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地域に密着した信頼される「町の薬屋さん」を目指します

有限会社いちご調剤薬局 / 薬剤師

インタビュー記事

更新日 : 2022年07月30日

島根県の出雲市エリアにて調剤・在宅訪問・市販薬等の販売・介護用品の販売・お薬相談などの業務を通して地域に密着した、信頼される「町の薬屋さん」を目指す。調剤だけでなく、在宅訪問では、薬についての疑問・相談・服用管理を、個々の患者さんに応じて薬剤師が丁寧に対応する。また、必要な介護用品を取揃え、介護福祉をサポート。

開業時間11時間(AM8:30~PM7:30)の2交代制をとっているのもすべて患者さんを最優先に考え、地域の身近な薬局としての役割を果たすためだ。

有限会社いちご調剤薬局 事業概要

●有限会社いちご調剤薬局 保険調剤薬局事業(調剤・在宅訪問・市販薬等の販売・介護用品の販売・お薬相談)/ホテル周辺有料駐車場運営

●株式会社ネクストプランニング 保険調剤薬局事業/ネクストワングループ運営・幹事/ホテル等建貸不動産事業

●有限会社あんず薬局 保険調剤薬局事業/ドラッグ併設型コンビニエンス・ストア事業/テナント管理事業

 

創業1990年5月。遡ること20年。その当時、出雲の佐田、湖陵地区には薬局が一軒もなかった。「この地域に薬局があれば、どんなに安心だろう」と考え、現社長 泉真太郎の父、初代社長は神西地区で薬局を始めた。それがいちご薬局の前身「神西薬局」である。

1970年代になると、厚生労働省の医薬分業の方針に基づき、院外処方せんの発行が推進されるようになる。

時を同じくして、出雲高校の同窓会に出席した先代社長は、同じ薬剤師仲間であり、学生時代から仲の良かった2人の友と意気投合し、いちご薬局を3人で共同経営することになる。いちご薬局の「いちご」とは、この3人の出会いをなぞらえて「一期一会」からとったものである。

有限会社いちご調剤薬局 代表取締役社長 泉 真太郎

 

 

患者さん一人ひとりの「かかりつけ薬局」として。

 

有限会社いちご調剤薬局 代表取締役社長 泉 真太郎さんは39歳。34歳で社長を受け継ぎ、5年が経った。社長となった今でも、時間が許す限り一薬剤師として現場に立つ。

「私はやはり薬剤師です。患者さんと向き合うことが、一薬剤師として最も楽しくやりがいがあります。」と目を輝かせる。「私たちの薬局を、患者さんが自分の「かかりつけ薬局」として選び、信頼していただくためには、はやり人と人とのふれあいが欠くべからざるものです。」

もともと薬局がなかったこの神西の地域に、薬局を初めて約40年。

父も薬剤師、母の父も薬剤師、と薬剤師一家のもとで育った。「40年という長い間、地域の方々に支えられ、『あってよかった』と喜ばれる町の薬屋さんを目指して努力を重ねてきました。」

朝8:30から夜7:00までと他の薬局よりも少し長めの営業時間も患者さんにとっての助けになる。

その信頼感から電話で気軽に相談してくれる患者さんも多い。

処方せんをもって訪れる患者さんも増え待合室が手狭に感じられるようになったため施設を増築、また薬剤師も募集している。しかし、山陰地方では薬剤師不足の現状がある。

 

いちご調剤薬局 北本町支店 いちご薬局の歴史はこの薬局から始まった

 

患者さんに一番最後に関わる医療従事者が薬剤師。その責任は大きい。

 

「医療機関を経由してきた患者さんに一番最後に関わる医療従事者が薬剤師です。だからこそ、重要な責任があります。」

薬剤師は、様々な診療科から回ってくる処方せんを扱う。一人の患者さんが複数の病気を抱え、いろいろな薬を服用していることも珍しくない。

「処方せんを受け取ってから調剤だけを行うのが薬剤師の仕事ではありません。医師から発行された処方せんに指示されている内容が適正であるかどうかを確認します。併用薬や過去のアレルギー歴など患者さん一人ひとりの薬歴情報をチェックします。ドクターに連絡をとり、確かめることもあります。そのため、患者さんに少しお待ちいただくこともあります。」

医薬分業により院外処方せんが発行され、町の保険薬局で薬を調剤してもらう仕組みが始まった1970年代、「薬は病院でもらうもの」という根強い意識と、病院と薬局での待ち時間の問題も相まって当初はなかなかこの医薬分業が浸透しなかった。病院で長時間待たされた挙句、さらに薬局でも待たされる、余計な手間ではないかと考える人が多かった。薬剤師の専門性を理解してもらえない時代が続いた。

「調剤のイメージが強い薬剤師の仕事ですが、実は患者さんと対面し、患者さんの抱く様々な相談に向き合うことも非常に大切な業務です。例えば、向精神薬や睡眠薬を服用している場合は生命保険に加入できないことがあるなど審査の厳しかった時代に、患者さんから困りごとの相談や問い合わせが多くありました。」と、泉社長は当時を振り返る。

そういった薬についての相談を、薬の専門家として手助けしたいという願いから、2007年保険業務を担う株式会社ネクストプランニングを立ち上げた。この会社は、現在は健康総合プランナーとしてジェネリック薬品や調剤の提供、保険など包括的な健康サポートを行っている。

 

 

信頼される「町の薬屋さん」として

 

「島根県では、薬剤師が慢性的に不足しており、人手不足は深刻です。」と憂える泉社長。山陰地方の大学には薬学部がなく、薬剤師を目指す学生は他県の薬学部に進学してしまう。そして、そのまま都会で就職し地元には戻ってこないという図式だ。

「実際、私も福岡大学薬学部に進学しました。家を継ぐ条件でしたので、最初は仕方なく実家に戻ってきました。」と笑う。

薬剤師不足が続く島根県では、都市部で働くよりも好条件の求人も多い。

「島根ならではのワークライフバランスも充実しています。ぜひ、島根の地域医療に貢献していただきたいという気持ちが強くあります。」薬剤師の人手不足が、この地域と医療をつなぐリレーを途切れさせてしまいかねないという危機感を泉社長は抱いている。そのため、少しでも多くの薬剤師が出雲の地域医療に魅力を感じてもらえるよう、福利厚生や給与面でサポートしている。

「現在、いちご薬局グループには、薬剤師が13名在籍しています。薬剤師として第一線で活躍し続けるために、接遇研修をはじめとした社内研修はもちろん、薬剤師会や医師会での研修・勉強会は積極的に活用しています。」 仕事と勉強を効率的に両立させるために、eラーニングも導入し、費用は会社が負担している。

「近年、薬剤師の業務は「対物業務」から「対人業務」への転換が進んでおり、しなければならないことは山積されています。地域に密着した、信頼される町の薬屋さんを目指すため、患者さん一人ひとりに「薬の安全性」を最重要に、薬歴管理・服薬指導から生活面へのアドバイスなど、地域の身近な薬局としての役割を果たしていきます。」

 

社内研修

 

泉社長は、今後も立ち止まることなく薬を軸とした新規事業にチャレンジし続けたいと語る。

初代社長の時代に始めた飲食事業もそのひとつだ。きっかけは、在宅訪問で訪れる一人暮らしの高齢者の食事管理ができないだろうかということから始まった。「宅配弁当で、栄養バランスの良い食事を摂ることができないか」と考えた。

試行錯誤の結果、栄養ケアをテーマにカフェ、居酒屋経営にも取り組んだ。

いちごグループの有限会社あんず薬局もまた調剤薬局以外の異業種において新たなチャレンジをしている。ドラッグ併設型のコンビニエンス・ストア運営だ。新しい試みとしてテレビでも紹介された。「医・薬・食」のサポートを担う会社として、グループ全体と連携している。

「保険調剤薬局、ドラッグ併設コンビニエンスストアなど、健康と豊かな暮らしをテーマに幅広いサービスを提供してきたい。」

すべてのチャレンジは「信頼される町の薬屋さん」という目標実現へ繋がる道となる。

 

 

 

都市部よりも魅力的な好条件が出雲への移住のきっかけ

 

薬剤師 中植 翔太さん

 

その時丁度折よく、在宅訪問から帰社してきたのが薬剤師3年目、温厚な性格をそのまま物語っているようなそのふんわりとした笑顔が魅力の中植 翔太さん。兵庫県姫路市出身の34歳である。実は彼の経歴は異色といってよいのではないか。

一度は国立大農学部で学び、地元で就職したものの、薬剤師への夢を捨てきれず、薬学部進学へチャレンジ。見事に夢を叶えた努力家だ。

「高校から大学進学する時には、自分の下にはまだ弟がいました。兄弟は3人。親に金銭面で苦労をかけたくなかったので、国立大に進みました。バイオ研究に興味があったので農学部に進みましたが、それはそれで面白かった。けれどもやはり、どうしても薬剤師になりたい、その気持ちは捨てきれませんでした。就職し、少し貯金ができたので、気持ちが再燃。編入した独協大学薬学部は家から大学に通える距離にあり、無駄な出費を抑えることができたことは、大きなメリットでした。」

夢叶って薬剤師の一歩を踏み出した中植さん。

実は、人口の多い都市部では薬剤師が多いのだという。学費で貯金を使い果たしたという中植さんは、結婚を機に出雲へIターンを決意。その理由を「都市部よりも魅力的な好条件」と語る。

「全国の求人を探して、最終的に出雲に決めました。地方では慢性的に薬剤師が不足していると言います。そのため、薬剤師を確保するために様々に魅力的な条件を提示している求人も多くあります。

結論として、出雲に来てよかったと思っています。出雲は、自分たち夫婦にとって都会よりも暮らしやすいですね。

車も運転しやすいですし、大手デパートもたくさんあり不自由はありません。患者さんも温厚で親しみやすい方が多く、のびのびと暮らせてのびのびと仕事ができます。」と笑う。

 

 

「いちご薬局では、社内でのコミュニケーションも活発で雰囲気も良く、充実しています。とにかく、私は薬剤師の勉強も続けたい気持ちが強く、いちご薬局では様々な処方せんが集まってくるので学びの場としても最高です。」

薬剤師としての仕事は、新薬の勉強だけではない。仕事内容は、患者さんからは見えない部分が多いことから調剤のイメージがどうしても先行してしまいがちだ。

「例えば、薬の飲み合わせひとつとっても細心の注意を払わなければなりません。

この薬を服用すると、麦茶はいいけど玉露はだめ、この野菜はいいけどあの野菜はだめ。血圧の薬を服用した場合はグレープフルーツジュースはだめ、など、飲み合わせによっては想定した以上に効果が出る場合があり、命に関わる健康被害が出る場合だってあります。責任重大です。」

 

 

患者さんの人柄に触れ、薬だけでなく栄養面、生活面でも アドバイスできる身近な薬剤師になりたい。

 

通院が困難な方には、在宅訪問で管理指導を行うのも重要な業務のひとつだ。

在宅で療養する患者さんの薬物療法を有効に行うためには、患者さん一人ひとりの生活環境を考えて、

食事をはじめとした生活能力や生活リズムに合った指導が必要だ。薬の副作用の早期発見や防止、重複投与の防止、相互作用の発生防止を図り、コンプライアンスの向上を目標に指導をする。

このような薬学的管理指導をもとに、在宅患者さんに適正な薬の服用をしていただくことで治療効果を上げ、生活の質自体を高めることができると考えている。

「薬以外の相談も受けます。食事が飲み込みにくいとか、熱中症について心配などの相談を受けることは珍しくありません。そういう時にはドクターに連絡を取り、薬を処方してもらうこともあります。」

薬局内だけにいたのでは、生活面まで知ることができないので、在宅訪問は大切だと語る中植さん。前日に訪問先に電話を入れ、状況を聞き対応する。そういう一手間をかけることが必要不可欠だ。

地方では高齢者人口が高く、独居老人も多い。地域の人々に必要とされていることをひしひしと実感していると語る中植さん。

「患者さんに寄り添い、安心感や信頼感を持ってもらうためにも人柄にも触れ、薬だけでなく生活面、栄養面からも自信を持ってアドバイスできるよう勉強していく必要があります。私たちは薬のプロフェッショナルですが、管理栄養士としての知識も必要になっています。患者さんにとって“相談のしやすい、身近な存在”となれる薬剤師としてチャレンジし続けていきたい。」

ここでもいちご薬局の指標「町の薬屋さん」が共有されている。