国指定の名勝であると同時に国定公園でもある、「雨晴海岸」
この海岸は一般的な海岸とは少しあり方が異なります。「白砂青松百選」や「日本の渚百選」に選ばれている自然景観が売りであるため、遊泳専用のビーチ、というよりは「見る」観光スポットとして名が知られているのが特徴的です。
「©(公社)とやま観光推進機構」
■四季や時間によって、様々な姿を見せる風光明媚な海岸
雨晴海岸の見どころの一つは富山湾越しに見られる立山連峰の景色。3000m級の山々が海を挟んで見られるのは、世界でもここだけと言われています。
立山連峰が見えるのは平均すると6日に1日程度のため、運次第というところもありますが、貴重な分、見られた時の感動も一入。海越しに広がる立山連峰の大パノラマの迫力は絶景で、一度見ただけで虜になる美しさ。冠雪した立山連峰がくっきりよく見える条件は「空気が澄んでいて霞みが少ない冬のよく晴れた日」。おすすめの時期は11月~3月頃です。
「©(公社)とやま観光推進機構」
また、立山連峰を背景に富山湾に浮かぶ「女岩(めいわ)」は青々としたマツノキを貯えており、面積約400平方メートル、周囲約80mの岩です。名前の由来は小さな岩が母親とたくさんの子供のように見えることから。多くの写真家や観光客が写真に収めるのはこの岩で、その背景は四季や時間によって違う美しさを見せてくれます。
「©(公社)とやま観光推進機構」
中でも際立って貴重で美しい情景が気嵐(けあらし)です。気嵐は大気が冷え込み、海水との温度差が生じることで発生します。陸上の冷たい空気が海に流れ込むことで発生する自然現象で、気温が上がるにつれて消えていってしまうため、気象条件が揃った朝の、ほんのわずかな時間しか発生しない、幻のような現象と言われています。海面を撫でるように黄金にけむる霧が湧き上がる姿はどこか神々しく幻想的です。
10月末から2月末頃までの早朝(日の出前~日の出後、5時~8時頃)に見られ、日の出前から待機する必要があるので、その姿は大変貴重です。
■雨晴の由来と歴史
「雨晴」という地名はいつごろ歴史に登場したのでしょうか。それは、「義経岩」の義経伝説に由来すると言われています。
1187年、源 義経一行が山伏姿に身をかわし、奥州平泉へ落ち延びる中、弁慶の持ち上げた岩の陰で、にわか雨が晴れるのを待ったという伝説から「雨晴」という地名で呼ばれるようになったそうです。それゆえ義経岩は別の名を「義経雨はらしの岩」と言われています。
現在は海岸の小さな岩山の頂に社殿が祀られており、そちらは義経社(よしつねしゃ)と呼ばれています。
雨晴海岸の美しさは昔から讃えられてきた歴史があります。「万葉の歌人」として知られ、奈良時代に越中国守だった大伴家持は、この風景を数多くの歌に詠んでいます。また、松尾芭蕉が『おくのほそ道』に詠んだ「女岩」と「義経岩」は「おくのほそ道の風景地―有磯海(ありそうみ)―」として国名勝に指定されています。
大伴家持は奈良時代、松尾芭蕉は江戸時代にそれぞれ活躍しました。遥か昔からこの地の風景に人々が心動かされてきた歴史が垣間見えますね。
変わりゆく時代の中、どの時代にも通ずる、ある種不変的な美しさがこの富山には残っています。
■美しさを届ける、新しい観光名所
雨晴海岸を訪れるなら、2018年にOPENした道の駅「雨晴」もぜひ立ち寄ってほしい場所です。JR氷見線の雨晴駅から約5分の場所にあり、単線電車でこちらに向かうのも乙かもしれません。
2階・3階展望デッキ(24時間開放)からの景色も見事で、海岸から見る景色とはまた違った眺望です。
2階には地元の特産品や工芸品などを取り扱ったお土産店、富山湾を眺めながら食事を楽しめるカフェがあります。
3階の展望デッキは、氷見線を走る電車の撮影スポットとして人気の場所。
鉄道ファンの間では、絶景と列車が撮影できるポイントとして人気があり、過去には青春18きっぷのポスターにも採用されたこともあります。
元々この眺めの良い場所にはかつてホテル「雨晴」があり、昭和天皇皇后両陛下も行幸され宿泊された屈指の眺望スポットなのです。それが道の駅に生まれ変わり、様々な人々がこちらを訪れ美しい眺めを満喫しておられます。
古くから愛されてきた歴史あるこの場所に、人々を迎え入れる新しい建物ができたことはどこか感慨深いものです。時代に問わず人々を魅了してきた場所を、より多くの人々に満喫してもらおうという「人」の思いが伝わってきます。過去も現在も人々を魅了し続け、この場所を伝えようとする、そんな力がこの雨晴海岸にはあるのかもしれないですね。
住所:富山県高岡市太田24番地74
電話番号:0766-53-5661
アクセス:JR氷見線「雨晴駅」下車 徒歩約5分