株式会社フォーシンク 代表取締役 加藤 圭吾
会社設立。しかし知り合いゼロ、社員ゼロ、仕事ゼロ、実績ゼロ。
「会社を立ち上げたのは良いが、Uターンしたばかりの私には、地元とはいえ知り合いもゼロ、社員もゼロ、仕事もゼロ、実績もゼロ。まさしく言葉通り何もないゼロからのスタートでした。」そう加藤社長は当初を振り返りながら苦笑する。「とにかく追い詰められ、苦しみもがいた30歳でした。」
父は水道設備事業を担うイマックス株式会社の当時社長であり、父に助けを求めることもできたかもしれない。しかし、彼の選択肢にその考えはなかった。
株式会社フォーシンクは、『街づくりを応援する』というコンセプトから端を発し、イマックスグループの一員として設立された経緯がある。とはいえ、実際は加藤社長の思惑通りに物事は運ばず、かといって、彼本来の気質でもある負けず嫌いさがグループのスネをかじることを許さなかった。大学卒業後、修行させてもらっていた岡山県のカスケホーム株式会社安藤嘉助商店での経験を基に、まずは「塗装業」から取り組むことにした。カスケホームは明治16年創業の伝統ある会社であり、140年間の歴史のなかで培ってきたスキルを学び、様々な経験を積んできた。出雲へUターンするまでの後半4年間は、店長としても腕を磨いてきたという自信もあった。
が、しかし相変わらずのゼロ更新。何もしなかったわけではないが結果につながらない日々が続いた。
「そんな折に一筋の光明が射し込みました。地元で塗装業を営む株式会社岩佐塗装とタッグを組んでもらうことになったのです。当時孤独だった自分にとって協力者が現れたこと、これは今でも感謝しかない。」株式会社岩佐塗装は、創業から約20年、塗装一筋の会社だ。塗料メーカー「アステックペイント」の年間施工実績で全国第1位(2020年)、島根県第1位(2019年)の2冠を獲得。県内でもトップクラス、地域密着型の塗装会社だ。
「自分は年間50棟屋根外壁塗装の仕事をとってくるつもりだ。私には何もなく、ゼロからの出発ではあるが、どうかついてきてほしい。」そう岩佐社長に協力を依頼した。岩佐社長は快諾。そこから、岩佐塗装と二人三脚での取り組みが始まる。5,000円からの小さな注文が嬉しかった。なりふり構わず、目的を達成するために動いた。
「お金はないが、地元の産業フェアに岩佐塗装さんのサポートを得て出展していました。」
パンフレットを立てておくラックを買うのも3日間迷いに迷った。
社員全員何事にも真剣、全力疾走&抜群のノリ
それは突然に。どん底からの転機が訪れる。
それでもまだ仕事は軌道に乗り切れていない。加藤社長はお世話になったかつての師匠でもあり、上司、盟友でもあるカスケホーム安藤 辰社長にも苦悶を打ち明けた。「自分が情けない。」そう加藤社長は吐露した。
次のステップへ向け、新たな旅立ちをしたかつての部下が、順風満帆どころかどん底にいるという話は安藤社長にとって青天の霹靂だったという。
「ジェルコに加入してみないか」安藤社長からの救いの手だった。『ジェルコ』とは、一般社団法人 日本住宅リフォーム産業協会、通称ジェルコである。
ジェルコは、日本初の「リフォーム関連企業」の全国組織として発足し39年の実績を持つ。全て協会規約に基づいた資格審査にて認証された会員で構成されており、『信頼されるより良いリフォーム産業』を目標とし、互いに切磋琢磨して成長を目指す確かな技術集団だ。まずは一歩だ。加藤社長は前進しか考えていなかった。 ジェルコ主宰のセミナーに参加した時のことだ。
「ボロ屋を購入して自分で吹き抜けに改築し、そこには電話機ひとつ置いて会社を立ち上げた。」登壇していたのはあるリフォーム会社の社長だ。
「初心忘るべからず。この場所は今では社員研修に活用しています。」
加藤社長には、一連の話に自分の姿が重なって見えた。すぐさま会社見学と社員研修への参加を申し込んだ。参加期間を問われ、1週間と希望。しかし「1週間はさすがにね」とやんわりと断られてしまう。が、そんなことで挫ける加藤社長ではない。 一連の困難を乗り越えてきたその経験は胆力をも鍛えてくれた。
その1泊2日の研修でなにかが弾けた感覚があった。
帰社するや否や「まずはチラシだ。チラシを作ろう」。チラシ4万部を新聞に折込んだ。注文が入るとは夢にも思っていなかったが、とにかく何かをせずにいられない衝動に突き動かされていた。チラシが折り込まれた日もセミナーに参加。期待していなかっただけにチラシのことは頭になかった。ところがである。初めての反応がこの日あった。たった1件の注文の電話だった。にわかに信じることができなかったと加藤社長は回顧する。どん底からの転機が訪れた。
仲間の誕生日を祝う
「玄関の鍵」から「キッチン」のリフォームまで、全力で取り組む。
「フォーシンクは、人と人とのつながりでここまで成長してきました。」今現在、フォーシンクで働く仲間は12名。創業から10年以上、総合リフォーム年間施工件数は、2021年度実績で700件を超える。拠点を2号店として松江にも増やした。2016年を皮切りに、様々なコンテストで数々の入賞を果たす。
経営理念には、こう掲げる。
【暮らし貢献 】として、地元を愛し 地域に根ざした活動を通じて家屋の保護・家屋の価値向上を目指した快適な環境創りに貢献する。
【地域貢献 】として、人とふれあい人から学び 、地域との関わりの中から 自らを成長させることのできる活動的で魅力のある人材創りに貢献する。
経営方針には【関わる全ての人の幸せを追求する 】を掲げる。
業務の遂行にあたってはプロのプライドを持ち、お客様のご要望を満たすべく、業務に携わる個々が、技術の研鑽と向上に務めることにより、関わる全ての人の幸せを追求する。
孤軍奮闘の時代から、社員と共に歩むために、すべて自身の身を持って学んだことがベースとなっている。
「アンタの会社があるから引越せんわ」とお客様から言われるくらい、地域に密着すること。お客様にとって、なくてはならない暮らしの相談館になることが、経営ビジョンだ。
「フォーシンクでは、お客様のリピート率が高いんです。」小さなリフォームでも全力で取り組んでいる。雨漏りの修理、網戸の張り替え、畳の表替え、玄関両開き引戸の鍵がかかりずらいので見てほしいとご相談に見えた方もいる。
それがきっかけになって、2回目の注文を受けることが多い。1回目は浴室のリフォーム、2回目はキッチン、と。
「フォーシンクが選ばれている理由は3つあります。」と加藤社長。
「ひとつは、対応が早い。そして、担当者が親しみやすく相談しやすい。3つ目が、どんな小さなことでも親身に対応する。この3つだけは、他の会社に負けない自信があります。」
とにかく、担当者の名前をお客様にしっかりと覚えていただく。次の電話の時にも、その担当者の名前を呼んでいただく。「お客様の家で、昼寝をさせてもらえるくらいの関係性を構築できれば、もう最高です。」と加藤社長は笑う。
会議風景
人と人とのつながりで、ここまで成長させてもらってきた
リピートの電話があったのにもかかわらず、お客様に対して「前回の担当の名前は何でしたっけ」と、しかも無粋なことにお客様をお待たせした上に、結局わからないなんていうことはまずあり得ないことだ、と加藤社長。
「フォーシンクでは、お客様管理を【情熱とシステム】だと私は呼んでいます。」
フォーシンクでは、顧客管理、現場の効率化から経営改善まで一元管理できる、クラウド型施工管理アプリ「ANDPAD」を導入、独自に構築している。顧客管理では、履歴をすぐに抽出でき、お待たせすることはない。この構築も、加藤社長の人脈から情報を得て取り入れた。
「人と人とのつながりを一番大切にしてきました。人脈を最大限に活用することを身を以て痛感しています。フォーシンクが成長させてもらっている重要な要因です。」
すべては目の前のお客様への誠実な対応であり、信頼してくださるその気持ちに精一杯応えたい。そのことに尽きるのだと言う。そのために、フォーシンクというチーム力が高い組織になることが不可欠。社内の情報は全て共有する。日々のタイムリーな受注速報、これも全社員にすぐLINEで伝えられ、讃えあう。
「助け合うことに何も躊躇しないチーム力を養いたい。なぜできなかったのか、ではなく、ではこれからどうするのかを考え導き出す。私たちは結束力の高いチームとなり互いに協力し合うことを基本事項としています。」
思いやりと援助を業務の軸に据える。そして、それがお客様にとっての最善につながる。
「自分と同じ意識を持ち、同じ働き、考え方を全員に求めたい」と、かつての孤独な戦士は力強く語った。
これからもフォーシンクは「雑魚は磯部で」を追求し続けていく。
フォーシンクは12期に突入した。加藤社長は、会社全体がさらなる成長を遂げるためフォーシンクのCorporate Culture Standard(通称CCS)を策定し、社員全員と共有している。同じ価値観を共有することで、社員の主体的な行動を促し、生産性の向上を図ることを目的としている。
「私たちにとって大切なのは、モラル感覚です。価値観や人間性がチーム内では重要な観点になります。」社員の新規採用の時も、高いスキルを持った人とモラル感覚に長けた人では迷うことなくモラルを重視するという。
「このCCSは、会社の成長のためにすべきこと、またすべきでないこと、普段から自分たちが行っていることを可視化したもので、できていれば各自違和感はないと思います。」企業理念を細分化し、噛み砕いたもので、自分に迷いが起こった時手元において再確認してもらいたいと加藤社長は語る。 「フォーシンクは大手リフォーム会社ではありません。雑魚は磯辺で遊べ、鯨は沖で遊べという諺があるように、フォーシンクはフォーシンクの力を活かせる場で戦います。最大の武器は、小回りのきく迅速さと誠実さ、これだけはどこにも引けをとらない自信があります。」
フォーシンクは地元密着型の総合リフォーム会社だ。地域で一番『相談したくなる』『また 頼みたくなる』店を目指す。
「お客様は、地元のおじいちゃんやおばあちゃんが多い。出雲ならではのコミュニケーション力も必要です。地元出雲でも、さらに地域を絞り込んで重点エリアとし、集中的に折込チラシ や看板を立てています。この一帯で、フォーシンクの広告を目にすることなく、車を走らせることはできませんよ」と加藤社長は笑う。
今後も方針は「雑魚は磯部で」、フォーシンクのファン増殖のために追求し続ける。
株式会社フォーシンク 出雲店店長 毛利 一
運命的な予感を感じずにはいられない、フォーシンクとのご縁
株式会社フォーシンク出雲店店長 毛利 一(はじめ)さんは、にこやかな姿が印象的で、話しているとこちらまで和んでしまう、そんな魅力を持つ人だ。学生時代は空手に没頭し、空手部で主将を務めインターハイ等全国大会に何度か出場した経験を持つ。彼自身は広島県呉市出身で、妻の出身地出雲市へIターン。縁あってフォーシンクに入社6年目を迎えた。今では出雲店店長を任されている。店長業務の他にも、お客様の家に合ったメンテナンスリフォームの提案&施工管理を主な業務として担当している。
彼がフォーシンクに就職するにあたっては、「ご縁」で引き寄せられたとしか思えない、運命的な出会いがあった。もともと、総合リフォーム会社で営業として働いていた毛利さんは、今から8年前、リフォーム全国大会で優良店舗の優良営業担当として登壇していたところを加藤社長が興味を持ち、アプローチしたのがきっかけで交友関係を持つことになる。当時、毛利さんの勤務する会社に、加藤社長が会社見学を申し込んだこともあるという。加藤社長がわらをもすがる気持ちで、とにかく精力的に行動していた時期と重なる。実は今までの実績を鑑みて、毛利さんの入社をきっかけに松江支店オープンを実現させたのだと加藤社長は言う。結果的に、毛利店長はフォーシンクにとってのキーマンとなった。
ある時、妻の実家のある出雲へ家族で帰省した時のことだ。「家族で出雲大社に参拝した道中で、ある看板に目が止まったんです。」それがフォーシンクの看板だったという。「それが妙に記憶に残っていて…。ご縁の前兆だったかもしれません。その2年後、まさかこのフォーシンクに入社するとは、ある意味必然でしょうか。」もちろん、毛利店長が出雲に移住することになろうなどとは夢にも考えていなかった頃の話だ。
毛利店長に、運命的な予感を感じさせた看板
人と人との繋がりを大切にする、それがフォーシンクの流儀。
出雲で新しいスタートを切った毛利店長は、フォーシンクの印象をこう語る。「社長以下社員全員が明るく、ハキハキとしており、思考がポジティブ。風通しの良さを感じました。」
毎月設定した目標を達成した時の慰労会、ささやかなサプライズ誕生会、仕事が受注に繋がった時の社員同士の讃えあい、お互いを認め合う社風は居心地がいいだけでなく、モチベーションも上がる。
人と人との繋がりを大切にすること、それがフォーシンクの流儀だということを身を以て実感する日々だ。
その風土は、お客様と対峙する時にかわす会話の中で、空気感としてお客様がなんとなく感じていることではないか。
「一度一緒に仕事をさせていただくと、うちの雰囲気を気に入ってくださるお客様が多い」と毛利店長。「私たちの売るものはモノではなく、価値観。お客様に信頼していただき、フォーシンクのファンになってもらえたら、これ以上の喜びはありません。」 「毛利さん、わがままを言っても笑顔での対応、ありがとうございました。」とはお客様からの声。「最初に電話をした際の迅速な対応、またその後トラブルがあっても素早い対処に感謝しています。やはり、気軽に電話ができる対応力はすばらしいと思います。アフターケアも良くまたリフォームなどお願いしたい。」と締め括られている。
雨どいの鳥の巣を2か所除去、そんな依頼にもすぐさま対処する迅速な機動力、それが単なる「顧客」ではない「フォーシンクのファン」に支持される由縁だ。
毛利店長はそのトレードマークの笑顔で語る。「これからも誠実に。とにかく誠実にお客様のご要望を叶えるため走り続けていきます。」
この街をフォーシンク以外の会社は参入できないくらいにしたい。
今後も、「新しい技術や知識の習得」と、失敗や成功から学ぶ「経験値」を積むことで、自分の「技能」を上げていきたいと考えている毛利さん。「一番に心がけているのは、問題が発生した時はしっかりと解決すること。メーカーのせいにしたりしないこと。お客様からいただくのは、お褒めの言葉ばかりではありません。思ったのと違う、と言われたこともあります。」毛利さんは、何か問題があった時に誠実に対処することがこの街の人をファンに取り込む一番の方法だという。「ボクシングと同じ、距離をあけるとパンチを撃ち込まれます。いい加減なことはできません。」問題解決に必要なのはテクニックではない、誠実さだと言う。解決できた時の充実感はもちろん、クレームになった案件でも次の注文につながることが多いのはそういう姿勢がお客様に伝わるから。「そういうお客様は、電話だけでなく直接店舗に足を運んでくださいます。一人でも多くのお客様に遠慮なく来ていただきたい。そうすれば、うちの自慢の雰囲気の良さを知っていただけると思います。」
「この街を、うち以外の会社が参入できないくらいに、ファンを増やし続けたい。この6年間の間にも、毎年300件を超えるリフォーム工事を通して、お客様からたくさんのことを学ばせていただきました。この学びを更に社業に活かし、メンバー個々の成長に繋げていきます。」
それが目標だと語る毛利さんの笑顔の中に芯の強さを感じた。