チューリップ公園

富山県の県花であり、砺波市の市花でもあるチューリップをモチーフとした砺波チューリップ公園。毎年春には「となみチューリップフェア」が開催され、300万本のチューリップが色鮮やかに咲き誇ります。ゴールデンウィークの休みを利用し、毎年多くの観光客が訪れる美しい観光名所です。

 

 

■チューリップフェアの発展に伴い、拡張された公園

 

 毎年、県内外から多くの観光客が訪れる、となみチューリップフェア。その主会場である砺波チューリップ公園では、高さ26メートルのチューリップタワーが公園の中央にそびえ立っています。現在のタワーは2代目。富山のオリジナル品種「とやまレッド」「白雲(はくうん)」「黄小町(きこまち)」がモチーフで、令和3年に完成しました。初代タワーは2代目よりも4メートル低い22メートルの高さで、公園内を一望できる展望台として人気を集めました。初代タワーの先端部分であった赤い県産品種「プリティー・ウーマン」をモチーフとしたモニュメントが円形花壇の中央に取り付けられています。公園の広大な敷地を見通すような姿で、新旧タワーのシンボルが見守っています。 

 

砺波チューリップ公園は、富山県農業試験場出町園芸分場のチューリップをテーマに、チューリップフェアとして一般公開したのが始まりで、昭和38年に同園芸分場の果樹園跡地を県から借り受け、自衛隊の協力を得て1.6ヘクタールの公園に整備されました。

実はチューリップフェアの方が公園の設立より先に行われていました。チューリップフェアは昭和27年から開催されており歴史ある花の祭典です。チューリップフェアの開催が先ということから、公園の設立にはこのイベントをさらに盛り上げていきたいという意気込みが感じられます。

 

チューリップフェアは年を重ねるごとに来場者が増えていきました。そのことから、市はチューリップ公園総合計画を策定し、昭和51年から10年かけて大花壇やひょうたん池などを順次整備して5.4ヘクタールまで拡張しました。それ以降も五連水車や砺波市美術館を設けるなどして拡張は進み、現在のチューリップフェア開催時の会場面積は約12ヘクタールです。

 

 

 

■各エリアそれぞれが見応えのあるチューリップの祭典

 

国内最大級のチューリップフェアでは、エリアごとに来場者を楽しませる工夫が沢山施されています。チューリップで描かれた迫力の地上絵や、ひょうたん池に浮かぶ珍しい水上花壇、立山黒部アルペンルートの「雪の大谷」をイメージした高さ4mのチューリップ回廊の花の大谷など、見応えのある演出は数多くのチューリップを栽培する砺波市だからこそなし得ることができます。このほか、各種コンサートなどさまざまな催しも予定され、イベントの開催期間は多くの人で賑わい、その美しさを堪能していきます。

 

 

 

 

 

 

 

■富山のオリジナル品種も咲き誇る色とりどりの花々

 

世界には8,000品種を超えるチューリップがあると言われています。富山でも約200品種のオリジナル品種が生み出されました。日本の気候に適した「とやま開発品種」は暑い日本の夏に対し貯蔵適用性が高く、充実した球根と言われています。これらの球根は非常に人気で皇室に献上している品種もある美しい花々です。

フェア会場では「彩りガーデン」という花壇に富山県の品種を中心に集められています。色や形の違いを楽しむための通路が設置されており、様々なチューリップの彩りを感じられるスポットです。

 

 

 

■チューリップが富山の県花になるまで

 

富山県はチューリップの球根出荷量日本一を誇り、チューリップが県花に選ばれています。そのなかでも県の南西部にある砺波市では、栽培が100年以上続けられてきました。

現在は県内の4割以上の球根栽培農家が砺波市にあります。

なぜ砺波でチューリップ栽培が根付いたのでしょうか。

100年以上前、チューリップ育ての親と呼ばれる水野豊造氏(みずのぶんぞう)が水田裏作として、10球あまりの球根を植え付けました。わずか10球あまりの植え付けが砺波のチューリップ栽培の始まりと言われています。当時、日本ではまだチューリップが珍しく、市場で切り花が高値で売れたことや、掘り上げた球根が立派に肥えていたことから、球根栽培の機運が一気に高まり、本格的な生産が開始されました。

 

砺波平野は富山湾につながる庄川の扇状地で、水はけの良さが特徴的です。

元々は水稲の単作にしか向かない土地とみなされていましたが、冬は水田が雪で覆われ、地中の温度と湿度が一定で水切れの心配がなく、春は高い晴天率と多くの日照量で球根生育の好条件が重なることが分かりました。これらは正にチューリップの球根栽培にとって適した環境でした。

チューリップは元々江戸時代末期にフランスから輸入されてきたと言われています。当時、チューリップは大変貴重で、上流階級の人々が観賞するために球根が輸入されていました。そのためチューリップの栽培が、少しでも家計の助けになると考えられ、更に生産が進みました。

 

ただ生産も最初から簡単に進んだわけでありません。富山は降水量が多いため、球根を育てたまま土の中に置いておくと、夏場にカビが生えたり腐ってしまいます。

そこで球根が育つと土を掘り起こして収穫し、洗浄後、乾燥させ、温度や湿度が管理された倉庫で保管し、秋に出荷する方法を考えだしました。

この方法により、チューリップの球根出荷量日本一へ躍進することができたと言えます。

 

 

 

■春以外に訪れても楽しい

 

春のチューリップが有名ではありますが、年間を通して楽しめる施設であることを是非知っていただきたいです。夏から秋にかけてはふわふわのコキアが広がります。夏は爽やかな緑色、秋は赤色に色づくのを楽しめます。春の鮮やかさとは違った楽しみ方ができ、季節を通し様々な姿を見せてくれるのが大きな魅力です。また、チューリップフェア期間以外は無料で見学できます。

冬には12月初旬からクリスマスにかけてライトアップも行われます。その名も「チューリップ公園KIRAKIRAミッション」。園内が約10万球のLEDライトで彩られ、幻想的な雰囲気に包まれます。

 

 

 

 

チューリップが咲き並ぶそのカラフルな美しさは砺波市の代表的な観光スポットと言われるだけの迫力があります。現在、県内外や海外の観光客を誘致するほどの有名になったイベントの発祥は100年前のたった10球の球根からでした。徐々に規模を拡大していったことから、地元の方たちが創意工夫を凝らし、チューリップを育て増やしていった歴史が垣間見えます。

公園に隣接してチューリップ四季彩館という、一年中いつでもチューリップが見られるだけでなくチューリップの歴史や文化を学べる施設もあります。是非、花の鮮やかさを直接目に焼き付けるのと共に砺波のチューリップの歴史を体感してみてはいかがでしょうか。



 

 

 

チューリップ公園

 

●所在地:富山県砺波市花園町1―32

TEL:0763―33―7716(チューリップ四季彩館)

URL:http://fair.tulipfair.or.jp 

国道156号「チューリップ公園前」交差点すぐ

北陸自動車道 砺波ICから車で約5分、高岡砺波スマートICから車で約10分

JR城端線 砺波駅から徒歩約15分