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地域の技術パートナー

株式会社ケンコン / 技術職

インタビュー記事

更新日 : 2023年12月25日

技術者を育てる。ワークライフバランスを整えた地図に残る仕事

「測量」は、道路や橋梁、ダムなどを建設するにあたり、基盤となる土地の位置や形状をデータ化するのが主な仕事。誰もが馴染みのある職業ではありませんが、私たちが生活する上でとても重要な役割を担ってくれています。今回は、その測量や建設コンサルタントをメイン業務とする株式会社ケンコンの代表取締役社長齋藤考平さん、社員の古畑伸尚さん、竹田勇さん、髙橋あずささんにお話を伺いました。

株式会社ケンコン 事業概要

1978年設立。測量業としてスタートした後、現在は建設コンサルタント、補償コンサルタント部門も立ち上げ、3本軸で事業を行なっています。

建設コンサルタントとは、社会資本(社会インフラ)の整備に向けて、調査計画や設計などに関する技術コンサルティングのサービスを行なう事です。その中で測量士が「距離」、「角度」、「高さ」を用いて地球上の位置関係や高低を正確に測り、その結果の数値をデータ化します。それを基に設計図を製作し、用地の取得や建物などの移転補償が必要な場合は、補償コンサルタントが調査査定します。
建設会社が工事を始める前段階の基盤部分を製作するのが、建設コンサルタントの仕事です。近年は、老朽化している橋梁、トンネルなどのメンテナンスや、頻発する自然災害の対応などの業務も増えてきています。

業務実績は、生活基盤となる道路や橋梁、ダムなどの公共事業がメイン。置賜地方以外に、山形県全域の仕事も担っています。数年前からは、国交省からの仕事も請け負っています。

社会インフラの黒子的存在

新しい道路をつくるときや、ダム、橋を建設するときに、まず現地に出向き、地形を図るのが測量。道で計測をしている人を見たことがある人も多いと思います。私たちの生活基盤を支えてくれる重要な仕事です。

「私どもの会社は、測量調査・建設コンサルタント・補償コンサルタントなど、主に官公庁の業務をメインに仕事をしています。実際に工事を担当するのは、建設会社になりますが、そのスタート地点である設計図を作るのが我々の役目。工事が始まった段階で元になっている資料は、弊社が作成しています。工事進行の中で変更が出たとあれば、再度我々が調査を行なうこともあり、完成するまで携わります。実際の工事自体は数年かかることもあるので、自分たちの業務が終わったから終了ではなく、工事完成まで長い期間関わることも多いです」

社会インフラの仕事が多いので、完成すれば地図に掲載されます。それがこの仕事の大きな魅力です。

「私も測量の仕事を30年近くしていました。なので、仕事をした現場を車で通ったりすると、当時の記憶が戻ってくるんですよ。山の中に入って、大変な思いをしたなぁとかね。新しいものが完成すると、景観も変わりますから、その違いを知っていることにも感慨深くなります。それを踏まえて自分が測量したことで、この道路が完成したんだなっていう満足感や達成感はありますよね。実際につくっているのは建設会社なので、自分がこれをつくったという自慢にはならないかもしれないんですが、それをつくるうえでの土台をつくっているんだ、自分がやった仕事が新しいものを生み出しているんだと思えることが誇りです。社会インフラの黒子的な存在なのかなと思います」

「地域に自分の仕事の証を残せる」。「歴史を刻める」。この仕事でなくては叶わぬやりがいです。

「交通インフラは、みなさんが生活していく上で必要最低限のもの。建物は何年かしたら壊されたり、更新されたりすると思うんですけど、道路や、橋、ダムなどは、そんなに変わらないじゃないですか。新しくできたら利便性が上がる。私たちの仕事がみなさんの暮らしを支えるひとつの力になっている自負はあります」

 

技術者集団を目指す

会社理念として掲げているひとつに「技術者集団を目指す」とあります。測量士や技術士など建設コンサルタント、補償コンサルタントに関わる資格取得は、高い技術力と知識が必要。社員が技術力を向上させるためのサポートを会社全体で行なっています。

「一言に技術者と言いますが、その技術力を担保するために資格が必要です、コンサルタント業務を行なう上でも資格者の存在が必須となります。測量を行う上では測量士(測量士補)、建設コンサルタントでは技術士・RCCM、補償コンサルタントでは補償業務管理士など、様々な資格を必要とします、専門知識が必要なので実務経験が求められ簡単に取得できるものではありません。但し測量士補などは実務経験を必要とせず筆記試験なので、高校生時代に取得している方もいますし、入社されるときにすでに取得されている人もいます。
資格は会社にとって必要でありますが、個人の財産になります。資格取得講習会などの案内は会社内で共有して、できるだけ参加できるようにしています。また、昼休みや就業後に1時間程度試験の1か月前からサポート。試験の受験費用は会社で負担しています。これらの資格は、一度取得したら終わりではなく、何年かに一度は更新しないといけません。しかも更新するときに『これだけ勉強した』という証明を見せないといけないんです。必然的に勉強せざるを得ない。けっこう厳しい世界です」

技術職の大変なところは、常に新しい情報にアンテナを張って、自らでそれを習得しなくてはいけないこと。しかしその高い技術力は、個人においては自信と誇り、会社においては大きな強みにもなります。

「技術者集団と銘打っているので、ある程度の要望には応えられる自信はあります。何か困りごとがあったときに、『ケンコンさんに相談すれば、なんとかなるよね』と思ってもらえるところもだいぶ増えてきているように思うんです。山形県と災害協定を結んでいるので、災害があったときには他の業務をストップして災害対応を優先しています。現場の状況を調査するために動くのも私たちの役目です。そういう非常時に頼っていただけるというのは、認めていただけている証だとも思うので、強みとして考えています。社員もすぐに動ける機動力を持っているので、心強いです」

 

進歩していく技術に順応していきたい

自分の足で現場に行き、目視で測量を行なっていた時代から、現在は衛星の使用や新しい技術が進化し、人が測るから機械が測る時代へと業務の仕方も変わってきているそうです。

「現在はGPS衛星をはじめとする人工衛星を利用する測量がスタンダードになりました。基準点が目視できないと測れなかったものが、今は衛星を使って測定できるので、実際、どこにいても座標を把握できるようになったんです。技術の進歩により作業効率は確実に向上しました。測量機器やPCで解析を行なうので自分で計算する手間もなくなったんです。楽にはなりましたが、専門的な技術を使うのは人間なので、基礎知識がないと扱えません。間違った使い方では正確な測定はできないので、その技術力は必要になってきています」

危険箇所に行くことも多かったそうですが、ドローンを導入したことで、これまで見に行くことが出来なかった部分まで容易に調査することができるように。先行投資は必要にはなりますが、会社の業績を上げるためにもチャレンジしてきたいことだと話します。

「ドローンにレーザーを搭載して飛ばすと、3D化できるという技術も出てきています。これはかなり画期的なことですし、仕事の効率も上がります。もちろんそれに対する設備投資は安いものではありません。ドローンを購入しただけでなく、それを解析するソフトもいりますし、扱う人間の技術力も必要です。ひと昔前ですと、今ほど機械の精度がよくなかったので、人の目が頼りでした。今は機械のほうが性能がよくなってきています。ただそれを扱うのは人間。ボタンを押したらやってくれるというわけではないので、測量の基本と機械を使う技術のふたつを持っていないとダメですよね。自分の技術だけで済んだのが、新しい機械を使うスキルも学んでいかないといけない時代になっていると思います」

 

働きやすい環境を提供

業務はチームで行なうことも多いそうで、自分だけがスキルを上げても仕事は完成できません。ひとりひとりの技術力も大事ですが、同時に「話す力」と「聞く力」も重要であると言います。

「自分の気持ちを話せる人が望ましいです。人の話を聞くだけじゃなく、ハッキリ伝えられる人。わからないところを聞いてくれたり、自分の意見を持って話せる人が向いていると思っています。チームで動いているので、自分の気持ちを素直に話してくれないと、どうしてもズレが生まれてしまうんですね。未経験であっても問題ありません。資格取得も入社してからで大丈夫です。ご本人のやる気があって勉強する気持ちがあれば、弊社でサポートもします。現場に行く仕事以外もあるので、女性の方も活躍していただけます」

残業がある日もあるそうですが、基本の休みはカレンダー通り。技術進歩によって、短期間で納期ができるようになり、働きやすい環境も整えられています。

「完全週休2日にしています。祝日もカレンダー通りです。残業はゼロではありませんが、とくに年度末になると仕事が多忙になるところがあるので、その調整はしていきたいとは思っています。現在、社員に子どもができるということで、初の男性社員の育休取得に向け検討しているところです。私が社長になって数か月。前社長の意向も継承しつつワークバランスを整えて、社員が働きやすいと思える会社にしていきたいです」

株式会社ケンコンは「技術者集団」を理念に掲げている以上、その名に恥じることない努力を続けています。妥協をせずに、技術の進歩についていく。その気持ちが伝わるお話でした。次は、社員の3名にお話を伺います。

 

求人票だけでは見えない人の良さが詰まった職場

—— 仕事内容を教えてください。

竹田勇さん:2020年に新卒で入社しました。建設コンサルタント部門で、設計を担当しています。入社してから資格を取り、今は測量士補の資格を持っています。

古畑伸尚さん:2015年に新卒入社しました。補償コンサルタント部門で、用地測量と補償関係を担当しています。資格は測量士補を取得していて、今は補償の資格取得のために勉強しています。

髙橋あずささん:2023年入社です。建設コンサルタント部門で設計を担当しています。今年入社したばかりなので、まだ資格は持っていません。

—— 入社したきっかけは何ですか?

竹田さん:米沢工業高校に通っている頃から、地図に残る仕事がしたいと思っていました。測量に興味があったので、弊社を選びました。

古畑さん:大学4年のときに、弊社でアルバイトとして働かせていただいたのがきっかけです。測量業務の補助的な仕事だったのですが、とてもやりがいを感じたので入社したいと思いました。

髙橋さん:私も工業高校出身で、高校で習ったことを活かせる職場に就きたいと思ったのが理由です。設計と測量は土木工事の中で基盤となる大事な部分なので、その仕事に携わりたいと思いました。女性が少ない職業なため若干迷いはありましたが、実際に入社してみると抵抗なく仕事ができています。

—— 会社の良さはどこに感じていますか。

竹田さん:いろんな仕事や資格にチャレンジできることです。自分のためにもなりますし、やっていて楽しいです。来年、土木施工管理技士の試験があるので、それに向けて勉強しているのですが、昼休みに先輩が教えてくれたりと、サポートしていただける環境なのもありがたいです。

古畑さん:資格を取得することは自信にもなりますが、資格手当がもらえるというメリットもあります。難易度の高いものになれば、その分の手当ても上がるのでモチベーションにも繋がっています。その分、責任が多くなったり、大変な面は出てきますが、年齢に関係なく給料を上げていただけるのは、嬉しい制度だと思います。

髙橋さん:土木業界は男性社会の怖いイメージがあったのですが、その気持ちは一切なくなりました。みなさんわからないことは丁寧に教えてくださいますし、求人票を見ただけではわからない人柄の良さが弊社にはあると思っています。

—— 建設コンサルタント、補償コンサルタントという仕事の魅力は何だと思いますか。

竹田さん:設計を担当した道路を実際に車で走ったり、見に行くのがおもしろいなって思ったりしますね。すでにいくつか担当した道路が完成していて、それを見に行くのは楽しみになっています。

古畑さん:私の仕事では、土地を持っている地権者の方に、道路拡張に必要な用地取得のため調査させてくださいと交渉することがあります。その際の補償金額の算定をするのは、やりがいがあって楽しいです。調査算定は大変な部分もありますが、補償を担当したところに新たな道路ができたり、橋ができたりしているのを見るのは嬉しく思います。

髙橋さん:入ったばかりで楽しさというより覚えることがいっぱいなんですが、道路の設計など先輩が仕事をしている姿を見て、すごく感動しています。誰でもすぐにできる仕事ではないからそれが魅力だと思いました。

—— 今後チャレンジしたいことはありますか。

竹田さん:まだそんなに設計を手掛けている箇所がないので、もっといろいろな業務に携わって「ここは自分が担当したんだ」と思える場所をたくさんつくっていきたいです。いろんな業務にチャレンジしていきたいと思っています。

古畑さん:自分の仕事をしつつも資格にはどんどん挑戦していきたいです。スキルアップにも繋がりますし、それによって会社が受けられる仕事が増えるなど、力になれればと思っています。

髙橋さん:基礎を確実に覚えたいです。誰にでも簡単にすぐにできる仕事ではなく、努力がたくさん詰まっている仕事なので、それを経験したり、資格取得を頑張っていきたいです。

 

建設コンサルタントは、豊富な専門知識や経験を活かした技術で社会的インフラをつくり、私たちの暮らしや産業を支える「地図に載る仕事」です。未来を考え、人々の生活を豊かにするために日々働いています。土木の仕事は厳しいイメージもあるかもしれませんが、ワークライフバランスを考え、休日や制度も充実させてくれているので、男女問わず働ける環境です。安全で快適な生活の基盤をつくる夢のある仕事だといえます。

取材・文_中山夏美