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空調設備が生活を守り、生活の質を上げていく。

株式会社ワタナベ冷暖サービス / 株式会社ワタナベ冷暖サービス /空調設備エンジニア

インタビュー記事

更新日 : 2024年12月20日

大型施設から個人住宅まで、幅広い空調設備、給湯器・トイレなどの水回りに関すること、ロードヒーティングなどの融雪設備の設置・メンテナンスを手がけているワタナベ冷暖サービス。 従来の工事に比べて格段のスピードで行われる工事を実現したのは、受け継がれてきた技術力と社内DXへの積極的な取り組みだった。社員が一番大切というワタナベ冷暖サービスはどのような取り組みを行っているのか。

株式会社ワタナベ冷暖サービス 事業概要

1982年に個人商店として開業。2年後の1984年に法人を設立した。そこから40年近く、庄内の空調設備専門の企業として走り続けてきた。取り扱う設備は幅広く、冷暖房設備から換気、給湯などのあらゆる設備に対応している。また、一般家庭の設備から公共施設など大型施設の設備まで幅広く請け負っている。 特徴の一つは、設備設置の工事だけでなく修理そして保守点検まですべてトータルでの作業が可能というところだ。そのため、ワタナベ冷暖サービスを窓口に設置からメンテナンスまですべてワンストップで行えるために工事スピードが格段に早い。  また、以前よりスタートさせた介護用品事業など別分野へのチャレンジも進めている。近年では新たな取り組みとしてエネルギーの転換事業も行っている。単に代理店業務を行うのではなく、主業務である空調設備とのシナジーも生み出すような事業を進めている。

庄内地域の空調設備を専門に扱う

1982年の開業から40年以上、庄内地域の空調設備を専門に行ってきたワタナベ冷暖サービス(以下ワタナベ冷暖)。空調設備の提案、プランニングから工事、メンテナンスまで、すべてを手がける。会社を立ち上げた先代の社長がもともとメーカーに勤めていたこともあり、技術力の高さが評判を呼び大きな工事案件も抱えていた。

「ただ、そのほとんどが下請けの案件で利益率も決して良いとは言えず、会社として成長が止まってしまう状況があったのではないかと考えています」

 そう話すのは現代表取締役社長の渡部晃だ。渡部は学生時代から会社を継ぐことを意識し、大学卒業には愛知県にあるメーカーに就職した。そこでは機械の設計や技術開発を学んだ。東京で働くことも多く、Uターンで庄内に帰ってきたあとも繁忙期などは東京へ出張し働くといったことをしていた。それをきっかけにワタナベ冷暖の東京事業所を開設。もともとメーカーにいたことで培った技術力やノウハウを活かし高い評判を得ていたが、「繁忙期だけ東京に来て仕事をもっていく」などと周囲からの声もあり、東京事業所は撤退を余儀なくされた。

渡部が現職に就任したのは34歳のときだった。「庄内に戻ってきて感じたのは働き方が東京と全く違うというものでした」と渡部は話す。

「東京でやっていたような仕事がなかったんです。東京とは業務用空調は圧倒的に市場の大きさが違うため、受注できるそもそもの件数が少なかったというのがあります」

 また、新築案件となれば取引先はほとんど決まっている状態で入り込むのも難しい。だからほとんどの場合、設備工事はお客様に何かしらトラブルが発生しない限り受注がないのだ。そのうえ渡部が直面したのは下請けによる利益率の低さだった。

「下請けだとどうしても価格競争になってしまうんです。だから会社は儲かりませんよね。そうなれば社員に還元できない。工具はもとより最先端の知識、仕事量など、就業環境もそうですし、給料としても反映できない。そうなればモチベーションも下がるし、仕事の質も下がるのは当たり前です。ここから脱却しない限り会社はダメになっていくと感じていました」

 そこで渡部が開拓したのが家庭用設備の設置、メンテナンスだ。通常業務用を扱っている会社は営業行為をしなくても、川上から仕事が降りてくるため、家庭用に手を広げないことがほとんどだ。しかし、高い技術力を必要とする業務用と比較すると技術的には家庭用の方が工数も少なく、結果的にお客様には安価で工事が提供できる。そして元請けとなるために利益率はぐんと高くなる。ただし家庭用設備に関しては仕事が保証されているわけではないので、営業をしなければならないというリスクもあった。そのために行ったことが「地域をよく知ること」だった。その一つとして地域の家庭向けにアンケートをとった。そのときわかったことが、お客様はハウスメーカーにメンテナンスを頼むとその後の対応に時間がかかってしまうということを理解していること。

多くの場合、空調機器のメーカー保証は10年間。その後にトラブルがあった場合は様々な業者をたらい回しにされてしまい、修理までに大きな時間と労力、そしてお金がかかってしまうのだ。それを消費者は知っている。直接修理できるところに頼んだ方が安いとわかっているのだ。そういった人たちに対して地道にPRをし始めたのだ。そのような営業努力が実り、家庭用の需要も増え、収益率が大幅に改善した。

ほかにはないスピードを実現

この「たらい回し」を解消したのは技術力だった。ある暖房器具が壊れたとする。そこで家を建てた時のハウスメーカーに連絡。すると、ハウスメーカーは器具メーカーに連絡することになる。そこからようやく修理事業者に連絡が行き工事が始まる。と思いきや、足りない部品をメーカーに問い合わせ…と、ひとつの工事に数社が関係してきて、修理まで早くても一週間ほどかかってしまうことが多い。

「しかし、お客様は困って連絡をしてきているわけです。例えばお湯が出ないとなればお風呂も入れませんし、すぐに直してもらいたいはずです。それが一週間も続くとなれば大変です」

 そう話すのは今回インタビューしたうちの一人、石川雄平だ。石川はメンテナンス課に所属し、現場で工事を行うのでお客様と顔を合わせることが多いため、お客様が困っている姿も直ったときの安心した顔も直接見ることになる。だからこそ「早く直してあげたい」という気持ちがより強く湧いてくる。ワタナベ冷暖は設置からメンテナンスまで一貫して提供する技術力を持っているので、たらい回しという煩わしさを解消し、大幅なスピードアップを図ることができているのだ。

「とはいえ、スピードアップを意識しても部品などの納期といったことはどうしようもない部分はあります。そういったときは、お客様の不便をできるだけ軽減できるように応急処置をするようにしています」と言う。

 また住環境システムグループで設備プランナーとして活躍する山口陽平も同じことを言う。「私は現在プランナーとして、お客様とお話をすることが多いのですが、修理依頼の連絡を一番に受ける仕事でもあります。お客様の生活があるため、とにかくいち早く解決することが重要。そのためにお客様の状況理解をする。例えば電話口でお話しを聞いて、●●を押してみてください、など簡単なことで直ることもあります。それでダメなら工事ということになるのですが、まずは電話で話を細かく聞いて現場の対応を早めるように務めています」と話してくれた。

 また、社内DXをいち早く進めたこともスピードアップに一躍を買っている。例えば作業員のスケジュール管理。誰がどこに行く予定で、いつ終わるか、それを全作業員が共有できるアプリを導入したことで、すぐに配置ができるようになりお客様に正確に時間を伝えられるようになった。そのほか、現場の状況をオンタイムで更新することにより、今の現場が終わったのか、続いているのか、続いているならどれぐらいで終わりそうかといった状況が把握でき、計画が立てやすくなったという。また、現場担当の石川は、状況を共有できることで引き継ぎがスムーズになったとも話してくれた。



「社員が一番」という言葉の意味

スピードアップに効果を発揮した社内DXだが、「今後は仕事の質の向上にもつなげたい」と山口は話す。

「今後取り組みたいと考えているのは知識の共有化です。工事はその場その場で様々で、ひとつのルートで必ず直るというものではありません。そのため、経験というのも重要になるのですが、それが属人化されてしまってはもったいない。そういう経験知も含めた知識を社員で共有できるようなものを作りたいと考えています」

 それに「後進の育成というか作業員のレベルアップは図っていきたいです」と石川は答える。「いまの知識の共有化にも通じるかと思いますが、資格を取ることも含めて技術を高めていくことでお客様に還元できることが増えてくるので、あの人じゃないと、みたいなことではなく、作業員みんなのレベルが上がっていけばと思っています」

「私はまさにそれを受ける立場ですね」

 そう話すのは入社2年目の佐藤廉。佐藤の前職は金融機関での渉外担当。まるで違う畑に飛び込んだ理由は、人の手でやれる仕事を身につけたいと思ったからだという。

「金融機関は今後より自動化が進み、専門の人が必要なくなっていくのではないかという不安がありました。それに対していまの仕事は現場それぞれで違うことが起きるので、必ず人の知識、人の手が必要になる。言ってみれば、手に職をつけたいなと思い転職を決めました」という。

 最初は戸惑うことも多く苦労したというが、徐々に慣れてきていまは覚えること自体が楽しいと話してくれた。「資格はいま徐々に取らせてもらっている段階です。実務経験の必要なものも多く、数年かかるものもあるので、徐々にという感じです」とこれからの意気込みを話してくれた。ワタナベ冷暖では「責任工事」という言葉を掲げ、資格取得をはじめとした、知識、技術の向上に積極的に取り組んでいる。それが質の高い工事を実現し、現在では従来仕事のオファーのなかった大手企業やエンジニアリング企業からも声がかかるようになった。

それの元となっているのが「社員が一番」という言葉だ。これは社長の渡部がメーカーの友人に紹介してもらったある会社の社長の言葉だ。

「その会社は機器のオプションを販売する会社なんです。しかし実はグループ会社がたくさんあって、設計や電気工事、電力事業、WEBデザインなどトータルで事業を展開している会社だったのです。その社長の考え方が『社員が一番』というものでした。社員一人一人が当事者意識を持って働くことが大事。そのためには社員に任せること。そうして社員は責任感を持つのだというのです。そしてそうすることでお客様に対して良いサービスが提供できるようになるというのです。すごく根本的なことだと思い、私もそれを心に持って会社の環境を整備していこうと考えました」

 責任工事のための技術力向上というのもその一環と捉えることができるだろう。また、具体的にも工具を新調したり、社用車を社員に好きなように選ばせるなどということもしている。そういう細かいことモチベーションに繋がるのだという。

「実際社員が面白がってくれています。社員のみんなが気分よく仕事をしてくれれば、お客様にも笑顔で接してもらえるはずです。実際にそういう声ももらっているし、社員の働きぶりはとてもよくなったと感じています」

 社員を大切にすることで、お客様に還元する。お客様に還元するというのはつまり生活の質を上げるということにつながる。現在、ワタナベ冷暖は空調設備だけにとどまらず、例えば介護用品事業も行っている。またエネルギー関連という新規事業にも取り組み、そこに主業務の空調設備を組み合わせることでシナジーを生み、よりオリジナリティのある仕事を創り出し、より質の高い生活を創り出しているのだ。