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「人」で進化し続ける町工場。求む、異業種経験者。

グリーンメタル株式会社 / 機械オペレーター

インタビュー記事

更新日 : 2024年11月21日

車、スマートフォンから医療機器に使われる精密部品を作り出すグリーンメタル株式会社。わたしたちの生活を足元から支えている会社だ。町工場と言ってしまえば、そのとおりなのだが、映画や小説でよく描かれるような、クライアントに必死に頭を下げ、下請けで部品を作るだけではない。既存事業を効率化、省力化し、安定生産体制を作る。そして新規事業を立ち上げる。つまり、事業をデザインしていく人材に出会ったことで、事業が想像していないところへと進化していったという。

グリーンメタル株式会社 事業概要

1979年に現会長である菅原信男が創業。当時、カム式自動盤11台を擁する工場は庄内にはほとんどなかったという。自動盤(自動旋盤ともいう)とは、主に金属の材料を切削し部品を作り出す工作機械。つまり、機械を作るための機械だ。グリーンメタルではその自動盤での精密切削部品を創業当時から主な事業として展開してきた。創業当時は大手電機メーカーの製品に使われる精密部品を主に製造。しかも自動盤加工により製造される部品についてはほぼ全般を手がけ、その技術力を評価された。その後、最新の技術、設備を取り入れながら現在では自動盤機械150台を有するまでになった。この規模もまた他にあまり類を見ないほどの規模だ。グリーンメタルで製造される精密部品は、医療機器から車、スーパーコンピュータなど、私たちの生活には欠かせない様々な製品に使用されている。今後は、安定した生産体制を構築し、この主力事業を推し進めるとともに、将来的には自社オリジナル商品といった新たな分野にも挑戦していく。

生活を支える精密部品

 グリーンメタル株式会社の創業はいまから40年前の1979年。現代表取締役の菅原剛の父である菅原信男が山形県鶴岡市にカム式自動盤11台で生産を開始した。以来、グリーンメタルは自動盤による精密切削加工品を製造している。自動盤というのは回っている金属材料に刃物をあてて、ネジなどの精密部品を削り出す機械だ。その設備と技術力が評価され、大手電機メーカーの製品に使われる自動盤加工精密部品の製造を一手に任されていた。

 自動盤で製造する加工品は、ネジであったり、シャフトであったりと確かに小さい。しかし、それらが組み込まれる製品は車やスマホ、テレビ、カメラと日常のあらゆるところに存在する。さらには内視鏡のワイヤーを通す金属部品のように医療機器や世界的大企業のスーパーコンピュータにもグリーンメタルの精密加工品は使われている。それらの部品がなければ私たちの生活は成り立たないといっても過言ではない。

 

さらなる進化のために

「今後、当社が発展してくために、わたしたちのモノづくりに共感し、発展させてくれる人材の受け入れを強化したい」。そう話すのは代表取締役の菅原剛だ。なぜそう思ったかと聞くと「人で事業は進化するということを体感したからです」と答えてくれた。

“床は油にまみれ、工場内の音はうるさいなかで小さな部品を作っている町工場”とは、菅原が自社を説明する際の言葉だ。しかし先述したとおり、メーカーから技術力や品質に高い信頼を受け、受注はたくさんあり忙しい毎日を繰り返していた。それでもオファーは引きも切らず、受注しきれずに断っていたこともあったという。そのときに考えていたのは、実際の生産作業をしてくれる人を増やして生産力を上げるということだった。しかし、それでもなかなか思ったように生産力は上がらなかった。そのなかで、思ってもいない応募が来たという。

「生産作業の募集を出していたのですが、元SEという人間が応募してきてくれたんです。しかも、われわれのやっていた分野のモノづくりは未経験。正直なところ、何でうちなんだろうという思いがありました」

 それでもなぜか会ってみようと思った。それは今までの採用の考えを継続して、作業員を増やすことだけでの生産性アップには、もう限界を感じていたからだという。

省力化という課題解決

 生産性をアップするために、工場における自動化は全国でも進められている。作業環境をよりいいものにすることも含めた、効率化、省力化も同じだ。しかし、菅原によれば、工作機械の自動化は高額な投資がかかるうえ、メーカー側でもなかなか進んでいなく、限界があるという。そのなかで省力化という大きな課題に取り組むために、菅原はまず間接業務から着手したいと思っていた。

「発注などの生産管理において、数年前から紙でのアナログな管理をデジタルに移していきたいと考えていました。しかし、ソフトウェア会社と打ち合わせをしてプログラム開発を進めても、こちらの意図があまり反映されないなど、いろいろと齟齬があり、なかなか進まなかったのが本音です」

 それならば、自社でデジタル化を進められないかと考えていたところにSE経験者の応募があった。面談では、現在の職場をこう変えていきたい、未来にはこういった事業を展開していきたいとビジョンを伝え、そして意見を交わした。そのなかで、応募者は自分とは違った、つまり長年現場で働く人間では発想しえないことも話してくれた。その発展的な会話と自社の未来を重ね合わせた時に、会社の進化を感じて採用を決めたという。 その人物の入社後、システム構築のスピードはグンとまし、数年前から遅々として進まなかったものが、ようやく完成、導入が始まった。そして菅原が描いていた「業務効率化」が日々実践され、日々進化しているという。また、想定外の出来事として、元SEの知見を活かして、動画での広報活動や社員教育プロジェクトでのデジタル活用などの社内DXプロジェクトにも携わるようになり、会社としてやれることの幅が広がり、新しい事業の可能性も見つかっているという。まさに新しい「風」が社内に吹き込まれたと感じている。

改革の真ん中で

 では、実際にその改革のど真ん中で活躍する人は何を思っているのだろうか。これまで話してきた元SEというのが、今回インタビューした佐藤英司。それと現場でCADCAMなどのデジタルプログラミングをしている四方田京八のふたりに話を聞いてみた。

 佐藤は東京で長い間電気回路の開発やソフトウェア開発を手掛けてきた。2021年に出身の酒田へ戻ることとなり、思ったことは地元の企業に就職したいということだった。それまでの経験を活かし、ソフトウェア関係の仕事を探したが多くが請け負い開発だったという。そこで、偶然ショウナイズカンを発見したそうだ。

「51歳ということもありましたし、過去何度か大手求人媒体で地元の仕事を探した時に全くと言っていいほど求人が見つからなかったので、消去法で会社を選ばざるをえないのかなと当初は思っていました。そんな時に、ショウナイズカンを見つけて、庄内にも面白い仕事がこんなにたくさんあることに率直に驚き、自分のやりたいことを優先して転職活動をしてみようと思えるようになりました。段々と、自分の気持ちがワクワクに変化したことを今でも覚えています。」

 もともと工業科出身でモノづくりに興味があった佐藤は、次のキャリアで製造業の会社で経験を生かして働きたい想いがあったため、その想いの通り製造業にまで幅を広げて仕事を探した。

「グリーンメタルはピンやシャフトを作っているという点では、モノづくりの根底を支えてる会社です。それまで経験したことのない分野でしたが、ショウナイズカンに掲載された当社のインタビューを読んで社長の考えに非常に好感を持てたので、お会いしてみたいと思い応募しました」

 社長からは前述の通り、町工場が目指すべき未来を聞きながら、様々なエピソードも聞いた。例えばコロナで仕事が減ったとき、社員を休ませるのではなく、機械を使って自由にモノを作っていいよと菅原は言ったそうだ。それはこの困難をみんなの力で乗り越えたい、そして社員一人一人を大切にするからこその、社長の考えであった。そのエピソードを聞いて、佐藤の心はこの会社は面白そうだと、ワクワクへと更に繋がったという。

「そのなかで正直に、デジタル化がまだまだ進んでいないことも聞きました。それならば自分の分野だということで、お手伝いができるのではないかと思いました」

 まるで運命の糸を引き寄せるように、そうして入社となったわけだが、社内のDX化は「想像以上に難しい」と佐藤は話す。製造のラインはどちらかといえばシンプルで、だからこことここをデジタル化していけばすんなりと行くだろうと見当をつけていたが、実際に中に入ってみると、各工程での情報のやり取りや不具合が発生してしまうプロセスは複雑に入り組んでいたそうだ。システムは一応の完成を見て導入も始まったが「まだまだ穴だらけ」と佐藤は言う。

「それを直していくのが目下の仕事ですが、実はグリーンメタルはそれがやりやすい職場だと感じています。ソフトウェア開発に関わっていたのでわかるのですが、新たなデジタルシステムを導入するときは現場からの反発が常に多く発生します。でもこの会社はみんなすんなりと受け入れてくれる。それどころか、さまざまな意見をくれるので自分で気づかなかったことなどがすぐに見つかるんです。そのおかげで、会社にとってより良いシステム、仕組みが少しづつ出来ているのを感じています」

思っていたよりも難しいし、思っていたよりも楽しい。

今の気持ちを表現するなら何ですかとの問いに、佐藤はそう笑顔で答えた。

 その現場により近いところで働くのが四方田だ。高校の機械科を卒業したのち、新卒で入社。最初は旋盤などの機械を使い、生産現場で働いていた。のちに、CADの検定を持っていることから、新規導入するCADCAMのプログラムを作る仕事に移った。

「わたしたちはクライアントから図面をもらって部品を作ります。でもその図面はあくまでもスマホなどの完成する商品の図面なので、それをわたしたちの生産図面に落とすところから仕事は始まります。それがこれまでは手作業だったのです。紙を使って切り張りし、それを実際にやりとりしていました。その図面をコンピュータで作成し、一元管理するということでミスを減らし、ムダな作業をなくすことをしています」

 また、それぞれの工員がコンピュータ制御されている機械のプログラムをその場で打ち込んで作業をしていたのを、CADCAMに変えることによってプログラムを共有できるようになり作業はグンと効率化されたという。

これも社内DX化の取り組みの一つであり、四方田はその一端を担う一人として、佐藤とも連携しながら日々業務効率化の礎を構築し続けている。

これまで見つかることのなかった未来

 菅原は「極端に言ってしまえば、同じ設備があれば同じ製品ができるはずなんです。そのなかで他社と差別化を図るためには、いくつかの方法があります」という。大きなものとしては、お客さまから安心して選んでもらえる会社になること。そのためには安定した生産体制が必要となる。設備投資ももちろんだが、システムの省力化によって労働力を安定的に確保することで、安定性をアップさせることは最も大事なことだと言う。また、もうひとつは海外も含めた事業展開。これには営業、広報活動も当然必要となる。そのためには、と菅原は続ける。

「わたしたちが長年続けてきた“常識”を疑う必要もあるんです。だから事業の仕組みを動かす人間だけでなく、それらを疑って変えていく人も必要なんです。私を含めて多くの人が、目先の利益というか、この機械を導入したらどれだけの利益が見込めるだろうか、というところでモノを見てしまいます。それは人材も同じだったのかなといま振り返ると思います。この人を雇って売上はどれだけあがるか。しかし、そうではないと気づいたんです。事業に沿って人を雇うことも必要ですが、それと同時に人が事業を進化させるということもあるのだと肌で感じました。そうして、自分たちでは想像もつかなかったように既存の事業が進化し、新たな事業も生まれてくる」

 最後に「これは商品ではないですが」といって、写真の10センチほどの小さなけん玉を取り出して見せてくれた。これをすべてグリーンメタルの技術で生産したそうだ。「これがうちで作れる最大の大きさのものなんです。そのままオリジナル商品になるとは思いませんが、こういう斜めの発想もいいかなと思っています。既存の事業を効率化すること。新たな仕組みを作ること。そして新たな事業を創出すること。いろいろな可能性のある人に会ってみたいといまは思っています」。そう笑いながら話をしてくれたのが印象に残った。