「アスリートと社会人の両立はあらゆるシナジーと成長をもたらしてくれます」

瀧本風斗さん アイスホッケー富山県代表選手(北陸建工株式会社/富山アイススポーツクラブ所属)

北海道で生まれ育ち、現在は富山の企業で働きながら、アイスホッケーの国体選手として競技に打ち込む瀧本さん。アイスホッケーの選手として、社会人として今の想いを伺った。

 

 

負けたくないという信念が自分をより深くより高くアイスホッケーに導いてくれました

 

Qアイスホッケーに出会ったきっかけを教えてください。


幼少期から、水泳、野球、卓球、ゴルフなどさまざまなスポーツに親しんでいたのですが、人気のあるサッカーやバスケットボールにはあまり惹かれなくて…。北海道の片田舎で生まれ育ったのですが、30㎞圏内にスケートリンクが5つもあるような地域で、昔から氷上のスポーツが非常に盛んでした。プロチームもありましたし、そんな環境もあって自然とアイスホッケーに興味を持つようになりました。防具やスティックなどいろいろな道具を使うアイスホッケーを見て、面白そうだなと思い、小学1年生のときに、地元の小学生チームに入りました。

 

Q実際にやってみていかがでしたか?


周りには、年中くらいからやっている子がたくさんいて、当然、自分よりもうまいわけです。スティックと防具を使うアイスホッケーは楽しいけど、悔しいと思うことが多かったです。とにかく「うまくなりたい!強くなりたい!」って、思いながら練習していました。負けず嫌いはこの頃からずっと変わりませんね。ポジションはフォワードだったのですが、はじめて、点を決められたときは本当にうれしかったです。


 

Qそうやって、どんどんアイスホッケーにのめり込んでいったのですね。


できることが増えたり試合に勝てたり、そんな喜びが成功体験にもなりどんどんアイスホッケーの魅力にハマっていきました。もっと強いチームで上を目指したいと思い、中学に入ってからは週3回、往復2時間以上かけて札幌のクラブチームに通っていました。

 

Qその後、高校進学で青森へ行くことを決断されましたが?


高校生になっても北海道でアイスホッケーを続ける道もありましたが、青森の強豪校への進学を決めました。北海道の方がレベルは高いし強いのですが、北海道のうまい選手たちとチームメイトになって一緒に戦うのではなく、その子たちと戦いたいと思いました。自分がうまいと思う選手たちと対戦して勝ちたいと。どこまで負けず嫌いなんだって話ですけど、ライバルを作ることで自分をより高められると思いましたし、強いチームに立ち向かって勝つことができたらやっぱりうれしいじゃないですか。
 

 

Q高校生活はいかがでしたか?


アイスホッケー漬けの日々でした。学校に行く前にランニングして授業を受けて、夕方から練習して、夜はウェイトトレーニングやランニングという毎日でした。部員は30名ほどでそのうち1/3は県外からの進学者でした。そんな環境だったので寮生活も楽しかったです。1年生のときに僕が先制点をとった試合で北海道の高校に勝ったことは今でも忘れられません。その試合が評価されて世代別(U-18)全日本代表の代表候補としてキャンプにも召集されました。

 

Q充実の高校生活を経て大学は関西大学に進学されましたが?


これも、また高校を選んだ時と同じですが、大学は関東の方が強いので、あえて関西の強豪校に行こうと思いました。そのなかでもインカレで準優勝をしたこともある関西大学は、唯一リンクを持っている大学でした。アイスホッケーだけでなくフィギュアスケートも強い大学だったので、競技に打ち込める環境が揃っていたのも決め手となりました。在学中にインカレでベスト4になった際には喜びもひとしおでした。本当は、そういった達成感もあり大学まででアイスホッケーは辞めようと思っていたのですが、コロナ禍の影響で4年生の大会がなくなってしまい、不完全燃焼になってしまったんです。このままでは終われない、終わりたくないと。

 

悩みながらも、前に進めたのは信頼する先輩の一言があったからこそ

 

 

Qそれで、社会人になってもアイスホッケーを続けようと。


そうですね。続けることに迷いもありましたが、やり残した感が強くあったのも事実です。就職活動も北海道か大阪の二択で考えていたのですが、なんとなくしっくり来ていなくて悩んでいました。そんな時、仲が良かった高校のひとつ上の先輩が「富山に来いよ」って誘ってくれたんです。先輩は東京出身でしたが祖父母が富山に住んでいて、富山で働きながらアイスホッケーを続けていました。アイスホッケーも続けたかったですし、先輩もいるし、全くのノーマークでしたが、「富山もいいかも」とその時、直感的に思いました。


Qそれで富山の企業に就職したのですね。


就職活動をする上で、やはりスポーツに関係する仕事に就きたいという思いがありました。富山での就職活動は、アイスホッケーで関わりのある方々を頼りに行っていました。その中で紹介していただいたひとつが、現在の職場である北陸建工グループでした。北陸建工グループは、地元のスポーツチームやアスリートを応援している会社でしたし、スタジアムやアリーナなどの建設にも携わっている会社だと知って興味を持ちました。明るくパワフルな社長との面談が今でも記憶に残っています。そこからご縁が繋がって、2022年にグループ初のアスリート採用第1号として入社することになり現在に至ります。普段は、設計部で3DCADを使って構造設計やコストなど、効率の良い施工計画を考えたり、チェックをしたりしています。ゆくゆくは、アリーナなどスポーツ施設の設計に携われたらいいなと思っています。
 

 

Q富山の印象はいかがですか?


富山の第一印象は雨が多いなと思いました。でも、食べ物はおいしいし、立山連峰や景色もきれいだからいいところだなと感じます。高校から青森、大阪といろんなタイプの土地で暮らしてきましたが、富山はとても住みやすいなと思います。元々、順応性は高いタイプなのですが、富山に来ても全く抵抗はなかったですし、なじみやすかったです。ただ、富山弁はいまだに難しいなと思います。何をしゃべっているのかわからない時が正直あります(笑)。


アスリートとして社会人としてもっと高みを目指したい

 

Qアイスホッケーと仕事の両立はいかがですか?


遠征や大会の際にはお休みをいただくことも多いのですが、会社が全面的にバックアップしてくれるのでとても助かっています。会社のジムでもトレーニングをすることができますし、無理なく両立ができていると思います。昨年は、富山県代表選手として国体予選にも出場しました。静岡や石川などに勝利し6年ぶりに予選を突破して国体に出場することができました。今年は、国体でのベスト8を目指していて、目標に向けて練習に励んでいます。
 

 

Q今後の目標を教えてください。


仕事と競技、その両方から刺激を受けていて、それがよいシナジーとなっているのでこれからも、いろんなことに全力でチャレンジしながら自分自身を成長させていけたらと思っています。選手としてだけでなく、社会人としても、もっともっと向上していきたいですし、責任のある仕事を任せられるようにもなりたいです。いつか、富山に全天候型のスケートリンクを作ることができたら最高ですね。