ちょうどいい“田舎”加減が魅力 日本で一番小さな村『舟橋村』

日本一小さい村・舟橋村

富山県の人口が100万人を割るなど、日本のあちこちで人口減少が進んでいる昨今。この30年の間に人口が倍増した村が富山県にあります。北陸で唯一の村でもある『舟橋村』は、富山平野のほぼ中心に位置する人口3,300人ほど(2024年5月時点)の村。その面積は3.47平方キロメートルで、その広さは東京ディズニーランド約7個分という日本一小さい村としてもその名が知られています。

 

縦・横それぞれが約2kmという大変コンパクトな村の中心部には、村役場をはじめ、駅、こども園、小中学校などの公共施設や主要機能が集まり人々の生活の要所が一つのエリアに集約されています。また、村の南側には田園地帯が広がっており、農業が村の主要産業となっています。常願寺川東岸の扇状地が広がる肥沃な土地で育ったコシヒカリはつややかでバランスの取れた味わいが特徴です。


 

村内には、白岩川、京坪川、八幡川、細川の4つの川が流れています。農業用水としてだけでなく、かつては上流の立山町まで船が運行しており、行きは、米を水橋まで運び、帰りは海産肥料を運ぶなど舟運が盛んな地域でもあったそう。また、明治時代には、年貢を過度に取り立てる村役人に反発した農民たちが団結し「ばんどり騒動」と呼ばれる農民一揆がおこった地でもあります。


 

そんな舟橋村が全国的に注目されるようになったのは平成に入ってから。1950年から1990年にかけて1,400人ほどで人口が推移していましたが、住宅開発を進めた1990年代初頭より人口が倍増。特に、2000年から2005年まで日本一の人口増加率をたたき出し、15歳未満の年少人口割合が日本一となったこともあります。また、「令和2年国勢調査」(総務省)によると、平均年齢は43.1歳で子育て世代が村の人口の3~4割を占めており、若い世代が多い自治体でもあります。
 

 

 では、なぜ人口増加、特に若い世代の村への流入が進んだのかを考えると、富山駅から電車で15分、富山市の中心部まで車で約20分というアクセスの良さがまず挙げられます。越中舟橋駅には、200台分の駐車場が設置されており、パークアンドライドを利用できるため、富山市への通勤や通学も便利なのもポイントです。また、一戸建て住宅を新築するのが根強いトレンドである富山県において、富山市よりも土地の価格が比較的安価であるという点も相まって、富山市のベッドタウン化したというのが人口増加の大きな要因と考えられます。
 

 
さらに、「子育て共助のまちモデル事業」に取り組み、2019年には、子育てファミリー向けの賃貸住宅「リラフォートふなはし」が完成。公園、こども園、学童、小中学校、村役場が徒歩5分圏内という好立地に加え、安心して子育てができる仕組みが盛り込まれています。なかでも、大人も子供も関わり合う子育て共助に力を入れており、交流や各保護者の得意を生かした発信など活発なコミュニケーションが図られています。
 

 

2007年に行われた住民参加型のワークショップによる村民憲章策定をはじめ、総合計画への村民提言、公園の運用管理など舟橋村に暮らす人々が主役となり行政と連携しながら村づくりを行っている点も、特筆すべき点です。

 こういった側面からも、舟橋村が子育て世代を中心に人気が高い自治体であるのが伺えます。では、実際に暮らす人々はどのように感じているのでしょうか。舟橋村の渡辺光村長に舟橋村に暮らす魅力についてお聞きしました。

 


Q.村長が感じる舟橋村の「よさ」を教えてください。


渡辺村長:適度な「田舎感」がこの村の最大の魅力だと思います。「何にもないところ」と表現されますが、「何にもない」から不便というわけではありません。自然が多く残り、のんびりと暮らせる村である一方で、近隣の市町村、特に富山市へのアクセスにも非常に便利なロケーションです。

 

Q. 具体的にどんなところが便利だと思いますか?


渡辺村長:村の商業施設といえば、ドラッグストアとコンビニエンスストアが1件ずつあるのみですが、車で10分ほど行けば、近隣市町にスーパーやホームセンターなどもありますので、日々の買い物にも困りません。

 

Q.舟橋村がこれほど注目を浴びている理由は何だとお考えですか?


渡辺村長:もちろん、子育て支援などさまざま施策は行っていますが、特段、突飛なことはしていませんし、先進的でもないと思います。しかし、蛍を毎年見ることができるほど美しい自然が残り、適度に人々が暮らしている場所というのはかなりの独自性を持った地域であることには間違いありません。おそらく、このトータルバランスが抜群に良いのではないかと思います。村の中心部に、役場、こども園、小中学校などが集約しておりコンパクトにまとまっているのも生活しやすさにつながっていると考えます。

 

Q.村長自身も村にUターンされたおひとりですが住んでみていかがですか?


渡辺村長:とても暮らしやすいと感じています。何度も繰り返すようですが、とにかくすべてが「ちょうどいい」んですよね。小さな村なので歩いて公園や図書館にも行くことができますし、災害が比較的少ないというのも安心して暮らせるポイントのひとつだと思います。帰りたくなる場所、帰ってきたい場所という風に感じています。今後も適度な田舎感を保ちつつ、この村の良さをいろんな方たちに知っていただけたらと思います。