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業界の未来を変える。ディーラーという言葉にとらわれずバイクの次代を創る

BeSTAR株式会社 / メカニック

インタビュー記事

更新日 : 2024年07月04日

颯爽とバイクにまたがり風を切るように走る姿。映画やCMなどで見かけ「かっこいい」と思うこともあるかもしれない。それでも「業界は右肩下がり」だと株式会社CARRY代表取締役の鈴木貴大は言う。業界の課題をクリアし、バイクの次代を創るために必要なこととは?

BeSTAR株式会社 事業概要

株式会社CARRYとしての創業は2016年。日本の高級バイク輸出会社として設立した。代表取締役の鈴木貴大の実家がもともと営んでいたバイク販売SUZUKI MOTORSを吸収する形で、現在はバイク販売、保険事業、デザイン事業を手がける。「いわゆる街のバイク屋だった」と鈴木が言うSUZUKI MOTORSは急成長を遂げ、SUZUKIの正規ディーラーとしても山形県で1位などの成績を残している。YouTubeの「SUZUKI MOTORS」チャンネルを中心にSNSでも積極的に発信をし、全国から注文や問い合わせが届くほどに話題を呼んでいる。「バイクの魅力を伝えたい」という想いのもと、より多くバイクに触れてもらうためレンタルバイク事業や体験型のイベント企画なども行う。「バイクの次代を創ることがミッション」と言うように、バイク販売店の課題や整備士等に関わる法律の問題点など、業界の課題を明確にしてひとつひとつをクリアしていくべく精力的に動いている。

バイクの楽しさを発信する

YouTubeで「SUZUKI MOTORS」と検索すると、チャンネル登録数1万人を超える人気チャンネルがヒットする。それが今回の取材先、株式会社CARRYが運営するバイク販売店SUZUKI MOTORSだ。運営する株式会社CARRYの代表取締役を務めるのが鈴木貴大。1962年に創業されたSUZUKI MOTORSに生まれたいわば三代目だ。となれば、幼い頃からバイクが好きで、と思いきやそうではない。

「生まれたときからすぐそばにバイクがあったので、家具みたいな感覚で興味を持つことはなかったんです。初めてバイクに興味を持ったのは大学生の頃。YouTubeでmoto GPの動画を見て、急激にハマったんです。それですぐにバイク屋さんに弟子入りみたいな形で入れてもらいました」

とにかく行動が早い。そこから大学を中退。バイク業界に入るために、実家に戻ることを決意。そしてさらなる高みを目指して、レーシングチームにメカニックとして入った。当時は1年の3分の1程度、レースに参加して全国を転戦していた。その後、大学時代のつながりからある台湾人と知り合い、話をするなかで、日本のバイクを輸出する仕事を始めた。そのために2016年に株式会社CARRYを設立した。現在はSUZUKI MOTORSを吸収する形で、バイク販売、保険事業、デザイン事業を手がけている。

当時SUZUKI MOTORSは、鈴木の言葉を借りれば「街のバイク屋」といった感じだった。鈴木が代表を務める株式会社CARRYが運営するようになり、業績は急成長を遂げた。いまはスポーツ系を中心に、SUZUKIのディーラーとしても山形県で1位という成績を残している。その成長の理由はどこにあるのか。

「SUZUKIの正規ディーラーへと方針を変えたこともひとつです。SUZUKIはコアなファンもいるので。あとはネット販売ですね。『SUZUKI MOTORS』というチャンネルをYouTubeに開設し、私自身がYouTuberとして出演してさまざまなことをお伝えしています。ネット販売というと、ホームページなどで中古のバイクや車を販売するとき、例えばキズを見せなかったり、悪いところは見せないことが多いんですが、うちは全部見せます。正直に(笑)。あとは、エンジンの音とかそういったものがすべて伝わるので、お客様もわかりやすいんです。最初はYouTuberというのも戸惑いましたが、いまはテンション高く楽しんでやっています。チャンネル登録は1万人を超えてファンの方もついてくれてSUZUKI MOTORSの知名度もあがり、それにともなって成約率もあがりました」

バイクの次代を創る

バイク販売店がYouTubeを使ってバイク販売の促進をする。バイク業界ではほとんどやられてこなかったことだと鈴木は言う。その話の続きとして出てきたキーワードが「バイクの次代を創る」という言葉だった。

「バイク販売のSUZUKI MOTORSの事業も含めて、私たち株式会社CARRYのミッションは“バイクの次代を創る”ということだと考えています。課題はたくさんあります」

バイクは1980年代に一大ブームを迎えて、その頃にはバイク屋もたくさんできた。しかも何をしていても儲かる状態だったという。業界が右肩下がりとなったいまも当時のままの経営を続けているところも少なくないのだとか。

「だから、バイク屋の店主というだけでなく“経営者”として成長しなくてはいけないと考えています。私も含めて経営としてバイク屋を捉え直さないといけないと思います」

また、バイク屋を担う人材も問題だと続けて鈴木は話す。

「特にバイク業界の整備士不足は深刻な問題です。技術のある整備士たちが60歳前後になってしまって、若手は少なくなってきている。そうなると現場の技術継承もできなくなってしまう。深刻かつ喫緊の問題でもあります。あとは外国人の雇用の推進です。現在の法律では二輪の整備士は日本人しかなれないんです。そこを解放したいと思っています。のちのちは例えば、カンボジアやタイなどで日本語学校と提携してバイク整備の勉強をさせて、整備士になってもらうといったこともやりたいと思っています」

経営という観点から業界を見直し、ひとつずつ課題をクリアしていく。そうすることでバイクの次代を創る努力をしているのだ。

バイクライフを共有したい

「ただしバイクを好きになってもらうこと」が最大の課題だとも鈴木は言う。「一人でも多くの人にバイクの楽しさを知ってもらいたい。自動車は生活必需品としている人たちも多いと思いますが、バイクはそういう側面は少ない。だから日常の遊びのなかのひとつとしてバイクがあればいいなと。私たちがやっているレンタルバイクもそのひとつです。庄内は豊かな自然がある。ツーリングには最適だと思います。ただ、遠方からバイクで来るだけで大変かもしれません。だから、こちらでバイクをレンタルしてもらって楽しんでもらいたいと思っています」

バイクを好きになってもらう。当たり前のことだが、難しいことかもしれない。そこで自身も幼少の頃からバイクに興味があったという営業の加藤真子に話を聞いた。 「小さい頃からバイクの姿を見てかっこいいなあと憧れていました。そして18歳のときに免許をとりました。自動車よりも景色を肌で感じられるバイクの感覚は大好きですね」

仕事でもバイクに関わりたいと、バイク関連の仕事を探したが見つからずカー用品の販売店で働いていたという。

「自動車だから近いといえば近いんですけど、やっぱりバイクの仕事がしたくて。そのとき客として通っていたSUZUKI MOTORSから“営業をやってくれないか”と声をかけてもらったんです。願ったり叶ったりというか。SUZUKI MOTORSのスタッフがすごく親切なのも知っているし、何より好きなものを仕事にできるというのもあって、働く環境としてはすごく充実しています」

バイクが好きで、バイクの販売という仕事についている。確かにバイクについてより詳しく楽しげに伝えることができるだろう。そのほかに“好きになってもらう”ためにどんなことをしているのか聞いた。

「SUZUKI MOTORSのYouTubeチャンネルにも参加しています。まだ免許を持っていない人やバイクに興味があるけど踏み切れないという人たちから、乗った時の感じが知りたいという声もいただいているので、乗車ライブ配信といったこともしています。そのほか体験イベントなどの企画にも参加しています。私はバイクを商品として売る店員ではなくて、いっしょにバイクに乗ってというように、バイクライフを共有したい。バイクは高価なものなので、人生のうちで何度も買うものではない。だからこそ、お客様の手元に納車するときは記憶に残るものにしたい。手書きの納車手紙なども書いているし、納車式もやっています。特別なものになってくれればさらに好きになってくれるのではないかなと思っています」

そのほか、お客様とのツーリング企画など、さまざまな企画が行われている。取材中も店を訪れる人が多く明るい声が絶えなかった。バイクを好きになってもらうというシンプルな想い。そして、バイク業界を見渡す視点、経営者としての視点という大きなところからバイクを見つめる想い。そのふたつが合わさることで、鈴木の「バイクの次代を創る」という言葉を実現する。

2021年に新社屋を建設し本社移転