石臼手挽き、手打ちが生む上品 日本の蕎麦本来の味を。

蕎麦きり 風土

魯山人は「料理の良し悪しは材料の良し悪し如何」と言った。材料の見極めも材料を生かすのも料理人の加減ひとつ、と。「蕎麦きり 風土」の主人、佐久間雄二さんが「石臼手挽き」のみを貫くのは、材料は生かすものと心しているからだ。「蕎麦の味は玄そばありき。あとは私たちがいかにいい粉を作るかです」。メニューによってそば粉の品種も挽き方も変え、日に4~5時間ほど石臼を回す。それで約3、40人前というから、とにかく手間でしかない。「蕎麦は江戸時代に職人が石臼を挽いて作っていたのが起源ですから、なるべくその本物に近づきたくて。こだわりというより自己満足です」佐久間さんはそう苦笑するが、全量石臼手挽きのお店は全国でも珍しい。

さらに魯山人は「食指が動く」とは美しさや香気によるとも言っている。風土の蕎麦は、見た目の上品さを裏切らない。淡い翡翠色の「蕎麦切り」は、蕎麦の実の涼やかな甘みがある。出色は「粗挽きそば」だ。野趣に富みながらこれほどの透明感。どちらも見たままの味がすることに驚き、佐久間さんの蕎麦への美意識を感じさせる。
この蕎麦の味を生かす「つゆ」は「カツオや昆布やしょうゆ、どの味も突出せず、つゆは渾然一体として蕎麦の味を邪魔しないこと、というのが師匠の教えです」。というので、一口目は薬味を入れずに味わうと、蕎麦本来の持ち味を発揮させる“加減”が利いていることが分かる。

「風土に根ざす」という意味の店名には、自然ありきという本源と、蕎麦の本質に忠実にという思いが見て取れる。食す側は、蕎麦のように細く長(永)く付き合いたい店があることに喜ぶばかりだ。

住所 山形県鶴岡市八ツ興屋土谷俣55-4
名称 蕎麦きり 風土
電話 0235-22-8650
定休日 不定休
クレジットカード 不可
席種 テーブル6人×1卓、4人×2卓、座敷4人×2卓
貸切利用 不可
禁煙/分煙/喫煙 禁煙
予算目安 蕎麦切り800円(天ぷら付き1,400円)
おすすめメニュー 蕎麦切り粗挽き1,000円 麦切り750円