素材至上でシンプルに調理するイタリアンと、調理技術を駆使して素材と共に創り上げるフレンチと、それぞれを採り入れたジュールファストの料理。「手にしたことのない食材を知ると、この食材からどんな料理ができるか探ってみたくなって」と土屋貴志シェフの創作の泉が湧くほどメニューの幅は広がり、その味の評判も高まっていった。シェフのその探求心は庄内の食材力に誘発されたものだ。

土屋シェフはフレンチだけでなく洋食店と肉料理店での調理経験があり、オムライス、ハンバーグ、ステーキもお店の看板となっている。よってここではジャンルの隔てなく「野菜料理」「魚介料理」「肉料理」としていて、客層もじつに幅広い。では、メニューの「本日のオススメ」を見てみよう。この日は「山形牛のイチボのたたき」「羽黒緬羊のカルパッチョ」「庄内産まるごとメバルのアクアパッツァ」「庄内産クロダイのポワレ あおさのソース」など。魚についてはシェフの釣り好きが功を奏し、釣り仲間によって食材が店に集まってくる。地魚はもちろん南方系の魚などがメニューに載ることも。どんな食材が目の前に来ても、その魚が何を食べて育ったのか、野菜はどんな土で育ったのか、その生い立ちをふまえ、調理に取りかかる。「食材に一つ一つ育ちの違いがあるように、同じ魚料理でも食べる人が変われば味つけも変えます。どんな方にも食べてもらえる料理がうちの持ち味」。人や食材に反応し、共鳴する、絶妙なアドリブのきくレストラン。そのシェフの気働きがお客さんたちに「今日もおいしいね」といわしめる。