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現場を知り、声を聞くことが最適なソリューションを導き出す

株式会社ホリ・コーポレーション / 通信販売担当

インタビュー記事

更新日 : 2024年01月12日

1975年に設立され、すでに40年以上の歴史を持つタイヤ・ホイール販売を行う企業。その歴史のなかのターニングポイントは大きくふたつ。ひとつは「タイヤ1番」というインターネット通販店を開店させたこと。ひとつは、社内でシステム開発を行い受発注業務や発送作業を効率化したこと。今回はまさにその現場にいる、EC事業部から部長の堀亘、システム課の佐藤洋介、お客様対応などの窓口業務を中心に行う松浦聡美の3人に来てもらい、そのふたつのターニングポイントで何がどう変わったのかを聞いた。

株式会社ホリ・コーポレーション 事業概要

1975年設立。国内、海外のメーカーを問わず、タイヤ、ホイール関連商品を取り扱う企業。実店舗として酒田市の「ホリタイヤ酒田店」のほか、インターネット販売店「タイヤ1番」を展開する。ホリタイヤ酒田店は2018年にリニューアルオープンし、県内最大級のホイール在庫量、展示量となった。その豊富な在庫量のなかから、他では見られない高級鍛造品までを実際に手に取り選ぶことができる。インターネット販売店「タイヤ1番」は、楽天市場を中心に、Yahoo!ショッピング、Amazonなどの大手ショッピングモールで多店舗展開をする。その立ち上げは2000年。正式に楽天市場に店舗として出店するのは2004年だが、タイヤ販売をインターネットで行うというのは当時としてはほとんど存在しない中での出店だった。この形態が評判を呼び「タイヤ1番」は急成長を遂げる。受注、発送などの業務量が増加し、受注をストップする状態にもなってしまったが、現在は自社でシステム開発を行い生産性向上の実現、社員負担の軽減と業務拡大に成功した。今後も受発注システム開発に加え、発送作業のオートメーション化などを積極的に進めていく。将来的にはタイヤ通販では実現できていない「今日注文したら明日届く通販サイト」を目指したいという。

タイヤネット通販の誕生

ホリ・コーポレーションは、国内メーカーから輸入メーカーまで幅広くタイヤ、ホイール関連商品を取り扱っている企業。実店舗「ホリタイヤ酒田店」での販売のほか、インターネット通販サイト「タイヤ1番」を展開している。“タイヤ販売”というと、冬用のタイヤに交換してもらうためにガソリンスタンドに行く、多くの人がそんなイメージを抱いているかもしれない。だからこそ、インターネット通販店「タイヤ1番」を設立したのは画期的なことだった。しかもプロジェクト立ち上げの2000年は、まだ日本ではネット通販すら浸透していない時期だったのだ。

立ち上げの中心となったのは代表取締役社長を務める堀直之。そのきっかけは「遊園地のチケットをネットで買った」ことだったという。高校入学から合計7年間、アメリカに留学していた自身の経験から、日本のインターネット環境とそこに付随するビジネスに、遅れと可能性を感じていた時のことだった。インターネットの可能性を感じていた堀は、その年に売れ残ったスタッドレスタイヤをYahoo!オークションに出品してみた。“試しに”と堀は言っていたが、見事にタイヤは完売。そこから本格的にインターネット販売店の設立に乗り出した。そして2004年に楽天市場に正式出店。2005年から2006年の冬、平成18年豪雪とも呼ばれる大雪が降ったこともあり急激な成長を見せた。

タイヤのネット通販というチャレンジ

堀直之とともに、インターネット通販プロジェクトを初期から支えてきたのが、弟でもある現EC事業部部長の堀亘だ。「タイヤ1番」のプロジェクトスタートは2000年ごろ。1999年に「Yahoo!ショッピング」と「Yahoo!オークション」がオープンしたばかりで、ネット通販という意識自体がまだまだ低い時代だ。その頃にネット通販店、しかもタイヤという取り扱い品目でチャレンジすることをどう受け止めていたのだろうか。

「私は入社当初、実店舗のピットクルーとして働いていました。その経験から“ネットでタイヤを買う”という行為のハードルは様々想像していました。最初の反応はどちらかといえば反対でした。ただ、可能性はあると感じました。当時は雑誌での通販ぐらいしかなかったですからね。画期的なアイデアだと。だからハードルをどう超えるかということだけに集中することができました」

そのハードルというのをふたつ話してくれた。ひとつは“買いやすさ”。実店舗の場合は、専門のクルーもいて様々なことを教えてくれる。それをネット上でどう表現するかに苦心した。試行錯誤の末、夏タイヤ、冬タイヤという大きな枠組みから丁寧に検索できる仕組みを作り、車に詳しくない一般の客も使いやすいページを作った。

もうひとつはタイヤの取り付けという問題だ。タイヤを交換する際、自分で取り付ける人は少なく、多くの人はガソリンスタンドなどで取り付けてもらうという。となれば、ネットでタイヤを買っても取り付けられないじゃないか、という声も出てくる。そこで、「タイヤ1番」では取り付け協力店と提携して取り付けまでをしてくれるというシステムを用意した。サイト上では、自宅から近いなど便利な店舗を検索できるシステムを導入した。

これらの施策が高い評価を得て、2007年に楽天市場の「ショップ・オブ・ザ・イヤー (車用品・バイク用品ジャンル賞)」に選ばれたほか、ヤフーショッピングなどでも多くの賞を受賞している。

成功のあとの課題

その後も売上は順調に伸び成長を見せていったという。それに伴い重くのしかかっていったのが受注から発送までの現場作業だった。「繁忙期には実店舗を閉めて、手伝いをしてもらうということもありました。それでもさばけない分はお断りするという状況も……」と堀亘が話すように、ネット通販での受注数はどんどん上がっていくが、それに対応するだけの体制が整っていなかったのだ。タイヤを受注する。サイズ、メーカーなど細かな情報を間違いないように、倉庫にあるタイヤを“目”で確認する。そうして送り状を発行する。それを梱包する。その作業を、特に冬の繁忙期は社員総出でやっていたという。

「ずっと頭を悩ませ試行錯誤はしていたのですが……。目の前の作業もあり、繁忙期が終わって改善のための会議、施策、さまざまな事を実施しましたがなかなかうまくいきませんでした。昔ながらのといってしまえばそうですが、そんなやり方が続いていました」

そんな状況の中で出会ったのが現在EC事業部のシステム課で開発を行っている佐藤洋介だった。堀亘と佐藤洋介は同級生であり、同窓会でお互いに話をしたのだという。佐藤は北海道の大学を卒業後、東京でシステムエンジニアとして活躍。堀亘から声をかけられたときは、地元に帰ろうかと考えていた時期だったという。

「もともといつかは地元に帰ろうと思ってもいました。SEという職種でずっと働いてきたので、例えばリモートでも仕事ができるのではないかという考えもありました。そんななか、堀から声をかけられたんです。びっくりしましたよ(笑)」

運命的と言えばそうかもしれない。しかも佐藤がSEとしてそれまで活躍していた分野とホリ・コーポレーションが望むシステムが近いものだったのも運命的だった。

2016年に佐藤が入社。最初に手がけたのが、タイヤのバーコードと受注、送り状の関連付けだった。EC窓口で、タイヤサイズやメーカー、送付先などの受注情報をデータに入力する。そのあとタイヤのバーコードを読み取ることで、即時送り状が発行されるというシステムだった。それまでは受注情報を見ながら倉庫でタイヤをクルーが探していた。正しいタイヤを探して確認、そこで送り状を貼る。この作業がもっとも神経を使うと同時に多大な時間も要していた。しかしこのシステムの開発、導入により、どのタイヤでもバーコードを読み取るだけで、受注情報と送り状をその場で確認、発行できるようになった。これにより劇的に業務効率は向上したという。

「タイヤを目で確認するという作業が一番のネックだったんです。このアナログな作業は時間がものすごくかかるのと誤発送のリスクがどうしても高くなってしまうんです。それを一気に解消でき、作業生産性が驚くほど向上しました。誤発送の発生率もほぼ0%に近くなった。おかげで残業もかなり減少させることができて現場からも感謝の声があがってきました」と堀亘は話してくれた。

「それでもまだまだ改善の余地はあります。タイヤ、パーツ、ホイール、それぞれの連動化がまだできていないので一元管理をしたい。それでさらにスムーズになるはずです。ただし、なかなか大変な作業なんですよ。でも目標は“冬でも定時に帰る”ですから」と笑いながら話す佐藤は、意欲満々のようにも見えた。

システム導入による業務改善が新たなサイクルを生む

ホリ・コーポレーションではタイヤやホイールの発送作業における梱包作業もオートメーション化を進めている。そうして可能な部分をシステム化していくことで生産性を向上し、さらなる成長を目指す。「だからこそ」と堀亘は言う。

「だからこそ、対お客様との接点は今まで以上に磨いていきたいと思います。業務改善によりそれができる状況が生まれたとも言えますね。これまで同様、より使いやすいサイトを目指す。そしてお客様のほしい商品を見極めて在庫を切らさないようにして即時対応できるようにする。お問い合わせなどに対するリアクションなど磨くべきところはいくらでもあります。そのための勉強会も行っています」

「タイヤ1番」はあくまでも“販売店”。お客様に来ていただき、買っていただく場所。その最初の想いへ立ち返ることができるのも、システム開発による生産性アップがあってこそだ。ECの窓口業務を中心に行っている松浦聡美もこう話す。松浦は高校卒業後に東京で就職し、2018年にUターンで就職。東京では、ブライダルカメラマンの仕事を通して、人対人の仕事に向き合い続けてきた。人でしかできない仕事は人で極めていくのがホリ・コーポレーションの方針である。

「会社としても業務改善による生産性向上は常に考えてくれているので、私たち現場の人間が『ここをもっとこんなふうにできないだろうか』ということを言いやすい環境だと感じています。私も自ら仕事をしていて気づいたことはその都度要望を出すようにしています。他の現場でもその雰囲気は変わりません。あとは佐藤の人柄もありますけどね。気軽に言いやすいというか(笑)」

「こっちに来るんだよね。とはいえ、感謝の言葉もくれるのでやっぱりうれしいんですよ」とまた佐藤は笑っていたが、その雰囲気はたしかに相談しやすいと感じるものだった。松浦は堀亘の言うところの“対お客様との接点”に立つ人物だ。「商品知識はまだまだ足りていないと感じることもある。さらに新たな知識をもってお客様とのコミュニケーションにあたりたい」と言っていた。システムで出来ることと、人で出来ること、ホリ・コーポレーションはどちらも極めていく会社であると言えるだろう。

 “我慢”というのは、ときに美徳のように語られるが、問題を乗り越える方法は別にあるかもしれない。「この方法でいいのかな」というのを忘れないで、常に現場から声をあげるようにする。そう堀直之は言っていた。その声を会社、社員で聞き、よりよい方法を導き出す。そしてそれがさらなる発展への思考を生み出す。そんなサイクルが組みあがっている現場だった。