CG・VFXデザイナー

高橋 泰孝

 

 

特撮のVFXを出雲から発信!地方×リモートワークの可能性

 

高橋 泰孝

出雲市出身。地元の高校を卒業後、関東の大学と専門学校を経てCG・VFXの世界へ。仮面ライダーをはじめとした数々の特撮の制作に携わり、2010年に出雲へUターン。現在(2020年)放映中の番組においても、出雲からリモートで制作に参加するなど、CG・VFXデザイナーとして活動している。

 

架空の世界を作り出すVFX技術

 

 

VFXというのは、「Visual Effects」の略で、視覚効果という意味の言葉です。現実の映像と架空の映像をつなぎ合わせて、まるで実際に起こっているように見せる。分かりやすく説明すると、例えば銃撃シーンを撮る時に、現場では実弾が出ないモデルガンを使って撮影して、あとからCG(※)で作った銃弾を合成します。すると本当に発砲しているように見えるというわけです。
(※CG Computer Graphics コンピュータ・グラフィックスの略であり、コンピュータを使って描かれた図形や画像のことを指す。)

自分が主に手掛けているのは、仮面ライダーやスーパー戦隊シリーズといった、いわゆる「特撮」と呼ばれる作品。ヒーローたちがかっこよく変身して、武器から光線を出したりして敵と戦いますよね。ああいった場面の爆発や火花、飛び散る瓦礫なんかもCGで加えることで、より迫力のあるシーンに仕上げていく、そういった映像づくりが自分の仕事です。

 

 

ゲームをきっかけにCGの世界へ、そして特撮との出会い

 

 

子どもの頃はヒーローものも好きでしたが、とにかくゲームが好きでした。ファミコン世代でしたしね。それでゲームのCGなどのデジタル技術に興味が湧いて、地元の高校を卒業して、関東の大学の工学部に進みました。でも、そこではあまりやりたいことが見つからなかったので、3DCGを教えてくれる東京の専門学校に入り直したんです。

都内の専門学校だと、制作現場の人やアニメの監督が講師として招かれることもあり、その講師の中にたまたま、「来年から仮面ライダーをやるぞ!」って方がおられたんです。それが2000年からスタートした初代平成ライダーの「仮面ライダークウガ」です。当時はあまりCGを使うことができる人が少なかったこともあって、制作を手伝ってほしいと言われて参加しました。僕は生徒の中でも優秀だったんですよ。専門学校の先生よりもできるくらい(笑)。運が良かったということもありますが、そういったご縁でこの世界に入りました。

その頃はまだ今のようにCGなどのデジタル技術がそこまで広まってなくて、フィルム合成というアナログな手法も行われていた時代でした。アナログからデジタルへ移り変わるちょうど過渡期でしたね。2002年頃には完全にデジタルへと移行しましたが、そういう時代を経験できたのは本当にラッキーだったと思います。

 

 

コンピュータの進化は日進月歩なので、仕事をしながら最新技術を常に勉強して身につけていきました。時には撮影現場に行って、監督のイメージに対して、それは難しいとか、こうした方がいいとか、理想形に近づけるための打合せもします。ものすごくハードな時期もありましたけど、やっているうちにどんどんこの仕事が好きになって、気がついたらもう20年も続けていました。はじめは平成ライダーがそんなに続くと思ってなかったですけどね(笑)。

 

地方での暮らしとやりたい仕事をリモートワークで両立

 

 

Uターンしたのは2010年です。自分は長男で、両親の将来を考えると、いつかは戻らないと、という気持ちはありました。東京の映像制作の会社を退職して、終わりきらなかった仕事を持って地元の出雲に帰ったんですが、そもそもこっちでできるのかな、という不安はありましたね。だからその時は、この仕事がこっちで続けられるとあまり思っていませんでした。島根にいる人間にこんな仕事を出したりするのかなって。実家の家業もあり、そっちも引き継がないといけなかったので、VFXの仕事は無理ならしょうがないかなと思っていました。

 

しかし大変ありがたいことに東京時代に勤めていた会社などから島根に帰ってからも自分に仕事のオファーをしてくださったことや、今までの繋がりで自分でなければ対応が難しい案件もあったりして、だんだんと仕事の依頼が来るようになりました。Uターンしてからは、さすがに撮影現場に行ったりすることはできなくなりましたが、リモートワークという今のスタイルで現在(2020年)放送中の番組などもやらせてもらっています。

現在5歳の息子がいて、僕のやっている仕事については、少しだけ理解しているみたいです。昨年(2019年)「仮面ライダーゼロワン」の映画を初めて一緒に見に行きました。よろこんで見ている姿を見て、自分もうれしかったですね。やりたかった仕事ができて、息子に自分の仕事を見せることもできて、初代仮面ライダーの「藤岡弘、」さんにも会うことができて、いろんな夢が叶いました。

 

この時代だからこそ、地方で暮らすという選択

 

 

今の仕事場は自宅の蔵をリノベーションしたものですが、お気に入りの空間です。出雲に帰ってくる時は正直気が進まない面もありましたが、やっぱりこっちは暮らしの豊かさや気持ちのゆとりが全然ちがう。満員電車も乗らなくていいし、子どもを幼稚園に歩いて送る道中も、すごく好きなひとときです。

コロナ禍でリモートワークが話題になりましたが、自分は10年前からずっとリモートワークをしています。ネット社会のおかげで、地方にいてもこういった最新鋭の技術を使うような仕事もできます。今後はそういう情報発信もしていけたらいいなと考えています。UIターンを考えている人たちにも、地方にある色んな可能性を知ってもらいたいですね。自分もこの環境下で、今後もいろんな作品をやってみたいと思っています。

 

 

情報提供元:出雲人-IZUMOZINE-   http://izumozine.jp/index.html