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安全と安心、そして創造性を届ける建設コンサルタントという仕事

株式会社庄内測量設計舎 / 用地補償職

インタビュー記事

更新日 : 2024年12月09日

土木、建築問わず、その安全性、利便性といったものを測量や地質調査などを基にして工事以前に提案するのが建設コンサルタントだ。地域の発展に大きく関わるこの業務を長年続け、その技術力を高く評価されているのが、今回話を聞いた庄内測量設計舎だ。地域の発展が目に見える時代ではなくなった現在、建設コンサルタントという仕事をどのように捉え、これからの庄内にどのように活かしていくのか。今回は代表取締役の富樫仁に事業内容、未来展望などを聞くとともに、現場で働く三人(技術部副部長・伊藤信生、技術部環境地質課・斎藤洋爽、総務部総務課・須田ちあき)に仕事のやりがいやこれからチャレンジしていきたいことなどを話してもらった。

株式会社庄内測量設計舎 事業概要

創業は昭和41年(1966年)。半世紀以上にわたり、確かな技術力のもと庄内地域の建設コンサルタントを務めてきた企業だ。技術力の継承はもとより、最新型ドローンによる測量などさまざまな最先端技術も取り入れて地域の発展に寄与している。 測量、計画設計、地質調査、補償調査、環境調査といった事業範囲で、建設物の安全性、利便性を支えている。そのほか、山形大学農学部と共同で新しいタイプの魚道(従来のものとは違い魚の行動範囲を広げ自然の営みを助ける魚道)を開発するなど新技術へも高い意識を持っている。また、環境への関心も高い。地質調査や動植物などの生態系を調査する環境調査も実施し、地域にあった環境づくりにも配慮しながらコンサルティングを行っている。

地域の安全、安心を請け負う仕事

庄内測量設計舎の創業は昭和41年(1966年)、日本が経済成長を続ける真っ只中のことだ。「市役所などの公的機関による道路工事はそれまで自らコンサルをやっていました。でも私たちの創業のころ、コンサルの部分を外注するようになりました」そう話すのは代表取締役の富樫仁。

「実際の工事が地域住民の安全や利便性に寄与するのは当然ですが、私たちの行う建設コンサルというのも大きくその部分に関係します。私たちは利用者の安全を請け負う仕事なのです。そのため最も大切にしているのが技術力。会社である以上利益はもちろん重要な部分ですが、それ以上に重要なのが、確かな技術力のもと信頼してもらえる仕事を最優先するということです」

地域住民、施主から信頼される仕事をするという信条は創業当時から受け継がれているという。大手企業も含め、数ある建設コンサルタントのなかで庄内測量設計舎が半世紀以上事業を続けてこられた要因の大きなものはここにある。技術力の向上と保証を担保するため、日本品質保証機構(JQA)によるISO品質管理を稼働させている。この基準をクリアするには、一朝一夕の努力だけでは無理。社員一同、安全を守るための技術力、品質向上という同じ意識を持っていないとクリアできないという。そのほか、建設コンサルタンツ協会(庄内地域ではここのみ入会)をはじめ、さまざまな協会、委員会に所属し、最先端の技術に触れて最新型のドローンでの測量を取り入れるなど技術の向上を目指している。

ただし、副部長という管理職でありながら、業務担当者として現場に出ることも多い伊藤信生は「現在はひとりの人間が、河川、橋梁、農業土木といった様々な業務を担当している状況です。幅広い業務に対応できることは地域の建設コンサルタントとして重要なことですが、いくつかの深い技術力が無いとこれからは難しい。だから、幅広い知識を持ちながらもエキスパートをつくる形での技術力の向上が重要」とも話す。最先端の技術を共有しながら、エキスパートも育てていくという体制を模索している。

地域のお医者さんとして

庄内測量設計舎が大手建設コンサルタントと競合し活躍し続けることができるもうひとつの要因は、地域というキーワードだ。富樫はこう話す。

「山形庄内はご存知の通り、農地の多い地域です。そのなかでの仕事、つまり農地設計というものは、農家さんとの打ち合わせがすごく多くなるわけです。ほかの地域に比べて時間効率が悪くなってしまう。そのため大手は敬遠しがちとなりますね。地元に密着した会社でないとできない仕事なのです」

また県外で同業を経験し、Uターンで庄内に戻ってきた技術部の伊藤も仕事のやりがいとして「以前は、遠方の仕事が多かったですね。言ってみれば知らない土地、というか。しかしいまは地域の仕事ができる。その意味でこの仕事を選んだ部分はありますね」と話していた。

秋田大学で地質学の勉強をしていた技術部・環境地質課の斎藤洋爽も地域というキーワードが入社のきっかけのひとつだった。

「秋田大学で4年生のときに『庄内地域に関する地質の研究』というものをしていました。山岳部にも所属していて、地元庄内の地質というものに興味があったんです。それを活かせる仕事はないかなと探していたなかで現在の仕事に。いまは、ボーリング調査をして、耐震などの数字をクリアできるかといった仕事をしています」

庄内地域で50年以上仕事を続けてきたからこその信頼関係もある。地域と密着し、地域コンサルとしての地位を作り“街のお医者さん”といった存在になっていきたいと富樫は話す。

地域、庄内測量設計舎、わたしたちのこれから

高度経済成長期のように道路、橋などの社会資本を新しく整備するという時期は終わった。もちろんこれからも新たな建設工事がなくなることはないが、それよりも補修などの工事が増えてくる。そういったなかで、庄内測量設計舎はどのような方向を目指していくのか聞いてみた。庄内の未来については悩んでいるとしながらも、富樫はこう話す。

「まずは国土の強靭化。庄内地域に限ったことではありませんが、やはり日本は災害の多い国。その災害への対策を考慮しながら、道路や橋などの補修や長寿命化を考えていかなくてはいけない。そのためにはさらに技術レベルの向上が必要とされるわけです。そこを開発していかなくては未来はないと思います。そのほかに例えば、イオンのような大型施設の開発計画にも参加しています。そうなるとまた道路などのいわゆる社会資本とは違った形で都市計画に参加できるということ。そういったところにもチャレンジしていきたいと考えています」

また、日本の技術と経験を活かして海外進出も視野に入れているという。とくに庄内の農地での経験をいかし、現在日本貿易振興機構(JETRO)とともに中国へ灌漑施設の建設を提案しているということだ。

これから、というキーワードで社員に話を聞くとやはり“技術力”という言葉で話をしてくれた。

管理職としての立場もある伊藤は「業界自体が縮小傾向にある。だからこそ後輩をきちんと育てたいと思っています。より深い技術を持って仕事をしていくことで未来へも信頼が得られる仕事ができると考えています」と話す。

環境地質課の斎藤は「現在の仕事を深めていくのはもちろんですが、それを広げていく形で設計など新たな分野にも挑戦していきたい。現場はもちろん、資格取得も含めてさまざまな勉強をしたいと考えています」と話す。総務部の須田ちあきによれば会社としてのバックアップ体制は強いという。「そういった資格取得、技術力向上のためのバックアップ体制はあります。研修会などへも積極的に参加してもらっていますし、講師を招いての技術研修もあります」

地域住民の生活を大きく左右する道路、橋、施設。建設コンサルタントという仕事はその安全性や利便性を担保するもの。これからの地域の街づくりをする中心にある仕事でもあるのだ。