「瑞龍寺」は高岡駅から徒歩10分というアクセスの良い場所にありながら、寺までの道のりを進んでいくと徐々に市街地の雰囲気が変わり、徐々に静かで厳かな雰囲気に満ちていきます。その変化を楽しめるのは、前田利長が開町した当時の名残が今でも数多く残る高岡市ならでは。
■高岡繁栄のきっかけとなった前田利長が眠る、富山県唯一の国宝
富山県内唯一の国宝にも指定される「瑞龍寺」は、加賀藩の第二代藩主・前田利長の菩提を弔うために、三代藩主・利常が建立した寺です。
前田利長といえば加賀百万石の基礎を築いた人物として知られていますが、44歳という若さで富山に居を移した際に高岡市に城を築いたのが慶長14年。そこから人々を集め、城下町を造ったことが高岡市の始まりともいわれています。
前田利長は、元は関野といわれていた高岡繁栄のきっかけの人物と言えます。
瑞龍寺の伽藍(がらん)の造営には約20年の歳月を要しました。それだけの月日をかけたことに即納得できる伽藍の見事な造形美には目を見張るものがあります。伽藍の造りは特徴的で「総門」・「山門」・「仏殿」・「法堂」が一直線上に配列され、左に「僧堂(僧の寝起き・座禅所)」、右に「大庫裡(寺院の台所)」が左右対称に置かれています。また各堂が回廊によってつながっている特徴的です。
瑞龍寺の伽藍は、中国渡来の禅宗の様式を如実に伝える江戸時代初期の建築として、1997年に山門、仏殿、法堂が国宝に指定されています。時代を超えても人々を魅了する瑞龍寺の伽藍は、加賀百万石の財力を象徴する寺院だけに、とにかく壮大であり、富山県唯一の国宝というのも説得力があるのではないでしょうか。
■門をくぐる度に景色が変わる、美しい参道
瑞龍寺の参道は門をくぐる度に違った景色を楽しませてくれます。
まず、総門から山門へとまっすぐ一直線に続く参道は、白い玉砂利が広く左右に広がり、その景観は突き詰めたシンプルさが魅力的です。余分なものがなく、真っすぐに伸びる参道に引き込まれるようにその参道を進むと、奥には二つ目の門である山門が現れます。この山門は大きな楼を持ち、楼内には釈迦如来等が祀られています。
山門をくぐると、先ほどとは異なった景色が広がり、通路の左右には緑の芝生が植えられ、左右に廻された回廊が続きます。規則的に並ぶ障子と白い壁が、緑の芝生に良く映え、歴史を感じさせる木造の建物がそれらをさらに引き立てています。
■様々な仏像が見られることも楽しみの一つ
見どころの一つである、正面の仏殿は1659年に建てられた。最大の特徴でもある鉛瓦の屋根は、なんと重量47トンにも及ぶという。日本では、金沢城の石川門とここでしか見られないという非常に珍しい屋根です。
この仏殿には、釈迦如来や普賢菩薩、文殊菩薩の釈迦三尊像などの仏像が安置されています。
そしてトイレの神様として有名な「烏瑟沙摩明王 (うすさまみょうおう)」は法堂の右の若般の間に祀られています。元は東司(トイレ)に祀られていたとは考えられないくらい、像高117cmの像は迫力があります。瑞龍寺では烏瑟沙摩明王のお札を販売しており、目より高い位置、東向きか南向きでトイレに貼りトイレをきれいにすると、不浄がはらわれ、病気平癒、安産成就、子孫繁栄、家門繁栄するとされています。
■長い回廊の中で、当時の生活に思いを馳せながら
回廊に足を踏み入れるとあまりの広さ、長さに一瞬戸惑ってしまうかもしれません。庫裏(くり)、禅堂、法堂などを結び、正面の壁が見えないほどです。仏殿を囲むようにつながる回廊は全長約300m。大庫裏から法堂を通って僧堂へと続く左右対称の回廊は、今ではほとんど日本国内に残っておらず大変貴重です。
回廊で結ばれた棟の一つに国重要文化財の「大庫裏(くり)」と呼ばれる建物は修行僧の調理・配膳などに利用されていました。棟のほぼ全面が土壁で造られ、漆喰を塗って結露の防止や防火等の工夫が為されており、当時の人の知恵が垣間見える趣深い場所です。
■「四霊」の一つである麒麟の茶屋で締めを味わう。
麒麟茶屋は令和2年に瑞龍寺の前の賑わい創出を目的にてオープンされました。
あずき、黒糖くるみ、カスタードクリームの3種から選べる麒麟焼きは、どれもホッとしたいときにピッタリの優しい味。
麒麟茶屋の名前の由来となった麒麟は、中国神話に現れる伝説上の霊獣。瑞獣とされ、鳳凰、霊亀、応竜と共に「四霊」と言われています。瑞龍寺では法堂に鳳凰の欄間、塔頭に亀占寺、利長の戒名が瑞龍院殿のため、利長が応龍にあたり、そして門前に麒麟茶屋ができて「四霊」が揃います。観光の締めに麒麟茶屋でのひと時を過ごし、「四霊」を味わい尽くす…そんな体験ができる贅沢な時間を瑞龍寺にて肌で感じて頂きたいです。
●所在地:富山県高岡市関本町35
●北陸新幹線新高岡駅から徒歩15分、あいの風とやま鉄道高岡駅南口から徒歩10分
車の場合は能越自動車道、高岡ICより約10分、北陸自動車道、小杉ICより約15分