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転換点にある建設業。変わるシゴト。変わる働き方。これからの建設業を考える。

大井建設株式会社 / 建設技能員または建設機械運転手

インタビュー記事

更新日 : 2024年04月04日

「いまは建設業にとって、大きな転換点」というのは、大井建設株式会社専務取締役の大井慎一郎。昭和2年(1927年)に創業し90年以上の間、酒田の街づくりに貢献してきた会社が見つめる、庄内のいまとこれから。専務取締役の大井とともに、土木の現場で働く渋谷泰典と女性として唯一建築現場で働く土門ひかるに話を聞いた。

大井建設株式会社 事業概要

昭和2年(1927年)に大井組として創業。大井建設工務店を経て、昭和32年(1957年)に大井建設株式会社を設立した。前身の大井組から数えると90年以上、酒田の地で街づくりに貢献してきた建設会社だ。創業当時は護岸工事などで使用する石材や木材などの運搬業務を主としていたが、戦後の昭和20年代後半ごろから、河川改修工事を請け負うなどの土木工事を手がけるようになった。当時の最新技術を取り入れその技術力は高く評価された。その後も、建築工事、舗装工事に参入し、大型機械をいち早く導入するなど、技術力と品質の向上に務めてきた。90年の歴史のなかで培ってきた技術と向上精神は現在も受け継がれている。 道路や河川などの土木工事が現在も主となる事業だが、そのほか公共施設や商業施設の大型建築や住宅、リフォームの個人住宅工事も多く手がける。先人たちの知恵と最新技術を融合させ、時代とともに移り変わる人の生活様式に沿った工事が高い評価を受けている。

変わらないものと変わるもの

90年以上、酒田の地で建設業を営んできた大井建設株式会社。「建設業というひとつのことをコツコツと続けてきた。建設業が厳しい時代も乗り越えてきた。難しい工事も何度も乗り越えてきた。そういう自信は会社として持っています」。専務取締役の大井慎一郎はこう話す。創業は昭和2年なので、その長い歴史の中には戦争があり、経済復興があり、震災があり、さまざまなことがあった。その間、街づくりを通し酒田の街の変化を見てきた。建設会社としてその変化をどう捉えているか。 「誰しもが感じていることだと思いますが、いまは時代的に大きな転換点。私は建設業という業種にとっても同じだと思っています。社会、経済の変化、そしてそれに伴う人々の生活様式の変容。そういったものが、建設業という業種のあり方も変えてきていると思います」

変化のひとつは主要事業の変容。大井建設は創業から河川や道路工事など、いわゆる社会資本の整備に参加してきた。酒田の街が発展する過程をそのままなぞるように土木工事を行ってきたともいえる。ただし現在は発展は別のステージに移り、新規の工事に加え、メンテナンス・修繕の工事が増えてきているという。また会社の主要事業として建築工事需要も増えてきたと話す。「地域に根ざした豊かな日々」を過ごせる快適空間を目指すというのが会社のキーワードで、自然に囲まれた環境や地域文化と調和した施設づくり、住宅づくりを考えている。これも大都市をよしとし、社会の発展だけを目指してきた時代とは大きく変わったところだ。

変わる働き方

次の変化は、会社に求められているもの。さきほど難しい工事も乗り越えてきたという大井の言葉を引用したが、大井建設は早くから最新技術を取り入れ技術力を磨いてきた。もちろんそれは現在も受け継がれているのだが、いま求められているのは「技術力だけでないサービス」だという。
「いわば提案力というものでしょうか。これまで会社の先輩たちから続いて品質のよいモノづくりをしてきたという自信はあります。技術力がひとつの武器だと考えていますが、いまそれとともに求められているのが、提案力です。弊社では、技術系の人間も営業を行っています。お客様、現場で施工する方々等、いっしょにモノを作る人たちとじっくりと話し合い、弊社からよりいいものを提案していく。そういう提案営業をしております。技術に裏付けされた営業、それが求められていると感じています。そのための社内教育も意識しています。また若手の研修会への積極的な参加など、技術力、提案力の底上げへの投資は常に考えています」

最後の変化は働き方だ。これまでの建設業は日々忙しく、作業日程を正常にこなすため休日も多くなかった。だが働き方改革が進むなかで建設業も変化している。現在大井建設は完全週休二日制への過渡期にある。工事日程などの業務の特質上、完全移行はこれからになるということだが、設備投資も含めて多くの業務を見直して作業の効率化を進め、社員の負担を減らす努力をしているところだ。インタビューを行った土木部の渋谷泰典も「いまは土曜休みもきちんとあって、自分の時間が取れることがひとつのモチベーションにもなっています」と言う。

社員として働く人間の“これから”

会社、建設業としてのこれまでとこれからの話から、次は現場で仕事をする土木部の渋谷と建築部の土門ひかるのふたりに、個人としてのこれまでとこれからを聞いた。渋谷は東京で建設業に就いたあと、Uターンで庄内に戻り大井建設に入社した。

渋谷:東京での仕事は就業環境が悪く、結局退職することにしました。月曜日から土曜日までめいっぱい、パツパツで仕事をするというような状態でした。日曜出社もあったし、そんな状態なのでもし日曜日が休みだとしてもだらだらと休むだけ。それが退職の大きな理由でした。東京という場所、空間はとても好きで楽しかったのですが、やはり自分の時間がとれないと……。いまは会社の方針もあって、自分の時間がとれ、趣味の運動、音楽を楽しんでいます。Uターンにあたっては仕事があるかという不安とともに、地元の輪のなかに入れるかという不安もあった。すでにできている輪の中に入るのは大変かもしれないなぁと思っていたんですが、それは思い過ごしでしたね。すぐに入っていけました(笑)

土門:私は新卒で当社に就職しました。地元に残りたかったというのもあったし、休みもほかの会社と比べて多かったというのもありますね。

渋谷:働き方の変化という意味では、土門のように女性も現場で働くというのも変化かもしれません。

土門:女性で現場に出ているのは私ひとりだけです。でもあまりそれを意識したことはないですけど。学校では建築科で設計の勉強もしていました。でもそのときに自分には設計は合わないなと。それよりも建築の現場に出たいと思うようになりました。いまは化学工場の建築現場に出ていますが、毎日同じ仕事というものがないんです。それが本当に楽しいです。

渋谷:私は土木部に所属していて、日本海沿岸東北自動車道などの土木工事を担当しています。でも顧客の顔がはっきる見える建築の仕事もやってみたいなと思いますね。持っている資格としては、土木施工管理技士は1級ですが、建築施工管理技士は2級なので、さらに現在の資格よりも上級のものを取得したいと思っています。働きながら、資格取得の学校に学費の補助を出してくれて行かせてもらえたり、会社として資格取得の支援はしてくれます。

土門:私はこれからやってみたいことは、異文化交流。インターンシップのときに、ウイスキー工場の現場に出ていたんですが、そのときに外国人の方が多かったんですね。そういう交流がすごく楽しかったので、異文化の方といっしょにモノを作るという現場に出たいなと思っています。

時代とともに大きな転換点にある建設業。社会情勢が変わること、地域が変わること、個人の価値観が変わること。そういった変化に対応してモノを作る。そして事業内容だけでなく働き方も変わる。そこで働く社員のことも含めた変化の過渡期にある建設業。より明るい“これから”を創りだすための変化といえるのではないだろうか。