海王丸パーク

富山県射水市の伏木富山港は、大型の客船や貨物船などが集まる北陸唯一の国際拠点港湾として知られています。その一角にある広大な公園に、高さ46メートルの巨大な帆船「海王丸」があります。その海王丸を中心とした、海王丸パークは開放的なベイエリアとして人々が集い、学び、憩う場として親しまれています。

 

 

■目で見て楽しみ、学び、体験できる歴史ある帆船

 

1989年に引退するまで約60年にわたって商船学校の航海練習船として活躍した帆船海王丸。その係留、展示施設として海王丸パークがオープンしたのがこの公園の始まりです。全体面積 約10haの広々とした公園は見通しが良く開放感のある造り。海王丸はその純白の帆が与える堂々とした美しさから「海の貴婦人」と呼ばれています。引退後も今なお現役の姿のまま一般公開されており、その圧倒的な迫力と美しさで人々を楽しませています。

 

海王丸は戦前の1930年2月14日に進水。「日本の海の王者たれ」という日本の海運に寄せる期待を込めて、姉妹船「日本丸」とともに建造されました。パーク内で展示されているものは初代で1989年に引退、現在は2代目が活躍中です。

4本マストのバーグ型で29枚の帆をすべて広げると約2050平方メートル(約1245畳分)に及びます。前述の通り、海王丸は、商船学校の練習船として、誕生した帆船。引退までの間、106万海里(地球約周)を航海し11,190名もの海の若人を育てた歴史ある船。現存する最古の日本建造練習帆船であり、その歴史的・文化的な価値が認められ、2018年には「ふね遺産」に認定されました。

船の中は乗船券を購入して見学可能。現在も海洋教室等の青少年錬成の場として活用され、人々に海・船・港へ親しむ機会を提供する場として海事思想の普及に貢献しています。

 

 

また、海王丸はライトアップ・イルミネーションを日没から22時頃まで毎日実施しています。近くにある新湊大橋のライトアップも同時刻に毎日実施しており、また違った光景が楽しめます。イルミネーションは約400個のLEDで船体を彩り、ライトアップは21基のLED投光器により数分おきに色が変わり、大海原を航海する海王丸を表現しています。

空も海も暗く染まる中で、ライトアップ・イルミネーションの光がひと際輝き、浮き立つよう。その存在感は昼間の爽やかな印象とは違い、どこか幻想的で全く違う顔を見せてくれます。

 

 

■海王丸だけではない、複合的な楽しみ方ができるベイエリア

 

海王丸以外にも、パーク内にはイベント広場、日本海交流センター、野鳥園、みなと交流館、遊覧船観光案内所等の施設が多数あります。複合的かつ、多目的な施設が揃っていることで家族連れの遊びの場、景観の美しいデートスポットなど様々な楽しみ方が可能です。

 

日本海交流センターでは、世界の国々が誇る帆船の模型など様々な展示品が見られます。見る、知る、学ぶなど、様々な角度から海への理解と認知を深めることを目的とした施設。まさに知識を広める、伝える場として多方面で活用がされているようです。

 

海王バードパークは野鳥とのふれあいの場を提供するために造成されました。日本海側の渡り鳥のコースになっているため、年間を通じて多種類の渡り鳥が飛来します。その数はおよそ150種。これだけの野鳥が飛来するのも、池・ヨシ原・樹林地など野鳥の生息に適した環境が整っているからです。野鳥の観察は、観察センター・観察小屋・観察壁のどこからでもその自然な姿を楽しむことができるスポットで、是非お気に入りの鳥を見つけていただきたいです。週末はバードマスターの野鳥解説を聞くこともできるのもおすすめです。

 

また、2018年4月11日(水)、海王丸パークの北側緑地に新たな観光スポットとして、「展望広場」がオープンしました。

展望広場からは、雄大な「立山連峰」、世界で最も美しい「富山湾」、日本海側最大級の斜張橋「新湊大橋」、海の貴婦人「海王丸」が一望できます。立山連峰や日本海を行き来する貿易船を眺められる望遠鏡も整備され、時期が良ければ空と海、各名所それぞれが映えた光景が目に飛び込んできます。

 

 

■数多のカップルと縁のある「恋人の聖地」

 

海王丸パークは、海王丸が2月14日に進水したことから、バレンタインデーにちなみ、「恋人の聖地」に選定されています。

「恋人の聖地」認定を記念したモニュメントが設置されており、写真スポットとして利用されます。

海王丸船内大舵輪前や海王丸をバッグにウェディングを挙げるカップルもおり、その広々としておしゃれな景観がカップルに人気の由縁でしょう。

 

 

■ボランティアが一致協力する、メインイベント

 

ボランティア登録をした一般の方も参加でき、より身近に帆船を体感できるイベントとして、総帆展帆(そうはんてんぱん)があります。総帆展帆とは全ての帆をひろげることを言い、イベントは1日かけて行われ、展帆作業(帆をひろげる作業)は10時から始まり、90分ほどで終わり、畳帆作業(帆をたたむ作業)は14時から始まります。このイベントは4月~11月の間に約10回程度行われています。

見どころは何といっても、全29枚の白い帆を風にはためかせる姿。最も美しいとされる姿を垣間見えるのは年間10日程度のみ。しかも、11時半から14時までの僅か2時間半だからこそ、貴重な分見られたときの感動は一入です。

毎回、約60名のボランティアの協力を得てこのイベントは行われており、まさに地域の方たちが一致協力してこそ成り立ちます。マストに登って帆を張る作業は恐怖心も覗かせますが、景色は格別に美しく、どこまでも続くように感じさせる見晴らしの良い景色は特別な体験を与えてくれるでしょう。

 

 

■節目の年を迎える水の名所

 

2022年は海王丸パークが開園30周年を迎える年です。新湊大橋も開通10周年を迎え、記念事業として多くのイベントが開催されました。まさに海王丸パークにとっては節目の年です。そんな観光スポットとして存在感のあるこの公園は、射水市の特徴をよく表していると言えます。

射水市は、富山県を代表する大河である神通川・庄川の間に広がる射水平野の大部分を占めている地域。射水平野は中小の河川や地下水に恵まれた土地として古くから栄えてきた歴史があります。そんな場所に位置する射水市は、富山県の中でも水の街としてイメージすることは容易です。そんな水の名所ともいえるこの公園は、射水という地域を表す場所の一つであり、地域から支えられ愛されてきた場所。総帆展帆など、人々が協同してこなければそれは決して行えないことです。海王丸の堂々とした姿は地域の人々が支えてきてこその美しさといえるのではないでしょうか。

 

行き方

●所在地:富山県射水市海王町8番地

http://www.kaiwomaru.jp/

●路面電車 万葉線「海王丸駅」下車 徒歩約10分