知りたい!富山の不動産事情【県東部】前編

〝生活拠点をどこに構えるかー。

人生における最大の決断の選択肢は、働き方や生活様式の多様化で大きく広がっている。
それに合わせて街そのものも変化しており、人の関心や思考の趨勢(すうせい)の見極めは難しくなる一方だ。
富山も例外ではない。

近年は不動産業者も想定しない住環境を求める移住者も増えている。最近、そして近い未来の県内の住宅事情はどのように変わっていくのか。
富山市を含む県東側(呉東)での不動産業に強みを持つビルトの大江利男専務取締役に聞いた。

トレンドは中心街のマンション!?

地方の少子高齢化に伴う人口減少は歯止めがかからない。にもかかわらず、富山市の中心市街地などには新しいマンションの建設ラッシュに沸く。
それでも「供給過剰ではない」と大江氏はいう。

理由は大きく3つある。ひとつは女性の独立が起因している。
女性が住居に求めているのは安全性で、「セキュリティー性が高く、職場にも近い好立地のマンション需要が増えている」と大江氏は分析する。
女性の平均収入が増え、市や県外からの女性移住者は多少家賃が高くても市中心街に住めるようになったことも背景にあるという。

2つ目は、核家族化が進んだことで、子供たちが独立した後に利便性の高い市街地のマンションで暮らす夫婦が増えたことだ。
「夫婦2人で生活するのに、二世帯住宅は掃除など手入れも大変で広すぎる」などといった理由で移住する老夫婦が増えたことに加え、晩婚化もこうした傾向を後押ししている。

そして3つ目は、「一人暮らしをしたい潜在的需要が増えている」ことだという。
一昔前は家計負担を減らし貯蓄するため、県内に就職しても実家暮らしを選択する若者は珍しくなかった。
しかし、近年は勤務地の近くに住むことで、家族に気兼ねなく自分の時間を大切にしたい若者が増加。
大きくマインドが変化してきているようだ。

ちなみに中心街に住みたい層の人気物件は、間取り2LDK~3LDKで1台分の駐車場付きとのことだ。

 

中心街人気の根本的な背景には、郊外への人口流失に歯止めをかけ、人を中心市街地に呼び戻すべく県が掲げる「コンパクトシティ」構想があるのは間違いない。
ただ、こうした変化が郊外の空き家を加速度的に増やす〝負の側面〟を顕在化させていることも忘れてはいけない。

 

空き家の借家が少ない問題。解決の糸口は?

中心街のマンション需要が増える一方、空き家は供給過多である。
というのも、需要は一定数あるものの貸したい空き家のスペックと借りたい移住者のニーズが折り合う物件が圧倒的に少ないのだという。

「2~3人世帯はお屋敷みたいな物件はいらないし、商店街の中にある空き家などは住宅地としては使いにくい。
空き家自体は増えているが、住める条件が整った空き家が増えていないのが現状」と大江氏。数百万円で空き家を改装しても、改装費用がかさむ割に利益効率が悪いため、デベロッパー(不動産開発業者)や地元不動産業者(仲介業)も積極的に扱わないとのことだ。

とはいえ、都会から自然豊かな郊外を求める移住者が増える中、空き家需要があるのは確かである。
ただ、住んだことのない土地で家という大きな買い物で失敗したくないためか、こうした移住者層は購入する空き家よりも、「借りられる空き家」を求める傾向が強い。
借家で一定期間住んでみて、気に入れば買い取れるような物件が欲しいという声もあり、「こうしたニーズに応えられる空き家も絶対に必要で、今後は買い取り可能な借家も出てくるだろう」と大江氏は予測する。

しかし、空き家を提供する側の多くは手っ取り早く家を手放し、売って得た資金を今後の生活資金に有効に活用したいと考えており、なかなか借家契約のできる空き家が増えないのが現状だ。

 

富山市草島環状線の内か外かが地価変動の境界線

東京の土地や住宅価格、家賃の相場が「JR山手線の内側か外側か」で明確に区切られるように、富山市内でも同じような相場基準の境目がある。
それが富山市街地を囲むようにして走る環状道路、通称「草島環状線」だ。
1周約27・4キロで、2021年8月に全線が4車線に整備された。

山手線同様、その相場は内側が高く、外側が安い。
その理由は明快で、内側には県庁や市役所といった官公庁、商業施設などが集積し、道路や鉄道といった生活インフラも整備され、利便性が高いためである。

幹線道路の沿線や拡張、新たな駅や商業施設の建設計画が持ち上がると、そこに関わる周辺地域の価値が劇的に上昇することがある。
県内でもそんな地殻変動がじわりと起きているようだ。

 

富山市新駅周辺は人気エリアに!?

そこで、県内で今後、人気上昇が予想されるエリアについて大江氏に聞くと、「県や市が開発に力を入れてきた鉄道や路面電車の沿線エリアになる」と明言。
特に、あいの風とやま鉄道「東富山駅」周辺は再開発が進み、住環境の向上から県外からの移住者の人気が高まるとみる。

とりわけ、首都圏からの移住者は自動車の運転、北陸地方特有の雪道の移動に慣れていないこともあり、鉄道など公共交通機関を使ったアクセスの良さに重点を置く。
そうした観点を考慮すると、「東富山は、あいの風とやま鉄道を使えばわずか5分で富山駅に行ける。
アピタ富山東店などの商業施設も近い好立地だ」。国道415号富山東バイパス市森―下飯野間)が今年8月に開通し、利便性も高まっている。

そして大きな目玉が、2022年3月の開業予定のあいの風とやま鉄道(富山市)の富山-東富山駅間に整備する新駅「新富山口(しんとやまぐち)」(同市下冨居)だ。
新駅周辺では富山操車場跡地(約10・4ヘクタール)の開発が予定されており、街の景色が一変する可能性を秘めている。

 

地価高止まり!?富山駅北側

富山市内で街の景色が大きく変わった象徴的なエリアといえば、富山駅北口周辺だろう。
北口から徒歩約10分にあった旧舟だまりを整備し完成させた「富岩運河環水公園」は、県内外から多くの人が集う憩いの場に生まれ変わった。

約10ヘクタールの敷地内には、〝世界一美しい〟と称されたスターバックス・コーヒーや「フレンチの鉄人」坂井宏行氏監修のレストランがオープンし、これまで富山になかったラグジュアリーな要素を取り込んだ。
多目的施設の富山自由館のほか、2017年8月には子連れで楽しめる富山県美術館が開館し、芸術・文化の発信地としての役割も担う。

 

そんな北口周辺は「今でも空いている土地がないかと一番問い合わせがある地域」だと大江氏は話す。
地価は高止まりしており、平均坪単価約20万円の富山市において、「坪30万円はくだらない」という。
2020年3月には富山駅からの路面電車の南北直通運転が開始するなど駅北側の利便性も高まっており、その価値は当面下がらない見通しだ。

 

発展性がある郊外!人気は藤木周辺

富山駅北側の地価は高まるも、今後の発展性という意味ではやはり郊外である。
「デベロッパーにとっては『投下資本利益率』で開発を進める」(大江氏)という鉄則がある。
つまり、投じた資金で、どれだけ効率的に利益を出せるかに重点を置いている。
「郊外で物件の数量をたくさん販売できるメリットを考えると、富山市近郊の住宅地を開発するのが非常に利益が大きい」というのが本音だ。

そうした考えのもと、主要な地元不動産業者が宅地開発に力を入れているのが富山市東部、常願寺川のそばに位置する「藤ノ木」エリアだ。
自然豊かな立山や中心市街地へのアクセスが良好で、坪単価は約13万円。
60坪の土地を購入して、その上に40坪の住宅を建てる費用が計3000万円以内に納まる〝手頃さ〟が最大の魅力という。
今では閑静な住宅分譲地が広がり、近くには多彩なカフェやショッピングゾーンが立ち並ぶなど著しい発展をみせる人気エリアだ。

そんな地域に目を向ける層の多くは、60坪の土地に40坪の4LDK住宅、車2台分の駐車スペース確保できる住宅を計2800万円程度で購入できるかを軸に移住を考えるようだ。
35~40年ローンで返済額が月7万円程度となるよう支払い計画を立てるのが一般的。
とはいえ、買うタイミングでの金利や減税制度、自治体の補助金支援などによって支払い負担は変わってくる。

(取材日:2021年10月21日)

株式会社ビルト

当初は、売家・売地の仲介業務を2名のスタッフで始めた会社でしたが、今では不動産事業を中心に、介護事業、温泉事業と幅広く手がけることができるようになりました。これからも今まで以上に、お客様に信頼され、「ビルトに頼んでよかった」のお言葉をいただけるよう、また、豊かなライフスタイルの一助となるようなサービスの提供に全力を挙げて努力して参ります。