていくという意味の目標です。待っててもお金は入ってこないし、ワクワクするような楽しいことは起きないですよね。

三浦――確かに。そのスローガンを体現するために、何か社内で伝えていることなどはありますか?

相田社長ーー「人を巻き込みなさい」というのは常々言っています。山形の未来のためにも、他企業や人を巻き込める提案が必要です。皆が喜んでお金を出して一緒に作りたいと思うことを提案する。地方のスポーツチームだからといって、世界に通用しないなんてことはありません。海外の企業やスポーツチームとのコラボまで含めて、スケールを大きく考えてほしいです。

三浦ーー近年日本の企業が海外クラブのスポンサーになることもありますよね。山形のクラブでも世界を相手に発信できるのでしょうか?

相田社長ーー今や全世界に向けて営業しようとしたらできる時代です。そういうところまで考えていくと、地方の一サッカークラブだったとしても、考え方次第でチャンスも質も量も変わってくると思っています。そのためには攻めていかないといけません。当然伝統を守るということは大事だと思っています。しかし守っているだけでは縮小しかしません。ストレスが溜まったり、理にかなわないことや非合理的で成長がないなら守らずにやめた方がいいと思っています。
そして代替えになるようなものを常に追い続けている人がいなければ世の中は成立しないので、私たちがそういう会社になるべきだと思っています。

三浦ーー山形を切り拓くためには常に新しいものを追い続けないといけないんですね。最近ですと、NFTとかWEB3とかも話題ですが。

相田社長ーーもちろん概要は把握しているのですが、それと同時にNFTとかWEB3とか、頭がついていかなくなりはじめていると感じます。私はそんな人が上に居続ける会社は楽しくなくなってしまうと思うので私の果てももうすぐかなと思っています(笑)

三浦ーーずっと居続けようとは思わないんですか?

相田社長ーー思わないです。若い人がどんどん出てこなければいけなないですし、そういう人が入ってくる会社にならないとダメだと思います。若い選手たちも休みの日はオンラインで繋がりゲームをしています。おそらくそういったことが次の世代の当たり前になっています。そういった動きがあることによって山形県にとってどんな良いことがあるのだろうとか、リアリティーを持ってワクワクするような提案をしてくれる人がこのクラブのトップであり続けなければいけないと思っています。なので、そろそろかな(笑)

三浦ーーいやいや、まだまだ相田社長のチャレンジをみせてほしいです。(笑)

        社員に対して意識して伝えていることはありますか?

相田社長ーーなんだかんだ俺たちは人気ないぞ。と言っています(笑)
名前は知ってもらっていて、そこはありがたい環境にいますが、実際にスタジアムに来る人が毎回満員かというとそういうわけではありません。まだまだみなさんにとって優先順位が低い団体だと思います。それを上のレベルにあげるためには、言っていることと逆になってしまうかもしれないが、街に出るとかアナログなこともしなければいけないです。
コロナ禍でできないことがいっぱいありましたが、今年3年ぶりに花笠祭りが開催されました。やっぱり良いですよね。街にでて人と話をして、うちわを渡せただけでも泣きそうになったくらい感無量だった。

三浦ーー私も行きましたが、ぎゅうぎゅうに人がいて、これだけの人が待ち望んでいたんだなと思いました!

相田社長ーーそうですよね。そういう意味で花笠祭りはライバルです。花笠祭り以上のものを創り続けないとダメだと思いました。

三浦ーー花笠祭りを見たときに悔しさもありましたか?

相田社長ーーありました。山形にこんなにたくさんの人がいるんだーって毎年思います。私たちも早くそうならなきゃなと思いますし、モンテディオは場所が悪いから…とか言う人がいますがそれは言い訳で、良いものが見たいなら場所は関係ないと思っています。
例えばここに海外の超有名チームが来たらアクセス悪くてもみんな見に来ますよ(笑)。

三浦――そのためにも、一流のサービスを受けて発想力を磨けるようにしている、ということですね。

 

4.自分はこうなりたいと野心がある人に来てほしい

 

三浦――これはいろんな経営者の方に聞いているのですが、いまのお話からモンテディオ山形さんで働いてみたいな、と考えている人もいると思います。相田社長としては、どんな人材にきてほしいと思いますか?

相田社長ーー野心的な人に来てほしいです。僕はこうなりたい、これをやりたいというのが明確な人。会社を踏み台にするくらいで良いし、「どうやったら社長になれますか?」とか言えるくらい気持ちが強い人がいいです。この会社で何年か勤めて、外に出ていくのも、また帰ってくるのも大歓迎です。ルーティンワークが少ないので、自発的に動けることが必要です。
サッカー好きでなくても、全然構いません(笑)             

三浦――ちなみにモンテディオ山形さんの強みは何でしょうか?

 

相田社長ーー最近、人事評価制度を変えて、実績ベースでの評価にしたので、本当に頑張ったら1500万くらいもらえます。山形だからこの給料でいいやという考えが嫌で、山形でも東京と同じレベルでもらえるような仕組みにしたいと思っています。

三浦――自分のやりたいことが明確な人には、活躍できる環境が整っている会社ということですね。ありがとうございました!お話をお聞きできてうれしかったです!

 

5.社員にどんな働き方をしているのか、聞いてみました。

今回の取材では、2人の社員の方にもお話を伺ってきました。現場で働く人たちが実際に何を感じていらっしゃるのか、その声をお聞きください。

 

三浦――原田さん、横山さん、今回は取材を受けてくださり、ありがとうございます。早速なのですが、お二人の部署と業務内容をお聞きしてもよいでしょうか。

原田さんーー原田です。よろしくお願いいたします。運営部で入社5カ月目になります。試合関係の当日を含めた運営と、社会連携の活動の促進と実施を行っています。社会連携の活動では、山形県内35市町村と連携して市町村の広報活動の支援や、子どもたちと選手の交流などを企画しています。今までは若年層との活動が多かったんですが、最近は高齢者施設への訪問なども行っており、この事業も収益化に向けて動いているところです。

横山さんーー営業部で入社12年目の横山です。売上18.5億のうち、約7.7億を営業部が担っています。自分たちがお金を作れば、それだけできることが増えます。チームを強くすることもできるし、イベントやグッズに投資をしたり、街のための事業をしたりもできるので、泥臭い部分もありますがやりがいを感じています。
営業のときに変わっているなと思われるのが、サッカーの話はほとんどしないことです。協賛していただくことがどれだけ相手企業の価値になるのかを理解してもらうようにし、営業資料も担当者の上司や経営者が判断できるような内容にしています。

三浦――ありがとうございます。お二人とも、入社のきっかけは何だったのでしょうか?

原田さんーーもともと30歳になったら山形に戻ってこようと考えていました。それまで、スポーツ関係の仕事をしていたので、モンテディオ山形への入社を決めました。生まれも育ちも山形なので郷土愛はありますが、現状、山形は衰退してきています。この仕事を通して、少しでも地域を活性化できればと思っています。

横山さんーー前職はテレビ関係の仕事をしていて、転職を考えたときにスポーツ関係の仕事を知り、めちゃくちゃ楽しそうと感じたのがきっかけです。誤解を恐れずにいうと、山形という地域が盛り上がるなら、別にサッカーでなくてもなんでもいいと思っています。山形の人口減少が進む中で、モンテディオ山形というコンテンツは、地域を活性化する起爆剤になれる可能性があると思っています。人を巻き込んで地域を盛り上げることに関われたり、勝つことで喜んでもらえたりするのは、とてもやりがいのある仕事なので、応援してくださっている地域の方のためにも、J1昇格するためにはどうしたらいいかを常に考えています。具体的には、サッカーを知らない人も楽しんでいただけるように、グルメを拡充したり、花火を上げたり、ペンライトで演出したり。そうして巻き込む人を増やすことで、ファンを増やし、クラブの価値を向上させ、チームの人件費を上げていく。すると、勝つ確率が上がるという好循環になっていくと思います。

三浦ーー地域の方に応援されているのを感じます。ちなみに、休日はどのように過ごされているのでしょうか?

原田さんーー休日は、出かけるのが好きなので、アウトドアでキャンプをしたり、海を見に行ったりします。おすすめは、遊佐の海です。

横山さんーー休日は基本子どもの面倒を見ています。管理しているプールや公園で遊ぶことも多いです。会社で管理している公園は自転車に乗れるのがありがたい。意外と少ないんですよ。

三浦――相田社長も「公園は本来制限をかけるところなのか?」とおっしゃっていました。どの部署でも既存の概念にとらわれず、クリエイティブな発想が求められていると思うのですが、会社が費用負担して他の興行を視察にいける制度を使ったことはありますか?

横山さんーーGWに家族でサッカーの試合を見に行きました。家族ならではの目線が勉強になりました。さすがに家族分までは負担してもらえないのですが、それでも高速代やガソリン代まで会社が負担してくれるので、ありがたかったです。

原田さんーー入社して日が浅いのでまだ利用したことはないのですが、プロスポーツ、とくにプロ野球をみてみたいです。興行スポーツとして成功しているので、そのサービスを自分が体験して、試合に来てくれるお客様の満足度を上げたいです。

三浦――相田社長は、お二人のような「野心のある人」に来てほしいとも言っていました。社内の雰囲気はいかがですか?

横山さんーーどうありたいか、目標は人ぞれぞれですが、みんなチームを良くしたいとは思っています。前向きな話やアイデアを潰そうという感覚はこの会社にないですね。逆に惰性で仕事している人はすぐわかってしまいます。

原田さんーーチャレンジする姿勢を持っている人が多いです。さらに、モンテディオ山形というチームがあることで会社が一つになっていると感じます。

三浦――なるほど。会社にとっても一つの大きな柱になっているんですね。最近、評価制度を変更したともお聞きしましたが、それについてはいかがでしょうか。

横山さんーー今までは行政のやり方に沿っていました。まだシステムは移行中ですが、評価することがちゃんと可視化されるようになり、評価基準も明確になりました。何もしない人には合わないですが、ポジティブにチャレンジしたい人にとって良い評価制度になったと感じています。

三浦――会社全体で、挑戦やイノベーションを育む環境になっていますね。休日も地域や会社を上手く活用しているとのことで、山形の未来もおもしろくなりそうです。お二人とも、本日はありがとうございました!

6.地域と二人三脚で歩む、モンテディオ山形というチーム

相田社長や社員の方のお話を伺っていて印象的だったのは、スポーツチームの運営のことよりも、地域のために何ができるか、地域を良くすることにどのように自分たちが関わっていけるかという話がほとんどだったことです。J1への昇格をするには10億円の費用が必要ですが、それを実現したいのも、地域の人に喜んでもらいたいという想いが基になっています。これは、外から見ているだけではわからない、モンテディオ山形さんならではの魅力だと感じました。

相田社長が目指している「モンテディオ山形さんはいつも面白い話を持ってきてくれる」と営業先で言われることが増えていく将来が、すでに目に浮かぶような企業です。